第一話...Im a mess
現在時刻2022年4月4日の午前2時、緋月紅は鎖に寄って吊られ、小さな檻の中に閉じ込められ、舞台に運ばれる。
マイクを持った男が紅の容姿と、値段を叫び合う。
此処はマフィアが人身売買を行う会場。
「さぁって!次の商品は世にも珍しい若者。これまた珍しい天然の銀髪の髪に加えて、緋色の髪が混じり、紅と蒼のオッドアイを持った青年。値段は六億から初めとさせて頂きます!」
目も眩む値段を次々と黒いスーツ姿の男達が値札を掲げ、紅を買おうと競りが行われる。
競りが終わると鎖を引きちぎり、鉄格子を曲げ、大舞台に現れる。戸惑いの声が漏れる会場内で紅は掌を向け、蒼炎を放出する。
蒼炎は正に爆炎であり、客席は跡形もなく吹き飛び、彼が放った蒼炎の巻と変わる。
彼の白い肌は痛ましいほど紫色に変色、だがすぐさま元の白い肌へと戻る。
裏から黒いコートを持った少女にコートを被せられ、ペストマスクの様な仮面を付ける。
鳥の頭部にも酷似したマスクにはファーが装飾され、同じくファーが装飾されたフードコートには彼が率いるチームのマークが描かれいる。
逆十字に骸骨が貫通し、涙を流している。
「派手にやるね、紅」
「まぁ。宣戦布告には調度いいだろ?ゴミ箱から暴走する悪意の誕生祭だ」
「会場が粉々でビルに大穴空いてるんですけど!?知乘ちゃんも派手に言ってたけどさ〜......やり過ぎだよ」
「想定外にも、俺の能力が強すぎるなぁ?」
「調整ミスっただけでしょ?」
「何時も通りの筈だが、調子が悪い様だ」
「能力が成長しているだけじゃない?」
「一番使い勝手が良い《《俺の能力》》何だがな──、炎で体温が上昇するが、内冷外撚は俺の中が強制冷却されてるから分からn」
「速く脱出するよ。名前残して、次いでソイツ殺しといて」
「解ってる。顔バレてるしな」
司会者の顔を掴み、蒼炎で顔を燃やし尽くす。壁に炎で紅が組織する名を刻む──《Villainside》と。
脱出のために用意したルートを通り、合流した仲間の一人と豪華に装飾されたビルの通路を駆けていると、銃を持った男六人が現れ、此方に銃口を向ける。
「見つかっちゃった」
「問題ない、殺せば良い」
「それは同感。でも、君の蒼炎は強すぎるかな」
「何者だ!?」
「我ら、ヴィランサイド。悪役と言ったところだ」
「鳥、山羊?兎?何だこの仮面集団」
「適当に痛め付けるが正解か?相談役」
「正解」
地面を蹴って間合いに入り、怪力で二人の横腹を手の甲を振るい、強烈な一撃を叩き込むことで二人を壁へと叩き付ける。
怯える四人も回し蹴りや銃を直接破壊する事で片付け、軽く首を絞め付ける。
「気絶しているね」
「エレベーター使えないのは面倒臭いな」
「四十階を走って降りるのは現実的ではよね?どうする?」
「うーん。飛行能力が在れば良かったね」
「能力が自由な世界だったら飛んでる奴からパクれば良いんだが......」
「まぁ文句言っても仕方ない。派手に行こうか?」
「当たり前だ。このあと広場でも暴れようとしてるのに──......そうだ。俺が一時的に囮になるから、逃げてくれ」
壁に触れると能力で掌から衝撃波を放ち、飛び降りる。飛行能力は《《盗ん》》でおらず、自由に飛行する事は出来ない。
が、炎を放射し浮遊する事でゆっくりと落ちる事ができる。
地上に着地時に蒼炎が広場を包み、ビル街の窓ガラスを砕く。蒼炎が赤炎へと昇華し、ウネウネと動き脈動する。
紅の周囲には黒焦げの死体が転がり、熱風の温度の異常さを物語る。
「あっっっつ!!?」
「さっきの爆破犯か!?」
「虚ろに塗れる塵芥共、俺の薪となる人生......十二分に楽しんだろ?!」
「頭イカれちまったか?」
「さぁ、地に落ちた蛙共を喰らう時だ!逃げろ!逃げろ!喰われねぇ様にな!!斜陽十二炎神武天・騰蛇紅蛇」
「何かやるぞ!」
蒼炎に寄って形付けられた巨大な大蛇が一閃、幾つもビルを貫き暴れ回る。紅は蛇の中を高速で移動、手に溜めてる炎を叩きつける。
崩れ落ちるビル寄り速く、登る不死鳥が天を駆け、瞬いた。
スーツを羽織った髪色が水色の男女が現れ、近くの湖を操り巨大な龍を作り出す。女性が氷を投げ付けると巨大な氷の龍へと変化する。
「能力者か......洗練された能力だな。要らねぇなぁ。でも、盗まないメリットがねぇよなぁ」
「ここから立ち去るなら、異能者の交で逃がして上げてもいいですよ」
「此処で逃がしたら我等が死ぬぞ」
「しゃあない、《《俺が》》殺すかぁ」
「弱点属性持ちの私達に、どうやって勝つツモリ?」
「ゲームのやり過ぎだ。水は大量の水圧でないと消せないし、氷は溶けちまう。もとより、俺の能力に弱点何てないのさ」
「「水旋龍翠・氷桀嵐」」
「良く耳持たねぇなぁ。斜陽十二炎神武天・青虎九龍」
夜のビル街で紅は一人、フード深く被り、スマホで支援者と連絡を取る。
閏月羽楼、六代グループの中の一つの閏月グループの一人娘。莫大な財力を持つが、三年前に社長が死亡した。
が、会社は13歳の娘──羽楼が引き継い、急成長を遂げた。
そんな羽楼はVillainsideの資金提供を裏で行い、彼らの行動を手助けしている。
目的は三年前に死亡した父親の犯人を探し、復讐する為にある。──Villainsideは復讐代行も仕事に含む。
「もしもし?」
「売られた気分はどうだい?」
「最悪だよ。それに髪を染める能力を奪うの、苦労したんだぞ?」
「別に君の瞳と、緋色の髪は目を引くと思うけど、私にまで直ぐに来たよ」
「メッセージは完璧だろ?」
「だね」
能力者、それは《《表側》》で認知されず、裏では実験体や兵器に組み込まれ、死してなお使われる道具。
そんな社会への、革命軍に近い犯罪組織であり、Villainsideの名のままに悪役側であり、邪魔者を蹴散らして、能力者が自由な世界を作る。
社会構造などどうでも良い、異能を持つ強者の自由思想がモノを言う、弱肉強食の世界を目指す。
構成メンバーは六名、現在は仲間を集めている最中である。
「序章には、狭過ぎる歩幅だ──」
我らはVillainside、悪に生まれ、闇を開闢する幻獣。敵は異能を制御しようと悪逆非道な世界であり、我等Villainsideは自らを悪と認識するが、敵を正義とは認めない。
悪を断罪する地獄の裁判官に成り代わるつもりも、英雄に成りたい訳でもない。Villainsideを纏める俺は、ただ世界を一度火の海に変える。
止めたいか?なら、命を賭けて国を精々頑張ってくれよ。
死者の安らぎさえ得られる事が出来ない異能者の為に、闇を切り開く俺の──、コレは、俺が勇者を待つ魔王の物語だ。