私の好きな人≠私が好きな人
2019.9
恋愛ものを書こうとして断念
―――AM10:00
「よっ! おかもっちゃん♪」
散らかるデスクで器用に仕事を熟す、くたびれた眼鏡が似合う青年は今日も眠そうに私を見た。
「早希か……何だ?」
「『何だ』はないでしょ? 書類、持ってきてやったぞ?」
「おう……すまんな」
「忙しいからって無理するなよ♪」
パーテーションで区切られたオフィスの一角。デスク五台の手狭な空間で、おかもっちゃんは一人奮闘している。
「新人は辞める、課長は福引きで当たった温泉旅行、同期はインフルエンザ、先輩はクレームで営業課長に攫われる……俺一人分の給料で5倍働いてるんだぞ!?」
デスクをバシバシと叩き、おかもっちゃんが徐々に壊れ始めた。
「はいはい、愚痴は終わってから聞きますよ」
「そして早希はタメ口だし……(泣)」
私は散らかるデスクの書類を拾い集め、納期順に纏め直した。
「これ今日まで。で、これが明日まで。で、コイツらが急ぎ」
「……ぐぉぉ、見た覚えの無い書類が居るのは何故だ!?」
「居眠りしてる隙に置かれたな、おかもっちゃん」
「/(^o^)\」
「ま、後で来てやるからよ♪」
がっくりと落ち込むおかもっちゃんの肩を叩き、私は上の階の自分のデスクへと戻った。そして今日の仕事分を適当にやっつけ、上司に話しを持ち掛けた。
「下ヤバいッス。このままだと課長が帰ってきたときに仕事が溜まり過ぎて誰かが怒られます」
「……え? 本当かい!?」
主に全体的な仕事の流れを管理する私の上司は、いつも課長と言い合いの喧嘩になっており社内ではある意味名物となっていた。
「むむ……それはいかん」
「と、言う訳で行って来ます」
私は上司の返事を聞かずに再びおかもっちゃんの所へと戻った。
―――グゥ グゥ
「あ、課長お帰りなさい!」
「―――ファーッ!?」
飛び起きるおかもっちゃん。私はクスクスと笑いおかもっちゃんの肩を叩いた。
「おまっ……! 早希!!」
「はいはい手伝いに来ましたよ~♪」
私はおかもっちゃんのデスクから明日分の仕事を抜き取った。
「……すまん」
「貸し23つ目ね」
おかもっちゃんから何か借りを返して貰う機会が殆ど無いので、気が付けばおかもっちゃんの借りばかり溜まっていく。
―――カタカタカタカタ
オフィスに広がるキーボードの音。そして手書きのペンの音。
「すまん早希、この書類10部コピー。原本は山本さん行き。コピーは総務課で」
「はいよ」
―――カッカッカッ
足早にコピー機へ陣取り、手際良くコピーを済ませる。隣の給湯室ではコーヒーの良い匂いが漂っていた。
「……ごめん武藤さん。コーヒー一つおかもっちゃんに良いかな?」
「はい、お持ち致します」
秘書課の新人、武藤皐月ちゃんに声を掛け、私は総務課へと急いだ。
「お疲れさまです。安田コーポレーションの書類上がりました。確認お願いします」
「あれ? これ」




