14 訓練
前回のあらすじ
事故った
翌日になり、俺とステラは王城を後にする。
そして、何かしらのクエストを受けるためにギルドに向かう。
ギルドに向かう道中、ステラは俺から一定の距離を保っていた。
そうしている原因は、まぁ……分からなくもない。
おそらくは、昨夜俺が押し倒s……ゲフン、ちょっとした事故が原因だろう。
このままじゃパーティーとしての行動に支障をきたす恐れがあるので、俺は立ち止まりステラの方を向く。
彼女もつられて立ち止まる。
「ステラ」
「ひゃっ、ひゃい!? ……なんでしょうか、ジークさん?」
ステラはすっとんきょうな声を上げた。
返事をするけど、視線を俺と合わせようとせずに、そっぽを向いていた。
俺は構わずに続ける。
「昨日のことは気にするな」
「……それは、私が魔王軍に捕まってしまったことでしょうか? それとも……よ、夜の……ゴニョゴニョ」
ステラが顔を赤くして俯く。
俺は極力気にしないようにして更に続ける。
「後者だ。俺はあのことを忘れるから、ステラも忘れろ」
「は、はい……。分かりました……」
ステラは赤くなったまま頷く。
俺は再びギルドに向けて歩き出した―――。
◇◇◇◇◇
ギルドに入り、クエストボードに向かう。
何かちょうどいい―もちろんステラにとっては、だが―クエストがないか探す。
一刻も早く、ステラには一人前の冒険者になってもらって、自分の身は自分で守れるようになってもらいたい。
だが……。
「……無いな」
「……無いですね」
高ランクのクエストばかりで、ステラでも受けられる低ランクのクエストが無かった。
そこに馴染みのギルド職員のアンナが通りがかった。
ちょうどいいので、彼女に事情を聞く。
「アンナ、ちょっといいか?」
「は〜い! ……って、ジークか。何か用?」
「低ランクのクエストが軒並み無いけど、何かあったのか?」
するとアンナは渋い顔をする。
「あぁ、それね……」
「? 何か問題でも起きたんですか?」
俺の代わりにステラがアンナに尋ねる。
アンナは、どこかばつが悪そうな顔をして答える。
「問題というか、何というか……。魔王軍騒動で弱い魔物がどこかに行っちゃって、低ランクのクエストが発行出来ない状況になってるんです」
「そうなんですか……」
これは俺も初耳だった。
まさか魔王軍侵攻の弊害が、こんな形で表れるとは思わなかった。
クエストが受けられないんじゃ仕方ない。
俺は当初の予定を変更する。
「アンナ。訓練場は空いてるか?」
「ちょっと待ってね。今確認するから」
そう言ってアンナは、手元の書類を確認する。
「……うん、空いてるわよ。でもどうするの? 訓練場なんかに行って?」
アンナが怪訝そうな顔で聞いてくる。
「もちろん訓練さ。……ステラのな」
「へ!? 私の!?」
ステラはびっくりしたような声を上げた―――。
◇◇◇◇◇
ギルドに併設されている訓練場に向かい、俺はステラと対峙する。
未だに状況が呑み込めてないステラが、俺に尋ねてくる。
「え~っと、ジークさん。どうして訓練場にやって来たんですか?」
「もちろんステラを鍛えるためだ」
「……一応、理由を聞いてもいいですか?」
「ステラがポンコツ……失礼、ステラが弱いからだ」
「……今、ポンコツって言いませんでした?」
「言ってない」
ジ〜ッと目を細めて見つめてくるステラに対して、俺は視線を逸らしながら答える。
「……まぁ、いいです。それで、ジークさんが私を直接鍛えることに何の意味が?」
「自分の身は自分で守ってもらわなきゃ困るから、俺が培ったモノをステラに教える。それがパーティーメンバーの義務だからな」
「そ、そうですか……。えへへ……」
ステラは照れ、何が嬉しいのか笑っていた。
俺は気にせずに続ける。
「……まあいい。これから訓練を始めるから、杖を構えろ」
「はい! ……あの、ジークさん?」
「なんだ?」
「そのぅ……ジークさんが手ぶらのように見えるんですけど……」
彼女の疑問は最もだ。
俺は彼女の疑問に答える。
「手ぶらの俺に魔法を当ててみろ。それが訓練の内容だ」
「それだとジークさんが危なくないですか?」
「安心しろ。ステラごときの魔法で怪我をするような俺じゃない」
「ムッ……!?」
カチンと来たのか、ステラは眉をひそめる。
……よし、予定通り。
俺はわざと彼女を怒らせるような言葉で、冷静さをいくらか失わさせた。
俺の言葉に怒るようじゃまだまだだな。まぁ、後で指導していけばいいか。
俺は片手を彼女の方に突き出して、くいくいっと挑発する。
彼女はワナワナと身体を震わし、怒りを堪えていた。
「訓練開始だ。どこからでもかかってこい」
「上等ですっ!!」
俺の言葉を受けて、ステラが杖を向けて魔法を放ってくる。
俺はそれを難なく避け、彼女を更に挑発する。
「どうした? もう終わりか?」
「っ!? ……まだまだ、です!!」
俺の挑発に軽々と乗り、ステラが次々と魔法を放ってくる。
それらを俺はひょいひょいっと避ける。
それからステラの魔力が尽きるまで、訓練を続けた―――。
ヒロインを煽りまくる主人公‥‥‥。
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