表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/25

18 悠久の魔法使い

前回のあらすじ

謎の存在が現れた

 

 俺達は突然目の前に現れた存在に、目を奪われた。

 その存在はフード付きのマントを羽織り、フードも目深に被っており、フードの隙間からピンク色の髪が見えていた。

 そしてその手には、杖が握られていた。


 母さんが警戒心を露にしながら、その存在に尋ねる。


「あなたは、誰?」

「わたし? わたしは……何者にもなれなかったナニカ、かしら?」


 謎の存在は冗談めかした口調でそう答える。

 声音から、その存在が女だと判明する。

 だけど明らかになったのは性別だけだった。


 母さんは苛立たし気に、彼女に再び問いかける。


「ふざけてないで、ちゃんと答えて。答えないと……斬るわ」


 母さんが本気だと察したのか、謎の女は素直に答えた。


「はぁ……分かったわ。ちゃんと答えるわよ」


 そう言うと彼女は、マントによって隠されていたロングスカートの裾を軽くつまみ上げ、俺達に向かって会釈をする。


「お初にお目にかかります。わたしの名前はゲーティア。『悠久の魔法使い』、ゲーティアと申します。以後お見知りおきを」

「悠久の魔法使い……?」


 その異名には聞き覚えがなかった。

 超級魔法が使えるともなればどこかで噂になっているハズだが、一度も聞いたことなどなかった。


 とそこまで考えた時、さっきの出来事に違和感を覚えた。

 ゲーティアと名乗った謎の女は、俺しか使えないハズの《ボルテクスバースト》を使っていた。


 そのことが引っ掛かって、俺はゲーティアに尋ねる。


「ゲーティア、と言ったか? お前に聞きたいことがある」

「なぁに? 魔王の末裔くん?」


 母さんの時とはうって変わって、気さくな雰囲気で聞き返してきた。

 俺が魔王の血を引くことも知っているらしい。

 どこでそのことを知ったのか聞きたい気持ちもあるが、それは後回しにする。


「何故お前も《ボルテクスバースト》を使える? あの魔法の使い手は俺しかいないハズだ」

「ええ、そうよ。この時代では、キミしかあの魔法を使えないわ」

「この時代、では……?」


 含みのある言い方だった。

 それではまるで、自分はこの時代の存在ではないとでも言うような……。


 とその時、バンという破裂音と共に、ゲーティアが倒れた。

 音がした方に目を向けると、そこには魔族の生き残りが銃を構えながら立っていた。

 ゲーティアは頭を撃ち抜かれたらしく、地面に血の池を作りながらピクリともしなかった。どうやら即死のようだ。


 母さんはすぐさまその魔族に接近すると、一太刀で斬り伏せた。

 これで本当に、魔族は全て倒されたようだ。


「なんだったのかしら、この人?」


 母さんはそう呟き、それに釣られるようにゲーティアの死体に目を向けた時、自分の目を疑った。


 頭を撃ち抜かれて死んだハズのゲーティアの身体がもぞもぞと動き、あろうことか何事もなかったかのように起き上がったのだ。


 俺はステラを自分の背後に庇い、聖剣と魔剣を構えてより一層警戒心を露にする。

 母さんも今までに見たことがないほど、険しい顔をしていた。


 そんな俺達を気にせずに、ゲーティアは頭を左右に振りながら立ち上がる。


「いったぁ……久しぶりに死んだわ……」

「お前は、不死……なのか?」


 俺が恐る恐る尋ねると、ゲーティアは首を横に振る。


「少し違うわね。わたしは不老不死なの。……正確に言えば、不老不死の呪いを受けた者、かしら?」

「不老不死が、呪い……?」


 俺の後ろにいるステラが、そう呟く。

 彼女の呟きが聞こえたのか、ゲーティアは頷く。


「ええ、そうよ。親しい人は死んでいくのに、自分は死ねない。愛する人と人生を添い遂げようとも、自分は老いることはない。愛する人の後を追おうとも、不死だから死ぬことは出来ない。これを呪いと言わずに、何と言うの?」


 ゲーティアが自嘲気味にそう言う。

 そう言う彼女の声音には、どこか悲しみを帯びている気がした。

 だけどそれも一瞬のことで、彼女は告げる。


「……長居しちゃったけど、わたしはこれで失礼するわ。また会う機会が……ないといいわね」


 ゲーティアが踵を返そうとしたその時、母さんが彼女を呼び止める。


「ゲーティア、最後に聞かせて。貴女は人類軍と魔王軍、どちらの味方なの?」


 ゲーティアは足を止め、母さんの質問に律儀にも答える。


「どちらでもないわ。でも……強いて言えば、わたしは『原初の魔王』の血を引く者には敵対しないわ」

「それは、どういう……?」


 母さんが聞き返すけど、ゲーティアは首を横に振る。


「それ以上はわたしの口からは言えないわ。知りたかったら、自分で調べることね。この先にはお誂え向きに、旧冒険者ギルド本部があるのだから」


 ゲーティアはそれだけ言い残すと、俺達の前から去って行った―――。






ピンク髪の魔法使い。どこかで聞いたような……?




評価、ブックマークをしていただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ