ずっと一緒だって言ったじゃん~突然告げられた別れ~
勢いで書きました。異論は認めるっ(ฅ`ω´ฅ)
俺とあずさが出会ったのは、あずさが十歳の時だ。
目と目があった瞬間分かった。俺はあずさと出会うために生まれたんだって。
それからというのも、どこに行くにも俺たちは一緒だった。
俺なしじゃやっていけないと恥ずかしげもなくあずさは笑う。
「無人島にひとつだけ持っていくなら何にする?」
あずさと友達が雑誌を見ながら話していたことがあった。何を持っていくかでその人の秘められた性格が分かるとかいう、根拠があるんだかないんだかよくわからない心理テストだったはず。
友人連中が「ライターかなぁ。それかナイフ」「スマホでしょ?あ、でも電波通じないか」なんてわいわい言い合う中、あずさは迷わず俺を選んだ。
あずさに選ばれて、俺は誇らしい気持ちになった。
俺たちはこれ以上ない最高のパートナーなのだ。これからもずっと一緒に人生を共にすると思っていた。
――そう、今朝までは。
「ついに君ともお別れかぁ。今までありがとね」
微笑みと共に突然告げられた別れ。
突然の宣告に俺は頭が真っ白になった。
俺を置き去りにして、あずさは部屋を出て行った。
どうして?俺が邪魔になったのか?
去っていく後ろ姿は、初めて会った時より随分大きくなった。
あずさは成長した。見た目も変わった。
それでも、この先もずっと一緒だと思っていた。
傍にいられると思っていた。
だって言ったじゃないか。
俺がいないと生きていけないって。
無人島にも持って行ってくれるって。
ずっと一緒だって……。
俺はあずさに出会うために生まれた。
俺はあずさのもの。でもあずさは……。
去り行く背中を思い出しながら、パキリと心が割れる音がした。
***
あずさはいつになく緊張していた。
志望校になんとか合格し、入学してから半年――。
あずさの通う高校の制服は、卒業後有名デザイナーとなった卒業生がデザインしたもので、紺地のブレザーにさり気なく入ったブルーのラインや、白とブルーを基調にピンクの差し色が入ったスカートがお洒落で、この制服に憧れて入学を決める生徒もいるくらいだ。
かく言うあずさも、幼い頃から時々すれ違うこの高校の制服を見る度憧れており、いつか自分も絶対着るんだ、と思っていた。
中々に偏差値の高い高校だと中学に入って知った時は、結構なショックを受けた。見た目から賢いと思われがちなあずさだが、実は勉強よりも運動の方が得意であった。
お前には無理だと教師に言われ続けながらも、四六時中机に張り付きなんとか合格をもぎ取り、入学を果たした。
入学してから半年経ち、高校生として過ごすことにも慣れた。
クラスメイト達は明るくていい子ばかりだ。それに何より、可愛い子が多い。
元々、ヘアアレンジやメイクにはそれほど興味を持ったことがないあずさも、お洒落な友人たちに影響され、次第にむくむくと興味が出てきた。
そしてつい先日――友人の勧めで、あずさはついにイメチェンを決意した!
折角可愛い制服を着れるのだ。どうせなら自分も可愛くなりたい。
変って言われたらどうしよう。
内心ドキドキしながら、あずさは教室のドアを開けた。
「わーっ!あずさついにコンタクトデビュー!?かわいい~」
「いーじゃん!めっちゃいい感じだよ」
「うんうん、あずさの眼鏡度強すぎだったもんね。そっちの方がいいよ」
「なんか目が前より大きく見える!」
教室に入った途端、同じグループの友人だけでなく、他の友人も寄ってきて口々に褒められる。
心配は杞憂に終わったようだ。
その日は授業で先生が変わる度に声をかけられ、妙に注目を浴びることとなった。
恥ずかしかったけど、思い切ってよかったかな。
帰宅途中、高校デビュー成功にほくほくしながら家まで歩いていると、不意に突風が吹いた。
「わっ、すごい風」
そういえば、今朝の天気予報では春の嵐と言っていた。
タイミング悪く、公園の横を通っていたため舞い上がった砂粒が目に入り思わず目をこする。
ぽろっ。
あっ、と声を上げた時には、右目のコンタクトが消えていた。
途端にぼやける視界。
おまけに砂のせいか左目も物凄く痛い。
今までこんなことなかったのに。
足早に歩くあずさの脳裏に、今朝外して来た長年の相棒であった眼鏡が思い浮かんだ。
帰宅したあずさは真っ先にコンタクトを外すと、机の上に置きっぱなしにしていた眼鏡を手にとった。
「今まで眼鏡が守っていてくれたんだね。どうもありがとう」
テレビから天気予報が流れている。
春の嵐は残念ながら暫く続くらしい。
翌日、登校したあずさを見て友人が驚いた。
「あれっ?あずさ、もうコンタクトやめちゃったの?」
「うん、もう暫くは、この子が私の相棒」
笑ったあずさの顔の横、綺麗に磨かれたレンズの端が誇らしげに光ったような気がした。
~イメチェンあずさ帰宅後~
「あれっ!?なんかレンズの端が欠けてるっ!?」
そう、あずさにお役御免を告げられた眼鏡の心がぽきっと折れた瞬間、連動するようにレンズの端がほんのすこ~し欠けていたのである!
「おかあさ~ん!眼鏡屋さんに行ってくるー!」
「ええ?あんたコンタクトにしたばっかりじゃないの」
数時間後、眼鏡はすっかり修理され、ふたりは元サヤ(?)におさまったのであった。