第2話 お茶の先生
茶道の先生と少女の、初めての出会い。
茶道の先生
「・・・わあ♡」
着物に、中折れハットの男性が、学校内を歩いているのを見かけた生徒達は、曰く。
「着物なのに、帽子がカッコいい」
「何者だろう」
「? 新しい先生?」
「素敵♡」
と、噂していた。
武野四季ちゃんが、茶道部に入って、最初の日は、顔合わせの自己紹介を終え。
お菓子代が月々かかる事と、茶道で使う道具、帛紗他は、持っていれば持参。持っていなければ用意しようという話。丁寧に説明して貰った。
畳敷の部室で。顧問で女性の、小泉先生が、部活動の際。外部から招かれている、男性のお茶の先生がいると、話されていた。
「ダンディな先生ですよ♪ 驚くかも。今日は、お見えにならないけど。週に2回教えに来て下さいます。
武野さんは、茶道は初心者だから、基本から、ゆっくり習えるわ♪」
顧問の先生は微笑み。微笑みは、四季にも伝染した。
そして。その日がやってくる。
部活動の前。部室で。女子部員の部長と、男子部員の副部長。2人と、紺色の着物姿に、中折れハットの男性が話している所へ、小泉先生が声をかけた。
「幸夜先生!佐々木さん、狭間君、お話中すいません。新しく茶道部に入った、武野四季さんです。初心者ですので、ご指導をお願いします」
「たけのさん?まさか。・・・あ? えっ?どういう字を書くの?」
渋めの良い声。
「はい。武士の武に、野原の野です」
「武・・野・・・武野か。武野さんは、1年生かな?」
「あ、いえ、私は2年生です」
「そう。望月 幸夜です。宜しくお願いします」
「よろしくお願いします」
望月先生との初顔合わせ。早生まれの四季は、確かに幼くも見える。先生にも、そう見えたのだろうか?
望月先生は、中肉中背で、顔立ちの整った大人の男性だった。着物姿が、時代劇好きの四季には微笑ましい。
正直に言って、格好良い。
だが、四季に少なからず驚いたのが見てとれた。
茶道部の部員達も、望月先生の反応に。ヒソヒソ小声で推論した。
「あの望月先生が、驚いた?」
「・・・四季さん可愛いから」
「どうしたの?」
「・・・ああ、望月先生が」
着物姿の異性に、四季は。
(時代劇に登場する人みたい。所作に見映えが有る)
そんな四季に見られているのは、着物だからと気付いた望月先生は、
「僕は、普段着物。着流しなんだ。正装は勿論袴だろうけど」
四季は微笑む。
「着物良いですね」
「ありがとう。・・・では、武野さん、みんなも、揃ったな。基本から。今日は足運びからやっていこう」
帽子を脱いだ望月先生が、部活の始まりを告げた。
「「「よろしくお願いします」」」
四季は、茶道の際、室内へ入る足運び。種類別に違う、おじきの仕方。座り方、立ち方、を教えて貰い。
皆んなに倣ってやってみる。覚える事は、身体を使った動きなので、中々、大変さも有るが。
茶道で言う、侘び寂びは、まだ分からない。でも、新鮮な気持ちで、今日のお稽古を吸収していく。
楽しみは、順番に皆んなで、お茶菓子を黒文字で、頂き。四季も、美味しく頂く。
望月先生が、お茶を実際に点ててくれて。みんなに指導してくれる。部長、副部長、上級生達は、それを、模倣して、中々の腕前だ。
(ちゃんと泡立って、美味しいお抹茶でした)
「結構なお点前で」
部員数は、3年生が7人。2年生が、四季を入れて8人。1年生は5人。現在総勢20人。
男子部員は、その内6人。女子部員が14人。
これは、ある理由で、恐らく変動する。
「武野さん、どうでした?望月先生のお稽古は」
「佐々木部長、はい。とっても所作が美しくて。分かりやすくて、楽しかったです♪」
お洒落なシニヨンヘアに、色白美人の部長は、とても嬉しそうに頷いた。
そう言えば、部員の女生徒は、この髪型の人が多い。
(あれ?)
この日は、望月先生との初日という事で。四季が、小泉先生に言われて、用意して行った帛紗、古帛紗、帛紗袋、懐紙、扇子、黒文字を、先生達に見て貰った。
(初心者とは思えない道具だ)
「良いものだね。ご家族に茶道経験者がいるのは」
一目見て、察した望月先生は、そう微笑み。
四季はそれに。嬉しい様な寂しい様な。目頭に、涙が湧きそうになるのを、気持ちで抑える。
「はい。去年、亡くなった祖母が残してくれました」
顧問を始め、学園の生徒達は、四季が祖母を亡くした事を知っているが。望月は外部の先生。知らなかった。
「・・・お別れは、辛い。言いたくなかったのなら、すみません・・・武野さんは、それでお茶を?」
四季は、望月先生と、小泉先生。部員皆んなが、自分に気を遣ってしまった。申し訳ない。それでいて、仲間思いの部活なんだなと、心を暖かく感じる。
「祖母に習えなかったお茶を、どうしても覚えたくて。
一年生の時は家庭科部でした。今も、家庭科部は掛け持ちしています。どうしても、今迄一緒に頑張って来たので、辞めたくありません・・・」
「・・・でも、茶道部で、本気でお茶を覚えたいと思っています。望月先生、小泉先生、みなさん、どうかよろしくお願いします」
頭を下げる。一生懸命、伝えた。
(しっかりした子だ。この子は)
四季は、望月先生の所作に見映えがあると、先程感じたが。
望月も。四季には、信じられない程の、華があると感じた。礼儀も身に付いている。ただ、
「武野さん。長い髪は、茶道の時は纏めた方が良いと思う」
アドバイスを送った。
「後は、文句無しに理解が早い。これから一緒に頑張って行こう」
「! はい。ありがとうございます♪」
その四季の笑顔。一挙手一投足に、皆んなが、癒された。
(続く)
◆2話あとがき◆
武野四季。僕のイラストを描く時のペンネーム「輝」の名義で描いたうちの子 武野四季ちゃんのイラストに、pixivで、輝の名のまま、小説を付けたのが始まりの作品です。
それまで、pixivには小説を投稿していなかったので。
今回も、お茶の先生を先に描いてから、ストーリーを付けていく形で書きました。
イラストメインだったpixivならではの書き方。
小説家になろうに、別作品の小説を、それまで、立花耀市名義で書いていましたが。
武野四季は、pixivで、小説、挿絵、共に輝名義。その後、小説家になろうにも、立花耀市名義で、小説、みてみんに輝名義で挿絵を、両方の名前で書いています。
かなり、こんがらがった事になってしまいましたが。楽しく描いて、書いています♪
2025年1月書く