偉そうな痴女がいるぞ!!
2020.4.26
痴女シリーズの先駆け
平凡たるは僕の人生において最大の安息である。
いつもと変わらぬ景色を眺め、いつもと変わらぬ退屈な授業。
そしていつもと変わらぬ気になる人。
「……? どうしたの?」
「ご、ごめん何でもない」
いつまでもいつまでもジーッと顔を眺めていたい衝動を抑えるが、気が付けば視線は自然と隣の方へ……。
(可愛いなぁ……)
何度心の中で呟いた事か。隣に座る委員長の横顔を見ているだけで幸せの絶頂とやらを迎えられる気分だ。
「最近痴女が居るみたいだぜ? 気を付けろってカーチャンが言ってた」
クラスメイトが手を振り、分かれ道でそれぞれの家へと分岐する。道すがらお地蔵さまに手を合わせ可愛らしいお地蔵さまの頭を撫でると、直ぐ傍にある桜の木から花弁がヒラヒラと舞い降りた。ああ、桜の季節も終わりだなぁ。と桜の木を見上げると……そこには逆光の中桜の木の上でふんぞり返る痴女が居た。
「…………」
先ず目に付いたのが戦隊もののお面だった。まぁ、これだけなら問題無いだろう。次に目に入ったのが濃い緑色のチェックのミニスカートだ。逆光で中は見えなかったが、まぁこれならまだ問題は無いだろう。
問題は上半身だ。既に彼女を発見してからそこそこの時間を使っているが、彼女は腕を組んだままそこに立ち続けている。どう見ても上半身裸に両肩のサスペンダーだけしか無い様に見えない。
その堂々たる立ち姿はとても偉そうに感じられ、僕は掛ける言葉も見付からずただ痴女様を見上げ続けるしかなかった。
「…………」
──スッ
痴女が腕組みを解すと、胸の辺りが露わになった。案の定マウント富士の山頂はサスペンダーのシルクロードで隠れているだけだった。やっぱり痴女だ。痴女……だよね? それとあのお面は火炎ライダーだよね? 何で?
「火炎ライダーが好きだから……」
「ち、痴女が喋った……!!」
言葉を発してから気が付いたが、問題は喋った事では無い! この痴女様、僕の心を読んだぞ!? 読んだよな!?
「私は痴女では無い……ただ己の欲望に忠実なだけで、少々その欲望が人から受け入れ難いだけだ……」
「そ、そうなんですか!?」
また言葉を発してから気が付いたが、それってやっぱり痴女では無いかと思うんですよ。絶対この人痴女だ。間違いない。
「私を痴女だと思うなら通報してみるがいい……」
「…………」
僕は無言でスマホを取り出し警察へ電話した。
──プルルル……ガチャ
「はい、こちら横領所です」
「あのー、今変態が居まして……」
「ほうほう、どんな変態ですか?」
「火炎ライダーのお面を着けて、上半身裸でミニスカートにサスペンダーの女の人です。それと何か偉そうです」
「ボクー? イタズラ電話は止めようね?」
──ブツッ……
「…………」
「どうやら私は痴女では無いらしいな」
マジで? えっ? マジで? この人痴女じゃないの? 国家権力たるジャポンポリスが認定しちゃったよ? マジでこの人ノン痴女なのぉ?
「私を痴女扱いした罪は重いぞ!」
ビシィッと僕を力強く指差す痴女。ヤバい、偉そうな雰囲気が更に強くなってもう訳が分からない。
「貴様の最後を貴様に選ばせてやる。撲殺か絞殺か選べ!」
「は、はひっ!?」
仮面でその素顔は見えないが、どうやら僕は痴女に殺されるみたいだ。
──ダダッ!
「さよなら!」
僕は全力で走り出した! この人はヤバい! 間違いなく痴女であり変態の極みだ! ああやって道行く人達を殺していく愉快犯だ!
──シュタッ!
「ふえぇっ!?」
僕の目の前に降り立ち腕を組む痴女様。僕は急ブレーキを掛け反対側へと走り出した!
「逃がさんっ!」
──シュタタッ!
「ふえぇっふぁ!?」
瞬く間に回り込まれ、僕は逃げ道を失った。コイツ、痴女のクセに速いぞ!!
「ノンノン、痴女だから速いのだ」
「痴女と認めた!?」
「いや、私は痴女ではない……」
「なんなの!?」
僕は訳が分からなくなり、ドンと両手で痴女を突き飛ばしその場から逃げ出した―――
「おはよう♪」
「あ、おはよう……」
今日も委員長はクソ可愛い。




