4.メイドたち
「皆さん、新しい人がはいりました。さあ、自己紹介してください」
「……リネと申します。よろしくお願いします」
私のことを品定めするように冷たい目が向けられた。
「……ブレンダです」
「……カミラです」
ブレンダもカミラも、つまらなそうな顔で私から目をそらした。
「あの子、ウォルター王子が連れてきたんですよね」
「ふーん、別に大した顔じゃないのにね」
ブレンダとカミラは小さな声にすることもなく、私に聞こえる声で話をしている。
私は無表情で立ち尽くしていた。
「ちょっと、新人、仕事しなさいよ」
「……何をすれば良いですか?」
「掃除とか、洗濯とか、いろいろあるでしょ」
ブレンダが面倒だというように腕を組んで言った。
「掃除しとけば?」
カミラがバケツとモップを私に渡した。
私は一人で長い廊下を掃除し始めた。
ガシャン、という音で振り返ると、ブレンダがバケツを蹴飛ばしていた。
「何をするんですか……?」
「あら、ごめんなさい。こっちも掃除しておいてね」
ブレンダとカミラはくすくすと笑いながら、リネを見ている。
「……」
私は何も言わず、こぼれた水をモップで拭き、掃除を続けた。