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19 央都に到着

前回のあらすじ

ゲーティアが立ち去った

 

 ゲーティアが立ち去った後、俺は肺に溜まっていた空気を全て吐き出す。

 剣を握っている両手も、いつの間にか汗ばんでいた。


「ふぅ〜……いったい何だったのかしら、あのゲーティアって女性ひと?」


 母さんも深く息を吐きながら、剣を鞘に納める。

 ゲーティアがいる前と後で、辺りの雰囲気が変わっている気がした。


 するとギュッと、背後にいたステラが俺に抱き着いてくる。


「ステラ?」

「あの……すみません、ジークさん。その……腰が抜けちゃいました……」

「は……?」


 まさかの申告に、俺はすっとんきょうな声を上げる。

 すると母さんが、ニヤニヤといやらしい笑みを浮かべる。


「なら、ジークがステラちゃんを背負ってあげたらどうかしら〜?」


 完全に自分の息子をからかっているな、この母親は……。


 そう思いつつ、俺は聖剣と魔剣をヘアピンの姿にして髪に留める。

 そしてステラを背負う。


「ひゃあ!?」

「暴れたら落とすから、そのつもりで」

「あ、暴れませんよ!」


 ステラはそう返すと、俺の首に両腕を回してきた。

 ニヤニヤとニヤけている母さんを無視しつつ、目的地へと向かう。


 ……背中から伝わる柔らかい感触も、極力意識しないようにしながら―――。




 ◇◇◇◇◇




 そしてもう一晩野宿をし、次の日の昼前にグランセントリアへとたどり着いた。

 かつては央都と呼ばれたこの街は、度重なる戦乱によって国名を都市名へと変えていた。


 そして遥か昔には世界の中心とまで呼ばれるまでに栄華を誇っていた央都の街並みは、先の戦闘によって見るも無惨な様相をしていた。

 具体的には、建物のほとんどは崩れていて、地面も凸凹になっていた。


 そんな中でも、いや……だからこそ異彩を放つ建物が一つあった。


 街のほぼ中央に聳え立つその建物は――旧冒険者ギルド本部だった。


 今は南大陸にあるギルド本部だが、第一次人魔大戦以前はここ中央大陸の央都にあったらしい。

 だが『原初の魔王』が引き起こした事件により、ギルド本部の移動を余儀無くされた……らしい。


 閑話休題。

 そんな旧冒険者ギルド本部の建物が、ほぼ無傷の状態で街の中央付近に聳え立っていた。


「あそこに行けば、ゲーティアが言っていたことが……」

「その前にちょっといい?」

「……? なんだよ、母さん?」


 そう聞き返すと、母さんは申し訳なさそうな表情を浮かべながら両手を合わせていた。


「わたしは一人で街中を探索するから、ジーク達に旧冒険者ギルド本部の方の探索を任せてもいいかしら?」

「まあ、俺は別に構わないけど……」

「そう……それじゃあお願いね。……二人っきりだからって、変なことはしないようにね?」

「誰がするかっ!」


 俺はそう怒鳴るが、母さんはどこ吹く風といった風に俺の言葉を聞き流して俺達の前から立ち去って行った。

 マイペースな母親の所行に、俺は思わず溜め息を吐く。


「ハァ……俺達も行くか」

「え? あ……はい!」


 そして俺とステラは、旧冒険者ギルド本部の建物へと向かった―――。




 ◇◇◇◇◇




 旧冒険者ギルド本部の建物の中は、他の冒険者ギルドと同じような構造をしていた。

 特徴らしい特徴もないが、しいて言えば他のギルドの建物よりも広いくらいだろうか。


 建物の中を進んで行き、一階の奥の方にある書庫へとやって来る。

 そして錆び付いたドアを開けて、中に入る。

 その拍子に、部屋の中に溜まっていた埃が舞い上がる……ようなことはなかった。


 部屋の中は綺麗に片付けられており、つい最近まで人の出入りがあったことが窺える。


「すごい本の数ですね……」


 本棚の間を歩きながら、俺の後ろをついてくるステラが感心したような声を上げる。


「これくらいの蔵書の数は、すごい内に入らないだろう。魔王城の書庫にある蔵書は、ここの倍以上はあったからな」

「倍以上……」


 ステラの表情は分からないが、その声音から驚いているという雰囲気だけは伝わってくる。


 本棚の間を抜け、適当な本棚から本を取り出す。

 ゲーティアに言われたことが気になり、その手掛かりがないか調べようと思ったからだ。


 だが、有力な手掛かりになりそうなモノは見つからなかった―――。




 ◇◇◇◇◇




 気が付くと、太陽が西の空へと傾いていた。

 結構な時間、書庫の中に籠ってしまっていたらしい。


「ステラ。今日はこれくらいに……ステラ?」


 そこでふと、ステラの姿が見当たらないことに気付いた。

 いい年こいて迷子……はさすがにあり得ないから……お花でも摘みに行ったのか?


 そんなことを思いつつ、俺はギルドのロビーに当たる場所までやって来る。


 そしてそこには床に倒れ伏すステラの姿と、彼女の傍らには両手に剣と杖を構えた、俺と同年代くらいの見た目の茶髪の謎の男が立っていた―――。






茶髪で、剣と杖の二刀流……?

はて、何処かで聞いたような……?(すっとぼけ)




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