プロローグ
幼馴染み
それは世の学生が憧れる存在と言っても
過言では無い。
学生では無くても
男ならば誰しも1度は「幼馴染みがいれば」と、馬鹿げた想像を膨らませた事があるはずだ。
そう。俺にはその幼馴染みが存在する。
待つんだ。落ち着いてくれ。
落ち着いてその右手にある鈍器を地面に置いてくれ。
決して自慢している訳ではない。
本来なら勝ち誇った顔で、
青春を謳歌しているはずだ。
天真爛漫な幼馴染みの彼女に
主人公は振り回されながら、やれやれと後を追う。
その友情はいずれ恋情に変わり、鈍感な主人公は徐々に幼馴染みの彼女の事が好きになり、卒業式を迎えた2人は彼女を屋上に呼び出して、、、、
お決まりの展開だ。
何故、俺がありきたりな展開を長々と話しているのか説明しよう。
今俺が置かれている状況。
昼休みの屋上、俺の前には幼馴染みの彼女。
先程述べたありきたりな話とほぼ一緒だ。でも少し違う。いや少しどころでは無い。
なぜなら、屋上で頬を赤くしてたたずむのが理想だったのだが、俺の前に立ちはだかるのは鬼の形相をしながら右手には消火器を持っている女だ。
確かに言い方を変えれば、いや違うな。
見方を変えれば、が正しいのかも。
見方を変えれば天真爛漫にも見えなくはないのだが、今はそんな脳内変換が出来る余裕なんてない。
「まず落ち着け、小夏!」
「落ち着いてるわよ。それで?
言い残した事はもう無い?」
「小夏、それは落ち着いてるとは言わん。
冷静な人間はな、消火器材で人を撲殺しようとしないし、遺言を吐かせる質問なんてしないんだよ。
分かるだろ?お前は人の道から外れようとしているんだ。良かったじゃねぇか、道を正してくれるいい幼馴染みを持って!はははっ」
最大限相手を逆撫でしないセリフを言おうとしたが、逆効果だったようだ。俺と小夏の間合いは歩幅10歩分だったのだが、5歩になった。
どうしてこうなった。
ただ真実を知りたかっただけなのに。