二次会はカラオケ〜ストロング缶との出会い
※登場人物※
・私=竹屋
社会人1年目、お酒とは無縁の人生だったが、新人歓迎会を通し、お酒の魅力を知る。
・今村さん
40代、既婚。ベテラン、新人にも優しい。仕事終わりのビールが生き甲斐き甲斐。新人歓迎会には急遽仕事を代わり行けなくなる。
・西園先輩
二十代半ば、病棟リーダー業務を任されるほど仕事慣れしている。お酒が初めてという割には意外とイケる口の主人公に流行のストロング缶を勧める。
・東師長
病棟師長、60歳手前。他の病棟師長より優しいとの噂。
・鵜戸さん
アラフォー、新人歓迎会の幹事。気が利く。歌が上手い。歓迎会では飲まずに車を出していた。
居酒屋を出た私達は、車で来ていた人達に乗せてもらい、カラオケ店へと向かっていた。二次会へ向かうメンバーは新人歓迎会から半分以下の人数であった。カラオケ店は、居酒屋があった寂れた商店街を抜け、車で5分程のところに存在した。特徴的な名前で、個人経営店の様だ。時刻は21時を過ぎていたが、それなりに車が停まっている。
「あ、カラオケに行く前に、そこのコンビニでお酒とか買って行こうよ!」
「師長さんとか何飲むかなぁ〜?」
「あの人はビールしか飲まないよ、あとは、、まぁテキトーにチューハイとか買っていけばイイっしょ」
そんな会話が繰り広げられる中、カラオケ店のすぐ向かいにある某コンビニチェーン店に停車した。二次会用のお酒を買うようだ。
「あっ!私も降りて、袋持ちます」
私も先輩方の後を追い、コンビニ店内へ。
コンビニでお酒を売っていることは知っていたが、意識して見た事が無く、こんなにも種類豊富に置いてあることに驚いた。
「コンビニってこんなにお酒置いてるんですね〜」
「そうだよ!えっ?見た事なかった??」
「はい!まじまじと見たのは初めてかもです。。意外とお酒って安いんですね!勝手に300円くらいするのかと思ってましたよ〜。さっきの居酒屋だと1杯数百円でしたし、、、缶だとジュースと値段、あんまり変わんないんですね!」
「えーっ?竹屋さん、そんな事も知らなかったのぉ?そういえば、、、居酒屋でも話してたけどあんまりお酒飲んだ事ないって言ってたもんね〜。でもチューハイ何杯か飲んでたし、意外とお酒強いのかもね!あっ、これとか知ってる??スト缶」と西園先輩が話す。
「スト缶、、ですか??初めて聞きました!」
「ストロング缶って言って、度数が高いんだけど、、なーんか飲みやすいんだよね〜!しかも糖質ゼロで、安いんだ〜」
「あーーっ、なんかCMで見た事ありますかも、、確か食事にも合うとか何とかっていう売り文句でしたよね??」
「そうそう、確かそんな感じ!!よく買って家で飲んでんだよね〜〜一本買ってみる??」
「そーですね!そしたら、、それにしてみます!」
他のお酒を知らなかった為、西園先輩に言われるがまま、1本150円程の果実系ストロング缶を購入した。レジ袋を持ち、再度カラオケ店へ向かう。
カラオケ店に着くと、先に着いていたメンバーが受付を済ませていた。
「お酒買ってきたよ〜」
「さっすが!気がきくね〜〜、、あっ、部屋ここだって〜」
そこは大人数用パーティルームだった。
「はい、じゃ〜まずはやっぱり新人の竹屋さんからね!!」
「えっ!!?私ですか!?」
「そうだよ!一番若いんだから!!」
「え〜、、わかりました、、、じゃあ、、えーっと、、、、」
どうしよう。。まさか一番最初とは。。歌う曲考えてなかった。何が良いんだろ??無難なのがイイよね。。。悩んだ末に選んだ曲は、人気アーティストのドラマ主題歌だ。正直そのドラマは学生時代の試験期間と被っていて見ていないのだが、この曲は流行りに疎い私でさえ何度も耳にしたことがある曲だったので、みんな知ってるだろうと考えたのだった。
「ドラマのやつじゃん!○ダンス流行ったよね〜」そう西園さんが話す。
「〜♪」
『あんまり人前で歌うのとか、緊張して声小さくなっちゃうけど、、今日は何だがいつもより上手い気がする!!これもお酒のおかげなのかな〜?』
そんなことを思いながら4分程の曲を歌い上げる。正直、歌はそんなに上手ではないと自負しているのだが、今日は人前だというのになんだかスムーズに歌えた気がした。しかし、歌い終わってみんなから「良かったよ〜」等、あらためて感想を聞くと不思議と恥ずかしさが込み上げてきて、誤魔化す様にストロング缶を開けて流し込むのだった。
『ちょっと居酒屋のやつより、お酒っ!!って感じがあるけど確かに飲みやすいのかも??』
「どう?スト缶。人によっては飲みにくいっていう人もいるし、、、」
「いや、、意外と飲みやすいですよ〜」
「なら良かった〜私もけっこう買ってるんだけど、これ一本ですぐ酔えてタイパもイイし、、おすすめだよ。でも度数が高いからそこだけ注意しないとね〜」
「9%ってラベルに書いてますね??これってやっぱり強いんですか?」
「ビールより強いからね〜、でもビールより安くてコスパもいいんよね〜」
「そう聞くと何だが酔ってる様な気もしてきました」
「ほどほどにしときなね〜」
「はい!」
「それより次!何歌う〜、てか好きなアーティスト誰!?私はね・・・ーーー」
その後も、東師長の十八番『津○海峡○景色』や、西園先輩の『女○しくて』、鵜戸さんの『そば○す』etc.聞いていた通り、鵜戸さんは素人の私が聞いても上手だと感じたのだった。
楽しい時間はあっという間に過ぎ、お開きの時間となったのだった。明日は新人歓迎会という事もあって気を遣われたのか、お休みだった。帰りは、飲んでいなかった先輩に車で送って貰ったのであった。
『行く前は、新人歓迎会かぁ、、う〜ん、、、なんて思ってたけど、今日は楽しかったな〜、お酒も意外と飲めて良かった〜、でもあのストロング缶ってやつを飲んだあとはかなりふわふわした様な気持ちだったな、、あれが酔う、ってことなのかなぁ。。。』
そんな感想を抱きながら、シャワーを浴びると急な眠気に襲われ、泥ように眠りにつくのだった。
ストロング缶って、最近聞かなくなりましたよね、、、