表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/25

07 呼び出し

前回のあらすじ

正式にパーティーを組んだ

 

 一通り勇者の武勇伝も語り終わり、俺はステラと別れ自分が泊まっている宿屋に戻った。


 ステラがあそこまで勇者に興味があるとは意外だった。

 自分がやったこととはいえ、他人に自分の功績を語るのはなんだか気恥ずかしく感じた。

 まぁ……徹底して勇者から聞いたという体で話したので、俺が勇者だと気付いてないと思うが。


 俺はまだ彼女に自分が勇者だと伝えていない。伝える気もないが……。

 彼女の夢を壊す気にはならないので、それでいいかと思った。


 それに万が一、ステラが俺の事を勇者だと知っている状態で魔王軍に捕らえられでもしたら、そこから俺の情報が伝わる恐れがあるからだ。

 それだけは絶対に避けなければいけない。特に、魔王に俺の存在を知られるわけにはいかない。


 そうならないように行動しようと心に決めた―――。




 ◇◇◇◇◇




 翌日。

 俺はギルドに向かうと、入口付近にステラが誰かを待っているかのように立っていた。

 ステラは見た目は美少女なので、ただ立っているだけでもとても絵になり、通行人がチラチラと彼女を見ていた。


 するとステラが俺を見つけ、近くまで駆け寄ってくる。


「おはようございます、ジークさん!」

「あ、ああ……おはよう」


 ステラが何故か笑顔で挨拶をする。

 その理由が分からなかったので、俺は戸惑った。


「ステラ。なんで笑ってるんだ?」

「えっ……笑ってました?」

「ああ」

「えっと、これはですね……えへへ。ジークさんと一緒にクエストに行けるなぁと思ったら、自然とこうなっちゃいまして……」

「そうか……」


 ……まるでピクニックに行くみたいなテンションだな。


 俺は心の中でそう思い、ステラを連れてギルドに入っていった。


 そのままクエストボードに向かおうとした時に、俺達に声をかける人物が現れた。

 その人物は鎧を着込んでいて、一目で騎士だと分かった。


「失礼。ジーク殿で間違いないでしょうか?」

「ああ、俺がジークだが何か用か?」


 俺がそう返事をすると、その騎士は右手を左胸に当てる騎士団流の敬礼をする。


「はい。ハデス国王がジーク殿に用件があると仰られまして、自分がジーク殿を王城までお連れする役を賜りました」

「そうか……分かった。王城に向かおう」

「ではご案内いたします。そちらのお連れの方はどうなさいますか?」


 騎士が俺に聞いてくる。

 国王の用件は十中八九魔王軍絡みだと思うので、ステラは連れていかない旨を伝えようとする。


「彼女は……」

「もしよろしければ、私も連れていってもらえませんか?」


 俺が返答するより先にステラが答えた。

 騎士は快諾する。


「ええ、構いませんよ。それでは参りましょう」


 騎士を先頭にして俺達は王城に向かった―――。




 ◇◇◇◇◇




 ギルドから王城までは近いので、乗り物は使わずに徒歩で向かう。

 王城に着くまでの間、ステラに付いてきた理由を尋ねる。


「ステラ、なんで付いてきた?」

「ジークさんが王様から指名された理由が知りたかったからです」


 彼女は意外と好奇心旺盛なのかも知れない。……いや、年頃の少女だとこれが普通か?


 ともかく、俺はステラに釘を指す。


「まあいい……だけど一つだけ忠告だ。俺と国王が何を喋っていても驚くな」

「? それはどういう……?」

「聞いていれば分かる」


 俺はそれきり口をつぐむ。

 ステラは何か聞きたそうにしていたが、口を開くことはなかった―――。




 ◇◇◇◇◇




 王城に着き、俺達はそのまま玉座の間に向かい国王と謁見した。

 一応王の御前なので跪く。


「陛下、ジーク殿をお連れいたしました」

「うむ、ご苦労。そなたは下がってよいぞ」

「ハッ!」


 俺達を連れてきた騎士は一礼してからこの場を去った。


 国王が俺に話しかける。


「今日はそなたに用があって来てもらった、勇者よ」

「えっ!?」


 俺の左斜め後ろにいるステラが、小さく驚きの声を上げる。

 そりゃ驚くか。勇者だって伝えてないもの。


 俺はステラの事は気にせずに国王に尋ねる。


「して……何用ですか、王よ」

「いつも通りの口調で構わないと言っておろうが」


 国王が笑う。

 国王がそう言うので、俺は立ち上がり普段の口調に戻す。


「……じゃあ遠慮なく。何の用で俺を呼び出した、ハデス?」

「!? ジ、ジークさん!? 不敬ではないですか!?」


 ステラが慌てた様子で俺の服の裾を引っ張る。

 その様子を見て国王―ハデスが笑い声を上げる。


「ハッハッハッ……。構わんよ、お嬢さん。わしとジークの仲じゃしな」

「そう仰られるのでしたら……」


 ステラが掴んでいた裾を離す。

 ハデスは気を取り直して本題に入る。


「して、お主を呼び出した理由じゃが……。おおよそ検討はついておるのではないか?」


 ハデスの言葉に俺は頷く。


「ああ。魔王軍に何か動きでもあったか?」

「うむ……」


 ハデスが重々しく頷く。

 そして俺を呼び出した理由を告げた。


「魔王軍がこの大陸の北部に侵攻してきたという報せが入ってな。お主にはこれを迎撃、若しくは殲滅して欲しい」






ハデスはジークが勇者になる前から面識があります。

それにはジークの前職が関係してくるのですが、その話は後程。




評価、ブックマークをしていただけると嬉しいです。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ