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06 結成 その3

前回のあらすじ

偽勇者をのした

 

 ちょっとした騒動も終結し、アンナは自分の仕事に戻っていった。

 俺とステラは、入口近くのテーブルに向かい合って座る。


「それにしても……何故あんな嘘をついた?」

「嘘、とは?」


 ステラがわざとらしくとぼける。


「俺がステラとパーティーを組むことを快諾したっていう嘘のことだ」

「えっと、その……。ジークさんが私を助けるためとはいえ、嘘でも私のことをパーティーメンバーと言ってくれたので、それに便乗しました」

「……つまり、俺が嘘をつかなければ、ステラとはパーティーを組まないままだったってことか」

「えっと……はい。その場しのぎの嘘とは言え、ジークさんに迷惑をかけたのなら謝ります」


 そう言ってステラが座りながら頭を下げる。


「いや、いい。それに、なっちゃたものは仕方がない」

「それでは!?」


 ステラがバッと顔を上げる。

 俺はステラに向かって右手を差し出す。


「ああ、正式にパーティーを組もうか。よろしく、ステラ」

「!! ……こちらこそよろしくお願いします、ジークさん!」


 ステラは満面の笑みを浮かべながら、両手で俺の右手を握り返した。


 こうして俺達は、嘘ではなく正式にパーティーを組むことになった―――。




 ◇◇◇◇◇




「それにしても驚きました。ジークさんがあの双翼の片割れだったなんて」


 俺達はそのまま何かのクエストを受けるわけでもなく、ギルドの片隅で駄弁っていた。


 双翼とは、俺と俺の親友が一緒に冒険者をしていた時に打ち立てた伝説が元で、そう呼ばれるようになった異名だ。


「それではやはり、あの伝説は本当に?」

「ああ、本当だ」


 俺はステラの言葉を肯定する。


 俺と俺の親友が打ち立てた伝説、それは――同時に出現したSランクの魔物二体をそれぞれ単騎で討伐したことだ。


 冒険者のランクには、Sランクの上にSSランクというものがあり、その昇格条件が「単騎でSランクの魔物を討伐すること」だった。

 そもそもSランクの魔物は、Sランク冒険者数人がかりでも討伐出来ないのが常なので、この条件がいかに無謀かは火を見るより明らかだった。


 何故そんな条件になっているか、昔アンナとは違うギルド職員に伺った所、世界初のSSランク冒険者が最初にその偉業を成し遂げたので、それにあやかってのことらしい。


 二体同時に出現した魔物を見て、俺と親友はSSランクに昇格出来るチャンスだと思い、別々に魔物を単騎で討伐しにかかり、そして見事成し遂げた。

 今思うと、随分と無茶をしたなぁと感じる。所謂、若気のいたりというやつだ。


 その報告をギルドにした時は疑われたが、俺達の冒険者カードを見せるとすぐさま納得してくれた。

 この冒険者カードには冒険者の個人情報の他に、いつどこでどういう風に魔物を討伐したかという討伐ログや、今までどれくらいの魔物を討伐したかという討伐記録も記されている。


 討伐ログを確認し、俺達がそれぞれ単騎で討伐したことが証明され、SSランクに昇格した。

 その時に、「双翼」という異名も名付けられた。


「なるほど……。それで、ジークさんのご友人は今どこに?」


 ステラの疑問ももっともだ。

 双翼と呼ばれながら、その片割れしかいないんじゃ誰だって疑問に思う。


「ガルムとは……親友とは、今は別行動を取ってる。アイツも今頃どこかで、元気にやってるんじゃないか?」


 嘘は言っていない。だけど――真実も語っていない。


 俺がそんな事を考えているとは露知らず、ステラがのんきに言う。


「いつか私も会える時が来るでしょうか?」

「……いつか会える、必ず」


 俺はそう答えるしかなかった―――。




 ◇◇◇◇◇




 ステラがポンと手を叩く。


「会うといえば……ジークさんは本物の勇者様にお会いしたことがあるんですか?」

「……どうしたいきなり?」

「だって気になるじゃないですか。勇者様が一体どんな方なのか」


 ……目の前にいる男がその勇者です。


 そう答えるわけにはいかず、俺は言葉を濁す。

 別に告げてもよかったが、彼女のキラキラした目を見てると、夢を壊さない方がいいと思った。


「まぁ……勇者と言っても普通の人だよ。パッと見は一般人と変わらない」

「そうなんですか?」

「ああ、だけど戦闘になるととてつもない強さを発揮してた」

「そうなんですか! 例えばどのような!?」

「例えば? え、え〜っと……」


 俺は困惑しつつも、俺がやったことをあたかも見てきたかのようにステラに話す。


 ステラはその間、目を輝かせながら、俺が語る勇者の武勇伝に耳を傾けていた―――。






ジークがSSランクに昇格したのは三年前、つまり十七才の時です。




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