オッサンこれくしょん ~オッサンを合体させて世界を救う!~
2019.1
西暦40XX年……
正社員だのバイトだの納期だ利益だ……と、相も変わらぬ世界がそこにあった。
人々の心はスモッグで汚れた空気の如く酷く荒んでおり、行き場のない怒りと悲しみが、今まさに彼にも襲いかかろうとしていた。
「おい、お前またバイトをクビになったんだって?」
夕焼けに染まる公園の隅で、寄りかかりながら酒瓶を煽るいかついオッサン。朝見かけた時から変わらず飲み続けて居たのだろうか?彼の顔は夕焼けか酒焼けか分からぬ位に赤く染まり、足下に転がる酒瓶の数が彼の手持ち無沙汰を物語っていた。
「……うるせぇな。酒飲みオヤジに言われたかねぇよ」
青年の服は揉め事のせいか所々破けており、左頬にはアザが出来ていた。
求人誌を強く握りしめ、前を向き直し歩き始める青年の後ろ姿には、防犯用のカラーボールのオレンジ色が背中からズボンの裾まで広がっていた。
「一応聞いてやるが、今回は何やったんだ?」
ニヤニヤと嘲笑うオッサンの顔は、彼の御心を見透かしているかのようだ。
何故か毎回バイトをクビになった理由を聞いてくる奇特なオッサンだが、別に青年の親族でも知り合いでもない。彼の家の側にこの公園が有るおかげで、彼は絡みたくも無い酔っ払いと話しをせざるを得ない状態になっているのだ。
「興味ねぇクセに、よくも毎回聞いてくるよな」
オッサンは青年の近くにあった道路際のベンチに座り、酒瓶を隣りに置く。
「聞いてくれ、って顔してたぜ。まるで虐められたガキみてぇにな」
「……知るかよ。めんどくせぇな」
青年はそのままオッサンの側を通り過ぎようとする。
「なぁ。今晩空いてるか?」
オッサンはニヤリと笑うと酒瓶の酒をチャプチャプとかき回した。
「こっちは次のバイト探しで忙しいんだよ……」
「そっか、今日は月が綺麗だってのにな……」
「……?……知るかよ。もう行くからな」
青年は自分の家へと歩いていった。その後ろで、オッサンがどんな顔をしているかは彼の知るところでは無い。
――青年の家――
彼の家はボロいアパートの一室で、家賃の安さ以外に取り柄の無い超しょんぼり物件だ。
彼の部屋には生活必需品以外には特に何も無く、強いて言えば大家に貰った(押し付けられた)旧型のノートパソコンが一台あるだけだった。
「……どのバイトも無理!!」
青年は求人誌を眺めながら、この世の理不尽に嘆いていた。
――レジ経験3年以上からOK、バイト初心者でも安心!更に電話対応や品出し等、裏方の業務も覚えられて店長候補にもなれます――
――大型免許以上で2~3日外泊可能な方大歓迎!――
――朝6:00~深夜2:00までの間で12時間以上働ける方大募集!時給780円!――
「くそ!……やってられっかよ!」
求人誌をゴミ箱へ投げると、ベッドへ仰向けで寝転がる。
グウゥゥゥゥ……
腹の虫による空腹の訴えに、青年の怒りは少し収まり冷静さを取り戻した。
「家に何も無かったな……ちっ面倒くせぇ」
青年は椅子にかけてあった上着を羽織ると、買い出しへ出かけることにした。
外はいつの間にか夜になっており、空には綺麗な満月が妖しく下界を照らしていた。
『そっか、今日は月が綺麗だってのにな……』
青年の脳裏にオッサンの言葉が浮かび上がる。
確かに月は綺麗だが、それが何だっていうのだろうか?少しの腹の足しにもならない月明かりに照らされ、青年は近くのコンビニへと足を運んだ。
「いらっしゃいま――――」
レジに居た若い女性が青年を一目見て表情が明るく変わった。
「あ!先程はありがとう御座いました!」
女性はレジを抜け出し青年へと近寄ってくる。青年は無言で会釈すると、周りを見回して静かに話し始めた。
「今度はココでバイト始めたのか?」
青年のばつが悪そうな顔に女性は何度も頭を下げた。
「いいんだよ、俺が勝手にエロオヤジを殴っただけだ。何も気にすることはねえよ」
青年は適当な惣菜パンとコーヒーを手にすると、乱雑にレジへと置いた。
そこへ眼鏡を掛けたパッとしなさそうな男性が裏の扉から現れレジへと入る。
「あ、先輩すみません」
青年の後ろで謝る女性。
「今度何か遭ったらぶん殴る位してやれ」
青年は後ろを振り向きながら財布を取り出そうとした……
ガバッッッ……!!
「ヒッ!」
突然女性の顔が大きく引きつり青年の後ろを指差した!
「どうした!!」
青年が前を向くと、、、そこには口が裂けて顔より大きく開らき、大小様々な牙が醜悪に生えた口内を剥き出しにした眼鏡の男性の姿があった!!
「な、なんだ……?」
「ギギ……グ、ガガーー!」
青年の理解を待たずして、眼鏡の男性はその大きな口で青年の身体に喰らい付こうと襲いかかってきた!
女神転生+艦コレの合わせ技を書きたかったけど、女神転生のパクりにしかならなかった為ボツ作品になりました




