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前回のあらすじ

先代勇者登場!

 

 母さんは微笑を浮かべながら、軽快な足取りで俺の方に歩み寄ってきた。


「なんでって……息子のことが心配になったからよ。そしたら案の定、ね……」


 母さんはニヤニヤしながら、寝袋にくるまりすやすやと眠っているステラに目をやる。

 そして再び俺の方に目を向ける。


「ジークも隅に置けないわね。彼女が出来たのなら、わたし達に教えてくれればいいのに」

「ステラは彼女じゃないし、もし仮に出来たとしても母さん達に教える義務はない」

「つれないわねぇ……。ジークもいい年なんだから、恋人くらい作ればいいのに」

「大きなお世話だ!!」


 ……この母親はいったい何を言い出すのか? 本当に大きなお世話だった。


 すると俺の大声が原因なのか、ステラが目を覚ましてしまった。


「ジークさん……? いったいどうし……」


 ステラは上体を起こした状態で母さんの姿を目にすると、そのまま固まってしまった。

 母さんはそんなステラに構わずに、彼女に挨拶をする。


「こんにちは。いや……今は夜だから、こんばんは、かな? わたしはアリスよ。よろしくね、ステラちゃん」


 母さんはそう言って笑いかけるけど、ステラは固まったままだった。

 さすがに心配になり、俺はステラに声を掛ける。


「大丈夫か、ステラ?」

「…………はっ!? 私は夢でも見てるんですか!? アリス様が目の前にいらっしゃるなんて!!」


 気を取り直したステラは、やたらとテンションが高かった。

 有名人に出会えて、興奮しているのかもしれない。


 ステラは寝袋から出ると、立ち上がって母さんに挨拶をする。


「あ! 挨拶が遅れました! 私はステラと言います! 先代勇者のアリス様にお会い出来て、とても光栄に思います!」

「嬉しいなぁ、そんなに喜んでもらえて。……それに引き換え、わたしの息子ときたら……」


 母さんがジト目で俺を見てくるが、その視線を受け流す。


 落ち着きを幾分か取り戻したステラが、母さんに質問する。


「それでアリス様は、どうして中央大陸に?」

「そうだ、母さん。さっきみたいにふざけずに、ちゃんと答えてくれ」


 ステラの質問に便乗して、俺も母さんに尋ねる。

 すると母さんは真面目な表情を浮かべ、答える。


「わたしがここにいるのは、ハデス王に頼まれたからよ」

「……それは、先代勇者としてか?」


 俺がそう尋ねると、母さんは無言で頷く。


 途端にこの中央大陸の調査任務がキナ臭くなってきた。

 現勇者と先代勇者、この二人がいないと対処し切れない問題でもあるのだろうか?


 俺がそんなことを考えていると、母さんはヘラヘラと笑う。


「だけどまぁ、何が起きても問題ないわよ。なんてったって、勇者が二人いるしね」

「……油断してると足下掬われるぞ」

「王位簒奪された人が言うと、重みが違うわね」

「ぐっ……!? この……!」


 ……人が気にしてることを言いやがって、この母親は!!


 俺が言い返せないでいると、母さんはステラの肩に手を置く。


「それじゃあわたし達は休むから、ジークは見張りヨロシクね? さ、寝ようか、ステラちゃん」

「……いや、ちょっと待て。俺達に付いてくるつもりか?」

「そうよ?」


 母さんは何を当たり前のことを? と言った様子で、首を傾げていた。

 俺は頭を抱えたくなってきた。

 この人がいると、絶対ロクなことになりはしない。


 そんな俺のことなどお構い無しに、母さんは魔法袋から自分の寝袋を取り出して、ステラの寝袋の隣に敷く。

 そして寝袋に入るや否や、すやすやと寝入ってしまった。


 そのマイペースっぷりに、ステラは呆気に取られていた。

 そんな彼女に、俺は溜め息混じりに言う。


「はぁ……。ステラも休んでくれ」

「え? あ……は、はい」


 ステラは戸惑いつつも、いそいそと自分の寝袋に入った。


 どっと疲労感を感じつつも、俺は見張りを再開した―――。




 ◇◇◇◇◇




 翌日になり、母さんは本当に俺達に付いてきた。


 グランセントリアに向かう道すがら、母さんはステラに絡んでいた。


「ねぇ、ステラちゃん。ステラちゃんはジークのことが好きなの?」

「な!? ななななんでそんなこと聞くんですか!?」


 ステラは見るからに狼狽していた。

 母さんはニヤニヤと笑いながら、そう思った理由を話す。


「だって、ずっとジークのこと目で追ってるんだもの。それでどうなの? 好きなの?」

「す、好きとかではなくてですね!?」

「じゃあ何?」

「えっと、それは……そのぅ……」


 ステラがチラチラと俺を見ながら言い淀んでいたその時、索敵魔法に反応があり周囲を警戒する。


 母さんも気配で気付いたようで、真剣な表情を浮かべる。


「ジーク、敵は?」

「この反応は……魔族みたいだな」

「そんな!? 魔族はすでに中央大陸にいないハズでは!」

「生き残りがどこかに隠れてたんだろう」


 ステラの悲鳴に似た言葉に、俺は冷静にそう返す。

 すると木々の間から、武装した魔族達が現れた。


「ジークはステラちゃんを守ってて。魔族の相手はわたしがする」


 俺は母さんの指示通りに、ステラを俺の背後に庇う。


 母さんは腰に提げた鞘から剣を抜き、魔族達に斬りかかろうとしたその時―――。


「《ボルテクスバースト》」


 どこかから、雷属性超級魔法が放たれた。

 だけどその雷撃は俺達三人に命中せず、魔族だけを撃ち抜いた。


 こんな芸当は、熟練の魔法使いでも出来ない。

 ということは、コレを放った存在はそれを出来るだけの技量があるということだろう。


 雷撃が止み、俺達は道の先に目をやる。

 するとそこには、フードを目深に被った人物が立っていた―――。






突然現れた謎の存在とはいったい……?




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