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25 乗車

前回のあらすじ

ロータスの街に行こう

 

 俺達の今いる場所から目的地であるロータスの街までは、列車を乗り継いでも一週間以上掛かる。

 その理由というのが、東大陸と南大陸が地続きになっている部分に存在するピオニーの街で列車を乗り換えないといけないからだった。


 長距離移動用の列車は本数自体が少なく、それが大陸間ともなればなおさらだった。

 だから今回は、ゆっくりとした移動を楽しめそうだと、この時の俺は思っていた―――。




 ◇◇◇◇◇




 長距離移動用の列車の特徴として、客室車両があることが挙げられる。

 そしてハデスのいらない気遣いにより、俺とステラは同じ客室となっていた。


 しかも、キングサイズのベッド一つだけというオマケ付きで。

 明らかに家族向けか、そう言った客向けの客室だった。


「あ、あの……ベッドが一つしかないんですけど……」


 顔を真っ赤にしながら、ステラが尋ねてくる。

 あとでハデスを締め上げると心に固く誓いながら、彼女の質問に答える。


「この問題は後回しだ。せっかくの列車での移動だ。ロビー車両に移動するぞ」

「あ……はい!」


 俺はステラを連れて、ロビー車両へと移動した―――。




 ◇◇◇◇◇




 一方その頃。

 最後方に位置する貨物車両の中で、ある異変が静かに動き始めていた。


「よし……上手く乗り込めたな」

「はい」


 彼らは全身黒い服装に身を包み、装備品の銃やサバイバルナイフ等の点検を行っていた。


 彼らは魔族撲滅という目標を掲げた過激派集団で、自らの要求を各国の上層部に呑ませる目的で、この列車の乗客を人質に取るために貨物車両の中に忍び込んでいた。


 確認を終えた後、この集団のリーダーが静かに、だけど確かな声音で告げる。


「それでは……ミッションスタート」


 闇に紛れ、彼らは動き始めた―――。




 ◇◇◇◇◇




 ロビー車両には子供連れの家族や、老夫婦など他の乗客の姿もあった。

 俺とステラは、空いている席に腰掛ける。


 その席は窓側に向けられており、外の風景を楽しめる造りとなっていた。


「ふぅ……」


 腰を下ろす際、自然とそんな声が出ていた。

 何処かおかしかったのか、ステラはクスクスと微笑んでいる。


「……? どうかしたのか?」

「いえ……ジークさんでも、そんな声を出すんだなぁ……って思って」

「……俺をなんだと思ってるんだ……」

「え〜っと……とても頼りになるヒト、ですかね……」


 そう答えるステラの顔は、耳まで真っ赤だった。


「隣、いいですか?」


 すると突然、俺達に声が掛けられる。

 声のした方を振り向くと、そこにはピンク色の髪をセミロングに伸ばした女性が立っていた。


 顔付きや雰囲気がどことなくゲーティアに似ていたから、彼女なのかと一瞬警戒したけど、彼女と違い灰色の瞳をしていた。

 年齢の方は……俺と同じか少し下くらいだろう。


「ええ、いいですよ」


 俺はそう答え、少しだけステラの方に寄って女性が座れるだけのスペースを空ける。

 彼女は一言お礼を言ってから、俺の隣に腰を下ろした。


「失礼ですが……お二人は新婚旅行か何かで?」

「新婚っ!?」

「違います。俺とステラ……彼女は、ただのパーティーメンバーですよ。ちょっとした依頼を受けて、東大陸にあるロータスの街に向かうところなんです」


 女性の言葉に動揺するステラをよそに、俺は冷静にそう答える。


「ロータスの街ですか? 奇遇ですね。わたしもちょうど向かうところだったんですよ。あるヒトの案内を任されまして……」

「その……あるヒトと言うのは?」

「『勇者』様らしいんですけど……詳しい特徴などはまだ何も聞かされていなくて……」


 あはは……と、女性は苦笑いを浮かべる。


 ……正面にいる男が、その『勇者』です……とは言えないよなぁ……。

 いや……別に正体を明かして困るなんてことはないが……。


「このヒトがその『勇者』ですよ」


 なんて思っていたのに、ステラが勝手に暴露しやがった。

 肩を竦め、俺は改めて名乗る。


「ハァ……彼女の言った通り、俺が『勇者』です。名前はジーク・ドラグナー」

「ドラグナー……ということは、ソロモニア王国の御三家の方ですか?」

「ええ、まあ。それは知ってるんですね」

「えっと……はい。ソロモニア王国については、前から興味があったので……」


 そう答える女性の視線は、俺やステラの姿を捉えてはいなかった。

 何かしらの秘密がありそうだが、見ず知らずの相手に根掘り葉掘り聞くのは失礼だろう。


「それではこちらからも名乗らせていただきますね。わたしはリナ。『虹の魔女』の異名を持つSランク冒険者の魔法使い、リナ・サロンです」






アルがアイツだったように、リナもあのお方です。




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