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ふぁんたじぃらいとにゃべる→1/4章『少年と海と猫』  作者: 大盛ふるーつ[無農薬]☆送料無料
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1話『雨の日』

初投稿です。よろしくお願いします。

 


 トラ猫だったかキジトラだったか覚えていないが、雨の日に猫を見つけた。屋根もない場所で微動だにせず雨に打たれるという、およそ野生の動物とは思えない佇まいだった。


 不思議に思い近付くと、毛並みはぼさぼさで、鼻からはふごるると苦しげな息の音が聞こえた。

 なるほど弱っていて動けなかったのかと思い、膝を折って傘に入れてやった。


 すると、よほど寒かったのか猫は俺の足元にすすっと身を寄せてきた。野良猫にしては珍しい。


 しばらくは一緒にいたのだが、体も冷えてきたので帰ろうとすると猫は一声「にゃあ」と鳴いた。

 もしかしたら「ありがとよ。じゃあな」とでも言ったのかもしれないが、なんとなくその場にとどまることにした。


 猫の頭を撫でもせずただ傘を差すためだけにそこにいた。雨に打たれていた時は可哀想だと思ったが、傘の下に入ってぬくぬくしているのだと思うとどうでも良くなった。ひどい話だ。


 それでも、俺の足にぴったりとくっついた猫の体温がとても暖かかったことだけは不思議としっかり記憶に残っている。




 結局俺は日が暮れてもそこを離れられずにいたのだが、ふと猫の様子がおかしいことに気付き体を揺すってみた。


 猫は死んでいた。


 ああ、思えば屋根のあるところに連れていってやれば良かったんだと自分の身勝手さが嫌になった。

 死んでから初めて気がついた。こんな冷たい土の上に寝かせず、もっと暖かいところに運んで、雨水を拭ってやればよかったのだ。


 ただ俺が居心地が良かったから、猫もそうに違いないと思っていた。そんなわけはないのに、勝手に思い込んでいた。

 ごめんよ。お前を見つけたのが俺でさえなければもっとまともな最期を迎えられただろうに。


 まだ4月に入ったばかりで今日は冷え込んでいた。どれだけ寒い思いをしたことだろうか。ふごるる、というあの独特な息の音が止まったことにも気がつけなかった。


 死んでからあれこれ思い付いてもどうしようもないというのに、生きているときには自分のことばかりだ。




 保健所に連絡してから逃げるように公園を立ち去り、そのまま家までなるべく人通りの少ない道を選んで帰った。いつの間にかスーツはびしょ濡れで、とても人前には出られない格好になっていた。


 そして家に着いて鍵をカチリと閉めた瞬間、ふと目の前が暗くなった。



 次の瞬間、俺は、信じられないことなのだが、猫になっていたのだ。



(ここはどこだ?……あ。あの酒屋は見覚えがある。××通りか…?うん。たぶんそうだ。あの看板も見おぼえがある。それで俺はなぜか猫になっている。声を出そうとしても『にゃあ』としか喋れない。どういうことだろう。夢か。夢なんだろうな)


 それにしても夢ではあるが地元の見たことのある景色が忠実に再現されている。普通夢ってもっとあべこべになっているものじゃないか?

 景色だけじゃない。アスファルトの匂い、肉球に小石が当たる感触まで……


(……いや。これは夢じゃない)


 さっきまで頭がぼんやりして夢のような心地だったが、頭がはっきりしてくると不思議とそう思った。

 さっきの夢を見ているような感覚は俺の意識が猫の体とうまく繋がっていなかったのだろう。今は四足歩行にもしっぽがあることにもさほど違和感がなく、俺の脳が完全に猫の体に馴染んでいるのを感じる。


 ふと思い立ってアスファルトに爪を立ててみた。


(うわぁ)


 黒板とまではいかないが、かなりきた。思い付きでやるもんじゃないな。


(俺は、猫になったのか)


 食べ物を探さなければ。ぼんやりとそう思いながらとぼとぼ歩く。


 そうは言ってもさっきまで人生に絶望していたのだ。なかなか気分は上向かない。面白い経験をしているというのに何も目新しさを感じないのは、自分の感性が貧しくなったからだろうか。




 そんなことを考えながら歩いていると、河川敷に出た。

 最悪虫でも捕まえて食おう。頭は無理だと思うが、足の一本ぐらいなら食える気がする。本当にどうしようもなくなったらの話だが。


(もう夜だ)


 そう思いながら草むらに身を隠して眠りについた。



流れは決まっているのですがストックを作っていないのでそわそわします…。

勢いを大事に書いていきたいです!

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