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雨に散る恋の傷、星影沈みて縁を嘆く  作者: 青井朔
第六章「過去は煙のように、愛は海のように」
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「秋風の岐路」

学校に戻った鈴木太白は、まるで別人のようだった。毎日きちんと教室に現れ、必要なノートを取ってはいたが、以前よりも明らかに沈黙がちになった。彼の視線はよく窓の外を彷徨い、何かを探しているかのように、あるいは何かから逃れようとしているかのようだった。


千葉夕嬌は当然ながらこれらの些細な変化に気づいていた。太白が以前より無口になり、昼休みにはよく机に突っ伏してぼんやりしていること、自分との会話さえ上の空であることに彼女は気がついていた。


ある昼休み、夕嬌は弁当を持って太白の席に近づき、軽く机を叩いた。


「太白、屋上で一緒に昼飯食べない?」


太白は顔を上げ、躊躇いを浮かべた。「悪い、夕嬌。今日はちょっと体調が優れなくて……教室にいたい」


夕嬌は眉をひそめたが、強要はせず、手に持っていた弁当箱を差し出した。「最近顔色悪いわよ。ちゃんと食べてる?これ、私が作ったの」


太白は差し出された弁当箱を見つめ、一瞬ためらった末に受け取り、「……ありがとう」と低く呟いた。


夕嬌は笑顔を作ったが、瞳の奥に複雑な感情が滲んでいた。「太白、何かあったら話してよ。一人で抱え込まないで」


太白はうなずいたが、それ以上は何も語らなかった。夕嬌が去る後ろ姿を見つめながら、彼は胸に疼くような後悔を感じていた。自分が最近の状態で彼女を心配させていることはわかっていたが、今の自分には彼女の優しさに素直に向き合うことができなかった。


放課後、夕嬌は校舎の道を歩きながら、借りた本を数冊抱えていた。昼休みの太白の様子が頭から離れず、彼女は不安を募らせていた。彼の沈黙と疲労感は、普通の気分の浮き沈みではなく、何か内面の葛藤があると直感していた。


「もしかして……玉妃ちゃんのことで?」夕嬌は呟いた。


太白と玉妃の間に何があったのか推測したくはなかったが、この変化が偶然ではないことはわかっていた。


花壇の脇に差し掛かった時、夕嬌は梧桐の木の下でスマートフォンを凝視する太白の姿を目にした。彼は画面に集中し、憂いを帯びた表情を浮かべている。夕嬌は一瞬躊躇い、結局近づいていった。


「太白?」


声をかけられて顔を上げた太白は、夕嬌を見てぎこちない笑みを作った。「夕嬌……まだ帰ってなかったのか」


「図書館で用事が長引いちゃって」夕嬌は彼の横に立ち、ちらりとスマートフォンの画面を覗き込んだ。未送信のメッセージ画面が表示されていた。


「玉妃ちゃんへのメッセージ?」彼女は探りを入れるように聞いた。


太白ははっとした後、苦笑いしながらスマートフォンをしまった。「どうしてわかる?」


夕嬌は小さくため息をつき、優しくも力強い口調で言った。「あなたの様子が物語ってるわ。太白、まだ彼女とどう向き合えばいいか決めかねているの?」


太白はしばらく俯いてから、低い声で語り始めた。「彼女はやり直したいと言ってる……でも僕には、どう答えればいいのかわからない」


夕嬌は彼を見つめ、瞳に複雑な感情が揺れた。「じゃあ、あなたの心の中には……まだ彼女への想いは残ってるの?」


即答はなかった。太白は遠くを見つめ、手の届かない答えを追い求めるかのように呟いた。「わからない。ずっと考え続けているけど、考えれば考えるほど混乱する。以前と同じ気持ちでいられるのか、もう一度同じ道を歩む勇気があるのか……」


夕嬌は静かに耳を傾けながら、言いようのない切なさを感じていた。慰めの言葉を探したが、適切な言葉が見つからなかった。


「太白、どんな選択をするにしても」彼女は最後に優しく囁いた。「自分を犠牲にしないで。あなたには幸せを選ぶ権利があるの」


太白は彼女を見つめ、感謝の色を浮かべた。「夕嬌、ありがとう」


夕嬌が去った後、その場に立ち尽くす太白の脳裏に彼女の言葉が反響していた。しかし彼の胸には深い後悔が巣食っていた。


夕嬌の気持ちが単なる友情ではないことは彼にもわかっていた。彼女の気遣い、寄り添い、無条件の支え——全てを理解しながら、それに応えることができない自分を彼は責めていた。


「僕は……あまりに身勝手なのか」


スマートフォンを握りしめ、彼の心はさらに乱れた。玉妃の面影と夕嬌の姿が交互に浮かび、何を掴み、何を手放すべきか——判断がつかなくなっていた。


夜が深まり、街灯が灯る頃、太白はようやく歩き出した。彼の影は長く引き伸ばされ、まるで二股に分かれた道のように、異なる方向へと広がっていった。

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