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ふぁんたじぃらいとにゃべる→1/4章『少年と海と猫』  作者: 大盛ふるーつ[無農薬]☆送料無料
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4話『世界で一番つまらない日曜日』

5話は短めのお話なので今日中に投稿予定です!

 


 それから俺達は毎日一緒に遊ぶようになった。


 放課後になると河川敷にランドセルを持ったあの子がやって来るのでそれまでに用事を済ませなければならない。


 俺は朝方に例の猫おばあさんのところに行ってキャットフードを恵んでもらい、昼間に雨風をしのげる場所を探すのが習慣になった。


 これがなかなか大変で、何度も他の猫の縄張りに入っては喧嘩をしかけられそうになった。


 しかし苦労の甲斐あって日によって空いている場所はいくつか見つけた。毎日安心して寝られるようなところは未だになかなか見つからないが。


 でも土日はあの子も河川敷に来ないので、一日使って住み処を探すことができる。




 …と思っていたらある日神社で遊んでいるあの子を見つけた。


(ランドセル持ってんなぁ…)


 今日は土曜日なのに。


 ちなみに宗太の通っている小学校は土曜日は休みだ。


「(宗太)」


「あ!ネコくん!」


「(お前土曜日もランドセルなのかよ)」


「背負ってないと落ち着かないんだ」


 たしかに、あれだけ毎日こうやって遊んでいれば背負ってないと背中がスースーするのかもしれないな。


「(どうして今日は河川敷じゃないんだ?)」


「土曜は野球の練習やってるの」


「(それは気まずいな)」


 そういえば自分が子供の頃も子供なりに何か縄張りみたいなのがあったような気がする。




 とりあえずいつものごとく宗太の遊びを眺めようと神社の屋根の下に陣取ると、宗太の方から寄ってきた。


 珍しい。一人遊びの時は夢中になって他が目に入らないことが多いのに。


「あのね、僕明日大山池(おおやまいけ)に行くんだ」


「(あの、カモがいるとこか)」


 車で20分ほどのところの、田舎に良くある山の中の大きな公園だ。


「うん。それでね、ネコ君も一緒に来ない?」


「(ああ。いいよ)」


 …ん?


 いや、でも


「(それで、俺はどうやって行けば良いんだ?)」


「あ…」


 考えていなかったらしい。とは言え、俺も良い案が思い付かないので宗太ばかりを責められない。本当に、どうしたものか……。


「…僕、いっつもリュック持っていってる…このくらいのリュック……黒いやつ……」


 ……入れっていうのか……


「……」


 引いているのが顔に出ていたのか、宗太はまたあの変な笑い方をしている。


 …なんだよ。また俺が悪いのか。


 分かった、分かったよ。


「(いいよ。俺も他に良い方法思い付かないしな)」


「ありがとう!」




 その後どうやって父親にバレずに公園についていくか作戦を立て、6時の音楽が鳴る前に宗太の家へ向けて出発した。


 作戦と言っても、ランドセルの中に忍び込んで家に侵入し、リュックに移るだけだが。


 歩きながら宗太がぽつりと呟く。


「家に友達が泊まるの初めて」


 友達……。


 まぁ、友達と言うより他ないか。


 薄々分かっていたが改めて宗太は俺を同い年ぐらいに思っているのだろうなと思う。


 …でも正直面白くはない。俺だって元は人間だったんだし、働いてもいたし……




 内心ぐちぐち言っているといつの間にか宗太の家が見えるところまで来ていた。


 遠目に電気が点いているのを見て、宗太が「良かった。鍵開いてる」と言った。


 それ、最初は嘘だと思ったけど、もしかして本当なんだろうか?どういう教育方針なのだろう。


 人目につかないところに隠れて、ランドセルの中に入った。

 狭いが窮屈ではない。猫の体が柔らかいからだろう。




「ただいまー」


「おかえり」


 宗太の家は2階建てで、2階に自分の部屋があるらしい。

 自分の部屋までは宗太ひとりで頑張ってもらうしかない。なるべく息をひそめてじっとする。


 しかし身動きしないのはともかく喋らないのはあまり意味がないかもしれない。


 最近近所の公園にたまたまいた人間で実験してみたのだが、俺の声は俺が声を聞かせようと念じない限り聞こえないらしいのだ。念話のようなものなのだろう。


 …ところで宗太はさっきから足音を立てないように階段を上がっているが、それは意味があるんだろうか?



 二人して気配を消しながら、ようやく宗太の部屋にたどり着いた。

 ドアを閉めた瞬間どちらからともなく息を吐いた。俺もなんだかんだ緊張していたようだ。


「(うまくやったな)」


「うん」


 そういえばランドセルを背負っていない宗太を久しぶりに見た。

 いつもあのスタイルなので少し違和感がある。甲羅のないカメのようだ。



「リュック思ったより小さかった…」


「(子供用にしては大きい方だろ)」


 気にしなくて良いという意味でそう言ったのだが、宗太は子供なりに気をつかっているのか少しでも居心地が良いようにとリュックを改造し始めた。


 底にお菓子の缶を入れたり、タオルを敷いたり…


「(なんだこのリュックから飛び出たラップの芯は)」


「空気を吸うやつ」


 そこまでしなくて良いと言おうと思っていたのだが、途中からは楽しんでやっているようだったので放っておくことにした。




 宗太は一人遊びが好きなだけあって工作も得意分野のようだ。押し入れを開けると工作の材料がぎっしり詰まった段ボール箱があった。


 宗太の父親がお菓子の缶などをとっておくようには思えなかったので出どころを聞くと、材料は定期的にごみ箱やごみ袋を漁って手に入れているらしい。


 自分は明日そのごみ達と一緒にリュックに詰め込まれるのだと思うと、正直『うっ』と思ったが……まぁ、……まぁ、小学生だしな。そういうこともあるだろう。


 工作の材料ぐらい親に頼めば良いのにと思うが、この前それで変な雰囲気になったので言うのはやめておく。


 というかあの時なぜ変な反応したんだろうか?こいつは。


 親に頼むのなんて、普通のことなのに。




 それから部屋にあるおもちゃを見せてもらったりしつつ夜を明かした。


 宗太はお泊まりが本当に嬉しいらしく終始楽しそうにしていた。


 宗太は寝る前にこんなことを言っていた。


「僕ね、お父さんと大山池行くのちょっと苦手なんだ。何して良いのか分からなくて」


 お父さんは、お前のために公園に連れていってくれているのだ。そんなこと言うもんじゃない。喜んであげるのが子供の仕事だ。


 そう言いたかったのに、何故か言えなかった。


 親の気持ちを考えれば、普通のことのはずなのに。




 朝になった。運の良いことによく晴れている。


 さっそくリュックの中に入るといつの間にかライトまで付いていた。器用なことだ。


「苦しくない?」


「(お陰さまで)」


 本当にそこそこ快適だ。これなら車の中で居眠りできてしまうかもしれない。


 車に乗り込む時、案の定というかリュックがやたらごつごつしていることについて父親に突っ込まれていたが、「工作して武器を作ったんだ」と誤魔化していた。二人で考えた言い訳だ。






 車が出発した。…なんか少し暑いな。


 頭がボーッとする。いや、大したことはないのだが。


 別にそこまで心配するほどのことじゃ…






 公園に着いたらしい。宗太が歩くたびにがたがたと揺れる。


 まだ頭はボーッとする。でも、大したことはないと思う。


「ネコ君!」


 チャックが開いた。宗太が楽しそうにしている。


 ……


 …かなりやばいかもしれない。


「(宗太。ごめん。ちょっと俺涼しいところに行くな)」


「どうしたの?大丈夫?」


 なんとかリュックから抜け出す。足がフラフラするが宗太の手前どうにかこらえた。


「…熱?」


 勘が良いな。


「僕、運んで行くよ。涼しいところ」


「(助かる…)」


 宗太にひょいと抱えられた。中身が成人男性だと思うと情けない絵面だ。


「(宗太。宗太。もうちょっとゆっくり歩いてくれ)」


「え、でも、急がないと…」


「(まだ大丈夫だから、頼むからゆっくり歩いてくれ)」


 頭が痛い。あまり揺らさないでほしい。


「体がすごく熱いよ。大丈夫?」


「(大丈夫だ)」




 木陰に下ろしてもらい、リュックの下に隠れながら体を休ませる。他の子供に見つかったら大変だ。


 宗太には、水を持ってきてもらうように頼んでいた。


 宗太は熱だと思っているが、たぶん熱中症なのではないかと思う。涼しいところにいるとだいぶ楽になってきた。


 原因としてはずっと肌寒かったのに急に暖かくなったこと、リュックが息苦しかったこともあるだろうが、何より人間だったときの感覚で甘くみてしまったことが一番良くなかったと思う。


 しばらく辛いのは辛いがそこまで酷くないという状態が続いていたのに、一気にきた。


 ただ、人間だったときの感覚では大丈夫なはずだったのだ。

 ……なんだか飲み会で調子に乗りすぎた大学生のような言い訳だが、俺は一応社会人だ。


「大丈夫?」


「(ありがとう宗太)」


 宗太がお菓子の缶に水を入れて持ってきてくれた。


「(もう大丈夫だから俺のことは気にせず遊んでこいよ)」


 水分をとると一気に楽になった。


「でも……」


 もう宗太に世話をしてもらう必要もない。一応中身は大人だからあとは自分でなんとかできる。


 可哀想なのは宗太だ。せっかく準備して楽しみに来たというのに。

 体調はじき治るだろうが、一緒に遊べるかどうかは微妙なところだ。


 木陰で涼んでいると眠気が襲ってくる。

 しっかり休んで早めの回復を期待するのも良いかもしれない。


 うとうとしていると、ぼんやりとした意識の中でまた変な考えが浮かんできた。




 ――俺には宗太の気持ちが分かる。


 ――日曜日に、頼んでもいないのに公園に連れてこられて、


 ――連れてきたくせして親は遠巻きに眺めるだけで、


 ――5年や6年になる頃には、親につれられて来る子なんて自分くらいしかいない。


 ――小さい子に混じって遊ぶのも恥ずかしいから、一人で遊ぶしかない。


 ――だから、宗太がどんな気持ちで俺を誘ったのか分かる。


 ――もし友達をここに呼べるなら、このつまらない日曜日がどれだけ楽しくなるだろう――






「ネコ君。大丈夫?」


「(……え。もう夕方か?)」



「うん。お父さん、もう帰るって言ってる。どうしよう…」


「(あー……)」


「……」


「(ごめん。車には乗れそうにない)」


 そこまで酷いわけではないが、また調子にのって同じ失敗をしたくない。


「え。でも、どうやって帰るの?」


「(しばらく休んでから、歩いて河川敷まで帰るよ)」


「……」


 今にも泣きそうだ。宗太の気持ちを考えれば当然だが。


「(泣くなよ。これからお父さんと帰るんだろ。変に思われるぞ)」


「……ちょうど良いよ。もう公園に行くのはやめとくかって、言ってくれるかも…」


「(どうかな。『公園で泣くなんて情けない』、『何度も行って克服しなきゃいけない』って言われるかもしれないだろ)」


「……」


「(……お前のお父さんがどんな人かなんて良く知らないけどな)」




 宗太は父親と一緒に帰っていった。


 俺はというと、かなり頑張って下山した。


 1日も歩けばすぐ下りれるだろうと思っていたのだが、なにせ歩き続けるとお腹が減る。


 都合良くキャットフードをくれる人がいるわけもなく、バッタの足を食べたり干からびた蛙の足を食べたり、通りがかった畑の野菜クズを食べたりして飢えをしのいだ。


 そんな有り様だったので、町に下りるのに2日もかかってしまった。






 今は何時ごろだろうか。人通りが全くないので深夜なのかもしれない。


 深夜になるとちらほら寝ている猫もいる。

 寝ていると気配が薄くなるのでうっかり近くを通ってしまうのが厄介だ。


 寝ている間にテリトリーに入られるのが生理的に嫌なのか起こされて機嫌が悪いのか知らないが、大抵の猫はものすごい勢いで襲いかかってくる。気を付けねばならない。




 歩き続けていると河川敷沿いの道路に出た。これで少しは安心できる。


 このあたりは芝生が刈り込まれて見晴らしが良すぎるので猫の住み処になっていないのだ。


 …そうだ。このあたりで一晩過ごしてしまおうか。アリかもしれない。




 寝床を探しながら歩いていると、電灯の下でうずくまっている子供を見つけた。


 迷子か?虐待か?


 たまたま猫になってる暇な人間がいてラッキーだったな、と思いながら近付くと、ランドセルが見えた。まさか……


「(宗太?)」


 やはり宗太だ。しかし寝ているのか反応がない。


 かなり疲れているようなので可哀想ではあるが、起こすことにする。

 こんなところで寝ていたら風邪をひくからな。


 目が覚めると宗太は嬉しそうな顔をした。

 もしかして……


「(どうした宗太。迷子になったのか?)」


「良かったネコ君……元気になったんだ」


「(……俺を探してたのか?)」


 宗太は頷いた。

 やっぱりか。なんてことだ。


「(どうして河川敷にいると思ったんだ?)」


 河川敷に来たのはたまたまなのだが。


「河川敷に帰るって言ってたから…」


 言っただろうか。よく覚えていない。


 子供の前で適当なことは言えないな。本当に可哀想なことをした。


 忘れたなどと言うわけにはいかないので、とりあえず話を合わせておく。


「(覚えててくれたんだな。ありがとう宗太。……もしかして昨日も待ってたのか?)」


 宗太はまた頷いた。

 言葉も出ない。こんな時間に子供ひとりで……。


「(ごめんな宗太。心配かけたな)」


「ううん。僕こそごめん」






「本当にごめんねネコ君……僕、お父さんに全部正直に話して、ネコ君を病院に連れていってもらおうって、思ったんだ…………でも……でも、ぼくっ……『ムセキニン』だから……『自分のことに自分でシマツつけれない』から…………お父さんに頼めなくて……」


「ネコ君のこと……ぼく、ちゃんと大事に思えてないから……ね、ね、ネコ君はあんなに、ぼく、ぼくといっしょに、遊んでくれて、すごく、やさ、優しくしてくれたのにっ、…ぼく、『オンシラズ』だから、ネコ君、たしけ、あげられな、なくて、ごめんねぇ……」


「き、昨日も、お、おとうさんが寝てから、ここ、ここで、ま、待ってたんだけっ、けど、…ぼ、ぼく、『口ばっかり』で、ほ、ほんと、ほんとは、ネコ、ネコ君のことなんて、しっ…しんぱっ…しんぱい、して、ななないからっ…ね、…ね、寝ちゃって、自分ひと、ひとり、『イイオモイ』して……」


「お、おおおと、おとうさんに、な、なんか、なんかいも、いお、言おうとしたんだけどっ、いえっ、いえなかっ………」


「ぼ、ぼく、ちい、小さいとき、から、『自分で人に頼めない』んだ。……で、でも、た、たいせつな、友達の、友達のためだか、ら、が、頑張らなきゃ、いけなかったのに……」







『無責任とか、口ばっかりとか思わないよ。だって夜中にたった一人で待っててくれたんだろ?』


 そう言いたいのに、なぜか言葉が出てこない。


 夜中に子供が一人で泣いてるんだぞ?

 常識的に考えて、大人としてこう……なんとかしなければならないのに。


 どうして言葉が






 ―――なんだ?


 ――何のために俺にそんな話を聞かせた?


 ―可哀想って思ってほしいのか?


 それとも……


 あぁ、なるほどな。

 俺はお前の気持ちがよく分かるよ。


 別に俺は何もしてくれなかったことに怒ってる訳じゃない。自分でどうにかできることだったしな。


 ただ、泣きわめいて吐き散らかして、自分がどれだけ相手のことを想っているか伝わると思っているのが気に入らない。


 そんなのははっきり言って気色の悪い自己陶酔だ。


 だいたい、泣くだの喚くだのは相手を思いやるのとは真逆の行動なのだから。


 なぁ宗太。本当に悪いことをしたと思っているなら、自分の話ばかりするんじゃなく、相手の話を聞くものだろ?


 はっきり言おう。

 お前は悪いことをしたとは思っているが反省するつもりはないんだ。


 大切な友達だの、優しくしてくれただの、相手を気持ちよくさせる言葉を使いたがるのがその証拠だ。


 お前はもう一度同じことがあったとしても父親の恐怖には絶対に勝てない。


「もう二度としません」とは言えないから、どうにか相手に譲歩させようとする。


 俺はやっぱりお前の気持ちがよく分かるよ。


 お前は俺と同じで、『自分のことしか考えていなくて』、『他人に関心のない』人間だからな。



 だからひとつアドバイスがある。



 お前は自分は良い人間とはかけ離れた存在だと思ってるのに、良い人間になりたいと心から願っている。

 だから、良い人間になれない自分を責めてしまう。


 正直辛いだろ?俺には分かる。


 だから、自分が『自分のことしか考えていない』人間であること、『人のために動けない』人間であることを、認めて生きてしまえば良い。


 父親の言う通りだと認めてしまえば良い。


 嘘みたいだが、そうすれば本当に楽なんだよ。自分の中で何も矛盾しないんだから。


 心に傷が増えないうちに粉々に叩き壊すのが、俺の親切心というやつだ。




「(そうやってずっと自分を責めてたのか)」


「ううん。きっとほんとは大して悪いなんて思ってないんだよ。だから、」


「(人よりも自分の方が大事なのはそんなにおかしなことじゃないだろ。普通のことだ。なんでそこまで泣くのか俺にはさっぱり分からない)」


「でも……ネコ君は人に優しいじゃん。毎日僕と遊んでくれるもん」


「(暇だからだ。お前のためじゃない)」


「でも、あんな狭いリュックの中で我慢してくれた」


「(お前な、周りの人が皆自分のために何か苦しい思いをしてるなんて考えてたら辛いぞ。周りは周りで勝手に生きてるんだ。お前もちょっとは勝手に生きろ)」


「でも、」


「(正直こんなことされるとしんどいんだよ。お前が迷子になったら俺も同じように真夜中に一人ぼっちで待たなきゃいけないのか?)」


「…………」


「(あんまり人に期待しないでくれ。俺もお前に期待してないから)」


「…………」


「(期待してないって分かるか?俺はお前がここにいるのは俺のためなんかじゃないって思ってるよ。俺を心配してるのを言い訳にして夜中に外に出てみたくなっただけだと思ってる。こんな時間に外に出れるなんてなかなかないもんな)」


「……………………………………」


 宗太は何かをランドセルから取り出し、地面に叩きつけて駆け足で去っていった。


 水筒と魚肉ソーセージだった。


『お前がここにいるのは俺のためなんかじゃない……




 本当にそうか?




 ……いや、俺は間違ってない。


 だって自分はいい人だと思い込んでいる方が後々辛くなる。


 どれだけ善良な心を持っていたとしても、それを親が認めてくれなければいずれ見失ってしまう。


 そして宗太は一生認められることはない。

 それが宗太が一生かけて受け止めなければならない現実だ。




 ……そうだよな?




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