転生②
俺とお姉さんはテーブル席に向かい合って座り、メニューを見ていた。
「へぇ〜食べ物とかはあんまり変わらないんだ……」
品数はさほど無いが、とりあえずは食べられそうだ。
「で?死神さんが何で隣に?それもお姉さんの……」
死神は何食わぬ顔でおねえさんの隣にいた。
「ああ、気にせず続けるといい。私の姿はお前にしか見えん」
紙ナプキンで飛行機を折る死神。
クソッ、死神の癖に可愛い所あるな……。
「お兄さん!」
皿洗いしていたウェイターの青年に声をかける。
「俺これね」
特盛キノコパスタを注文した。
「お姉さんは?好きな物食べていいよ」
満面の笑顔の俺。……でけぇな。
「じゃあこれを……」
お姉さんはサラダとスープのセットにした様だ。
ヘルシー志向がたまらねえぜ!←意味不明
「………………」
死神がメニューに目をやる。
760+540=1300
「こいつは計算も出来ないのか……?」
ポツリと漏らすも男の耳には入らない。
「え?何か言った?今お姉さんの胸見るので忙しいっす」
「いや、何でもない。お前が幸せならそれでいい……」
お姉さんとお話ししながら食事をした。
最高のひと時だ!!
「――1300になります」
楽しい食事も終わり、えげつない現実が俺を襲う……。
レジのややイケメンお兄さんは俺が1000円しか持ってないのに平気な顔で1300円を要求してきた!!
死神から貰ったお札1枚を指に挟みヒラヒラとしている俺。
あ、後ろで死神さんが多分笑ってやがる。
「え〜っと……」
さてどうしよう……。
「死神さん?」
後ろを振り向き無表情の死神を見る俺。
「どうした?」
「魅了って男にも効くんすか?」
「……ああ、人間なら誰にでも効くぞ」
死神の悪い笑いが聞こえた。
パチンと鳴る指と共に、お兄さんの表情がトロン……と緩くなる。それと同時にお姉さんはハッと正気に戻った。
「あれ?何で私はこの人と……?」
そそくさと店を後にするお姉さん。
「あっ! 待ってオッパイ! オッパイ待ってーーーー!」
本音がダダ漏れする。
「あ〜あ、行っちゃった……」
落胆する俺をよそ眼に、お兄さんは――
「おい、いいのか?」
「え?」
死神が嬉しそうに指さす先に、下半身丸出しのお兄さんがいた……。
「え? え? え?」
「お代は結構ですので……代わりに僕と……僕と……」
ギンギンにいきり立っているお兄さんのアレ。
ヤバい。本能がそう告げる。
「はは……じゃ、じゃあ…………。さよならーーーーー!!」
一目散に全力ダッシュ!
俺は力の限り逃げ出した!!
「はぁ……はぁ……はぁ……もう駄目、走れない……」
元々体力が無い俺はあっという間にヘトヘトだ。
「……死神さん、どういう事?」
俺は地面に座り込み、死神に説明を求めた。
「同時に《魅了》出来るのは1人までだ。新たに使えば、前の効果が切れる」
淡々と説明する死神。
そういう事は早く言って欲しかったな。
危うく俺のア〇ルヴァァァジンが無くなる
所だったぜ……。
ん?いや、そこじゃない。
「なんであの男は襲ってきたんだ?お姉さんは食事のお誘いだったのに……」
「《魅了》による好きの度合いは誰にかけても同じだが、人によって相手への行為の伝え方はそれぞれだ。そういう事もある」
骸骨の口を僅かに開け、シシシと笑う死神。
「あの男が変態なだけかよ!」
複雑な思いをその辺の小石にぶつける俺。
「よし!もう一回その辺のお姉さんに――」
辺りを見回してみるが誰もいない……。
「今《魅了》使うと店の男が飯代取り立てにやってくるぞ?」
「…………今日は止めとくか」
泣く泣く諦める俺。
「ところで、どこに泊まろう……」
チラリと死神の方を窺う。
「家が欲しいのか?」
こちらを見る死神。
「家って言うか、ある程度綺麗な場所ならどこでもいいかな。あ、出来ればムフフなお姉さんとグヘヘな展開になれば言う事無しかな!」
死神はアゴをカタカタ鳴らし、しばらく考えた後静かに指を鳴らした。
バタン!!
「きゃあ!!」
「アチチチチチチ!!」
急にお姉さんが俺にぶつかってきた!
しかも手に鍋を持っていた為ぶつかった衝撃で
俺に鍋の中身がかかってしまった!
しかも、地面に座り込むお姉さんの青いパンツがモロに見えた。
お姉さんは慌てて起き上がりハンカチで濡れた部分を拭き始めた。
「す、すみません!! 大丈夫ですか!?」
必死で謝るお姉さん。可愛いし中々に大きい。
「死神さん?」
起き上がった俺は死神に説明を求める。
「《偶然》だ……」
無表情でとんでもない事を言う死神。
何かルビおかしくないですか?
「瞬間的に小さな偶然を起こせるぞ」
「ああ……おかげで良い物見れたっす」
煌びやかなおパンツが頭から離れない!
「お洋服まで汚してしまってすみません!旅のお方ですか?お洗濯しますので、宜しければうちへ泊まっていかれませんか?」
マジで!!パンツ見せてくれる上に泊めてくれるとかあり得ない!!
「良かったな」
死神がこちらを窺う。気持ち悪い笑顔で頷く俺。
「よ、宜しいです宜しいです!!是非行きます!!」
俺はすぐ近くにあると言う
お姉さんのハウスへお邪魔することにした……。




