20.リネット女王
フェロウ国に着いたのは夕暮れ頃だった。フェロウ国の家令が挨拶に来て「お疲れでしょう。明日までお休みください。夕食をお持ちいたします」と言われ、豪華なゲストルームに通された。
私はウォルター王子がなくなったという話が信じられず、茫然としていた。
「夕食をお持ちいたしました」
寝室の隣の部屋の大きなテーブルの上にご馳走が並べられたが、食欲はなく、スープとパンを少し食べただけで食事を下げてもらった。
用意されたガウンに着替えて、美しい刺繍でかざられたベッドに入る。
「ウォルター王子……本当にいなくなってしまったの……?」
私は眠れないまま朝を迎えた。
***
カーテンの隙間から、朝の光がこぼれている。
私はぼんやりとしたまま天井を見つめていると、ドアがノックされた。
「リネット様、朝食の用意をしてもよろしいでしょうか?」
「お願いします」
私は相変わらず食欲がなかったが、運ばれたスープとパン、果物を少し食べた。
食事を終えたことをメイドに告げると、食器を片付けた後でメイドが着替えを手伝ってくれた。
シンプルなドレスに着替えた私は窓から外を眺めた。
ドアがノックされた。
「国王がお呼びです」
「分かりました」
私はフェロウ国王家の執事の後について、謁見室に向かった。
重いドアが開けられた。
部屋に入り、お辞儀をする。
「リネット王女か。我が国が手に入れたペアデ国のことだが、ウォルター王子から手紙で頼まれた通り貴方に任せようと思う。これからはペアデ国の女王として、国をまとめてくれ」
「……はい」
私はフェロウ国のアラン王の言葉を聞いて頷いた。ひとつだけ、気がかりなことがあり、思い切ってアラン王に尋ねてみた。
「あの……」
「なんだ?」
「ウォルター王子をペアデ国に連れ帰ってもよろしいでしょうか?」
「何故だ?」
「ペアデ国で葬儀を行いたいと考えております」
「そうか。分かった。手配をするように家来に銘じておこう」
私はアラン王の用意した馬車に乗った。
ウォルター王子の亡骸も別の馬車に乗せられ、ともにペアデ国に帰った。
ペアデ国に戻ると、ウォルター王子の第一側近として仕えていたユーリが出迎えてくれた。
「リネット王女、いえ、リネット女王。アラン王からペアデ国はフェロウ国の属国となると連絡を受けております。ウォルター王子亡き後、リネット王女がこの国の運命を決めることとなります。私たちはリネット王女に従います」
「ありがとう。よろしく頼みます」
私は顔を上げた。
「お父様、お母様、ウォルター王子……どうか私を見守っていてください」
ペアデ国を再興させることを私は心に誓った。




