最高に頭の悪い 異世界転生 ①
2018.12
――とりあえず死んでみるか!
流行の異世界転生に憧れて、自分も転生してみたい!
そんな軽い気持ちで死んでみたは良いが、、、
「誰かー!」
「誰か居ませんかー?」
「女神とか天使さん居ませんかー?」
誰も居ない真っ暗な空間。
死んだばかりの魂だけの俺が消えかかる。
「早く!誰か早く来てーーーー!!
死んじゃう!俺死んじゃうよー!!」
慌てて周りをキョロキョロ……
「いた!!
そこの人!そこの人ーー!!」
「え、俺かい?」
黒装束に大きな鎌、こちらを振り向くと不気味な骸骨の顔。
完全に死神だ!
「ひゃっ!!
違います!違います!」
慌てて手を振る俺。
「なんだ、じゃあ、行くわ……」
死神がススス……っと離れていく。
「だぁぁ!行かないでー!!
やっぱり合ってます!
貴方で合ってますー!」
慌てて引き留める。
「おいおい、どっちだよ……」
慌てぶりに死神が呆れる。
「死んじゃう!
俺死んじゃう!
死ぬ前に て、転生お願いします!!」
魂をくねくねさせてお願いした。
目をパチクリさせて俺を見る死神……。
早くしてくれ、そろそろ消えそうだ。
「変なやつ」
余計なお世話だ。
「まぁいい。本来なら専門外だが
特別にやってやろう」
骸骨の口を少し開け笑う死神。
「ま、マジっすか!?
あざーーーーーっす!!」
魂をうねうねさせて喜ぶ俺。
「……代わりに」
その言葉にうねうねが止まる俺。
「え?」
「俺もついて行っていいか?」
死神の元々は悪そうな顔付きが、さらに悪く見える。
「……なぁんだ!そんなことですか!
全然オーケーっすよ!
むしろ1人じゃよく分からないんで
助かります!」
「ほほ、そうか。
じゃあ早速行こうかのう……」
死神は俺を片手で掴み、すいすいと闇の中を進んでいく。
「あ、ちょっ!そんなとこ掴んじゃ――」
身体から妙な汗が染み出た。
「……捨ててくぞ」
死神が真顔で振りかぶる。
「あーーっ!
すみません、すみませんー!!」
身体をぶよぶよさせて謝った。
「ほれ、もうじきだ……」
死神が指差す先にの赤青黄3つの渦が見えた。
「どれが良い?」
死神がこちらを向く。
「青!今日のラッキーカラー!!」
青い渦を指差す俺。
「そうかそうか」
死神は青い渦へ静かに入っていった。
俺は少し恐くなって目を閉じた……
「ほれ、着いたぞ」
死神の声が後ろから聞こえる。
俺は恐る恐る目を開けると、そこには至って普通の町並みが見えた。
「お望みの異世界だ。
ほれ、文字が違うだろ?」
死神の隣にある小さな看板には、
見たことの無い文字が書かれていた。
今気付いたが、自分の身体も普通にあった!
「マジで異世界か……!」
俺は嬉しさで死神に抱き付こうとする。
スカッ……
俺は死神の身体をすり抜け、看板に抱き付いていた。
「死神さんは触れないのね……」
「ああ、一応な」
死神は指を高らかにパチンと鳴らした。
「ほれ、頭の悪そうなお前にも
文字と言葉が解るようにしといたぞ」
俺はもう一度看板を見る。
* 変質者に注意 *
「おお!読めた読めた!」
嬉しくて死神と看板を交互に見た。
その脇をオバサン2人がヒソヒソと
こちらを指差し通り過ぎたのは気にしないでおこう……。
俺は意気揚々と初めて歩く道を進み、小さな村へと辿り着いた。
「ここは?」
「名も無き小さな村の様だな……」
「と言うか、死神さん
まだ居るんすね」
俺がさわやか笑顔をお見舞いした。
「ああ、ついて行くって話だからな。
それよりも、お前さんはこの世界で
何をしたいんだ?」
「お前さんの事だからどうせハ――」
「あのお姉さんと宜しくやりたいっす!!」
俺は通りがかりの揺れに揺れる
お姉さんの胸を指差し
大きな声で、そう宣言した。
「……素直な奴だ。
だが嫌いじゃないぞ」
死神が指をパチンと鳴らす。
「あ、お姉さんがこっち向いた。
今度は何したんすか?」
「魅了した。最初は食事なんかどうだ?」
死神にしては良いアイディアだな。
「すみません。
宜しければ一緒にお食事でもいかがですが?」
お姉さんが俺にお誘いをかける。
「はい!喜んで!!」
敬礼ポーズで返事をした。
「しっかしバインバインっすね!!」
「お前さんはもう少し心の声を
抑えた方が良いと思うぞ……」
死神の呆れた声がした。
死神は俺に一枚の紙を渡す。
「これは?」
紙には変なオッサンと
数字が1000と書かれている。
「千円くれるんすか!!」
思わず声が裏返ってしまった……ハズい。
「ここの単位は……まぁいいか。
価値は大体同じだ」
「あざーーーーーっす!!
じゃ、行ってきます♪」
俺はお姉さんの手を取り、
近くのカフェっぽい所へ入った。
「うは!揺れてる揺れてる!!」
俺の目はお姉さんのたわわな
2つの果実しか見てなかった……。




