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雨に散る恋の傷、星影沈みて縁を嘆く  作者: 青井朔
第五章『孤渊の深み、微光を求めて生きる』
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「失われた方向」

人生の道は往々にして直線ではなく、複雑に入り組んだ分岐点の連続であり、迷い、選択、そして後悔が伴います。鈴木太白の世界にはかつて、彼の心を高鳴らせ、視線を曖昧にさせた特別な人物がいました。それが、沖田玉妃です。しかし、運命の流れは容赦なく彼らをそれぞれの道へと押しやり、別れた後の太白はまるで方向を失ったかのようでした。風に漂う落ち葉のように、彼はどこにも帰る場所を見つけられず、漂い続けていました。


この章では、愛を失った太白が感じる無力感と迷いが描かれます。彼は孤独の中で出口を探し続けますが、しばしば疲れ果ててしまいます。千葉夕娇は黙々と彼を見守りますが、太白はその温もりに包まれても、心の中の影から抜け出すことはできません。夕娇の優しさと気遣いは、微かな灯火のように太白の歩む道を照らしますが、内面の孤独を消し去ることはできません。


この深い孤淵の中で、太白は果たしてあの一筋の光を見つけ、痛みから抜け出し、新たな生へと向かうことができるのでしょうか?それとも、彼は過去の影にとらわれ続け、抜け出せなくなってしまうのでしょうか?この章は、愛の喪失だけでなく、困難の中で自己を探し、傷ついた心を立ち直らせる物語です。迷い、苦しんでいるすべての魂が、この旅の中で少しでも慰めを得られることを願っています。太白と同じように、倒れても再び立ち上がる力を学ぶことができることを願って。


—— 青井朔

鈴木太白の生活は、かつてないほどの低谷に突入していた。沖田玉妃と別れて以来、彼は人生の方向を失ったかのように感じていた。毎日通る街道、学校の一角、さらには机の上に落ちる光の斑点までもが、彼にあの忘れられない感情を思い起こさせる。


朝、太白が背中に鞄を背負って家を出ると、無意識に近くの街角にあるカフェを目にした。そのカフェこそ、彼と玉妃が初めて正式に会話を交わした場所だった。足が止まり、しばらくしてから目を伏せ、歩調を早めた。街の風が落ち葉を舞い上げ、サラサラと音を立てるが、彼の心に積もった鬱屈を吹き飛ばすことはなかった。彼はまるで根のない葉のように、風に流されては足元を見失っている気がした。


教室の中の太白は、以前の彼ではもうなかった。彼はもはや積極的に手を挙げて答えることもなく、教科書の中の複雑な公式や定理に関心を持つこともなかった。先生の質問が彼を動揺させ、クラスメートたちのくすくす笑い声が耳に届いても、彼は反論する気力すら湧かず、ただ頭を下げて、何も言わずにそのまま過ごすだけだった。


放課後、担任の坂本先生がわざわざ彼を呼び止めた。「鈴木、お前、最近成績が急に落ちたな。何かあったのか?」


「別に……」太白は頭を下げたまま、喉の奥から絞り出すように答えた。


「もし何か助けが必要なら、いつでも言ってきなさい。」坂本先生の声は優しく、それでもどこか諦めたような響きがあった。肩をポンと叩いて、先生はそのまま去っていった。


太白はその場に立ち尽くし、肩に感じたその軽い拍手が、胸の中で重くのしかかっているように感じた。窓の外を見上げると、秋の夕暮れが運動場の木々の影を映し、その斑駁な光が窓枠を通して太白の顔を照らしていた。彼は深く息を吸ったが、胸の中に広がるのは、どこまでも重く、押しつぶされるような感覚だけだった。


家に帰ると、太白は鞄を床に投げ出し、そのまま椅子にどっかりと座り込んだ。彼の視線は、机の上に置かれた一枚の写真に止まった。それは、彼と玉妃が文化祭で撮った写真だった。写真の中で、玉妃は微かに顔を横に向け、静かな笑顔を浮かべている。その笑顔には、まるで全世界の光が集まったかのような輝きがあった。彼はその隣に立ち、少し照れたような笑顔を浮かべているが、どこか満ち足りた幸福感を漂わせていた。


手を伸ばして写真を取ろうとした瞬間、彼はそれを触れたまま止め、まるでそれが熱い鉄のように感じて手を引っ込めた。彼は拳を強く握りしめ、心の中にあるすべてを押し込めようとしたが、記憶は波のように押し寄せてきて、どんなに抵抗しても止められなかった。彼は小さく自嘲気味に言った。「もう彼女は去ったのに、僕はまだその場に立ち止まっているんだ……」


太白はスマートフォンを手に取り、玉妃とのチャット履歴を開いた。画面に映った最後のメッセージは、別れの日のものだった。


「太白、ごめんね……失望させて。」


彼の指はしばらく画面の上で止まった。何か言うべきか、どうしようかと考え込んでいるようだったが、何度も手を離しては戻し、最後にロック画面のボタンを押して、携帯を横に投げた。その後、顔を手で覆って深くため息をついた。再び玉妃を探しに行こうと考えたことはあったが、彼女に会いに行くことも、メッセージを送ることも、どこか越えられない大きな溝のように感じていた。期待がさらに大きな失望に変わるのが怖かったし、彼女の生活の中で自分がもう必要とされていないのではないかという恐れもあった。


夜、部屋の中は時計の秒針の音だけが響き、外の風に揺れる葉の音が、ひときわ孤独に感じさせた。机の上のランプの明かりは柔らかいが単調で、太白を照らすその光が、彼の疲れた顔をさらに痩せさせていた。彼は手で額を揉んでみたが、疲れを少しでも和らげようとしても、何の効果もなかった。


「彼女は一体何を考えているんだろう?」彼は自分にそう呟きながら、目線を写真の上に戻した。しかし、この問いに答えられる者はいない。ただ、彼一人でその無限の思索に沈み込んでいくだけだった。


夜は深くなったが、太白は眠れなかった。ベッドの上で何度も寝返りを打ち、玉妃の笑顔、公園で話す彼女の声、雨の中で決然と背を向ける彼女の姿が、次々と頭の中に浮かんでは消えていった。それぞれの場面が胸に一刺しのように痛みを与える。天井を見上げながら、彼は迷子のように視線を彷徨わせていた。世界が色を失ったかのような気がした。


「もしかしたら……彼女の選択は正しかったんだ。」彼は目を閉じ、静かに呟いた。その言葉が、どこか深く彼の胸に染み込み、涙が静かに頬を伝ったが、彼はそれを拭おうとはしなかった。

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