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09 正体

前回のあらすじ

ステラが連れ去られた

 

 私はジークさんに汽車で待っているように言われたけど、彼の手助けに少しでもなれればと思って彼のあとを追った。


 だがしかし、その結果がこのザマだ。


 私は魔族に捕まり、ジークさんの手助けどころか彼の足を引っ張ることになってしまった。


 魔族達の陣地にあるテントの中で、私は両手を背中側で拘束されて身動きが取れないようにされていた。

 私を連れてきた魔族がリーダーらしき人に話しかける。


「勇者の仲間とおぼしき女を連れて参りました。この女を人質にして、勇者を我が陣地に誘き出すことが出来ました」

「そうか……。では、我が隊の最大戦力で勇者を迎え撃てるということだな?」

「はい、仰る通りでございます」

「フフフ……勇者よ。貴様は魔王軍四天王の一人である、このレオが討ち取ってやろうではないか……」


 私は思わず彼の言葉に反論する。


「ジークさんが貴方達に負けるハズがありません!」

「……小娘、今何と言った?」


 彼から殺気を感じるけど、私は臆さずに続ける。


「……っ! ジークさんが、貴方達に負けるハズがないと言ったんです!」

「ほぉう? 我が殺気にあてられてもなお、気丈に振る舞えるか。キサマが人間族でなければ、我が妻に迎え入れていたかもしれんな」


 彼にそう言われるけど、ちっとも嬉しくない。


「しかしジークか……。珍しくない名とは言え、奇妙な偶然もあるのだな。……まあいい、この女を見張っておけ。手出しは一切するな。勇者が現れたら連れてこい」

「ハッ!」


 彼は部下に指示を出してからテントから出ていった。


 私は俯き、ジークさんが無事であることを祈った―――。




 ◇◇◇◇◇




 俺は魔王軍の陣地にたどり着いた。

 陣地にはテントが建てられており、ステラがどこにいるか分からない。

 超級魔法で手っ取り早く済まそうと思ったが、これじゃあ使用を控えた方が良さそうだ。


 俺の姿を確認した魔族が十人ほどこちらに向かって攻撃を仕掛けてくる。

 俺は雷属性上級魔法の《ギガサンダー》を放ち無力化する。


 俺はそのまま陣地に突撃する。


 魔族が後から後から攻撃を仕掛けてくるが、俺はそれを聖剣で斬り伏せたり、魔法を喰らわせたりして次々と無力化していった。


 とその時、一際強い存在感を放ちながら、一人の男が現れた。


「ほぉう……。キサマが勇者か」

「そうだ」


 俺はその男に返事をする。


 その男は、魔王軍四天王の一人で、獣人族のレオだった。

 レオはライオンのたてがみのような髪型をしていて、本人の身体能力及び戦闘能力は高く、叩き上げで四天王の座まで上り詰めた武人だ。

 彼は自らの部下を大切にすることでも有名で、そのおかげか彼は部下からの信頼も篤い。


 なぜそんな情報を知っているかというと、それを得られる立場にいたからだ。


 俺はレオに向けて聖剣を構える。


「ステラを……人質を解放してもらおうか」

「いいだろう。……おい、連れてこい」


 こちらの要求があっさり通ったことに、俺は逆に警戒する。


 数分後、両手を拘束された状態で、ステラがレオの部下に連れられてきた。


「この女は返してやる。ただし……キサマがその剣から手を離してからな」


 俺は聖剣を地面に突き刺して、両手を上げる。


「これでいいか?」

「ああ、望み通り返してやろう……この女の首をな!!」


 そう言うや否や、レオは懐から短剣を取り出てステラの首目掛けて振るう。


 俺はステラを助けようと思い、身体強化魔法は今からだと間に合わないと判断して……。


 ――俺は能力を解放する。




 ◇◇◇◇◇




 目の前の凶刃が自分の首に迫っていることを確認して、私は死を覚悟して目を固く瞑る。


 ――その後に起こったことは、私の想像を遥かに越えていた。


 最初に聞いたのは、金属同士がぶつかり合う甲高い音。


 次に感じたのは、誰かが私の身体を抱き寄せたこと。その時に、軽い浮遊感も感じた。


 最後に自覚したのは、私がまだ生きていること。


 私は恐る恐る目を開ける。

 目の前には、ジークさんの横顔があった。私は彼の右腕で抱き寄せられているらしい。


 彼の左手を見ると、そこには見たことのない黒い長剣が握られていた。


 そしてあるものが視界に入る。


 ジークさんの背中から、漆黒の竜の翼が生えていた。

 そして彼の正体を初めて知る。


 ――彼は、竜人族と呼ばれる魔族だ。




 ◇◇◇◇◇




 俺は黒いヘアピンを元の姿―黒い刀身の魔剣に戻しながら、背中から翼を生やしてステラに接近する。

 一瞬で彼女の元にたどり着き、魔剣でレオが振るう短剣を防ぎながら、彼女の身体を抱き締めその場から離れる。


 レオから距離を取ってから、改めて彼に剣を向ける。

 彼は俺の姿を見て、驚きのあまり身体をワナワナと震えさせていた。


「黒い剣に、漆黒の翼……そしてジークという名。まさかキサマは……いや、貴方様は!?」


 レオが驚くのも無理はないだろう。

 だって彼が口にするだろうその男は、とっくに歴史の表舞台から姿を消したハズだから。

 彼がソレを口にする。


「先代魔王、ジーク様!!」


 そう。


 俺は勇者になる前は、魔族達を統べる魔王だったのだ―――。






とうとうジークの前職が明かされました。




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