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魔術師なのはヒミツで薬師になりました  作者: すみ 小桜
第十四章 パンドラの箱

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第七十二話

 「トンマーゾ起きて!」

 バンッと勢いよくドアを開ける音と同時にクレが叫ぶ声が聞こえて来た。

 「なんだよ……。寝かせろって言っただろうが……」

 「もう十分寝たでしょう!」

 ガバッとクレは布団をはいだ。

 「ったく。なんだってんだよ!」

 トンマーゾは不機嫌そうに体を起こす。

 「ザイダがいなくなっちゃったのよ……」

 「いなくなった?!」

 声のトーンを落として言うも真後ろにエイブは居た為、驚いて言う。

 「あら? 後ろにいたのね」

 「あれだけ騒げば、何かと思うだろう? 詳しく話して!」

 慌てた様子でエイブがクレに聞く様子をドアからのぞき込んでティモシーも様子を伺う。レオナールも声を聞きつけ一緒に覗く。先ほどより顔色がいい。

 「詳しくと言ってもねぇ。買い物をしていて、数分で姿が見えなくなったのよ。辺りを探したけど見当たらない。戻って来ているかと思ったけどいないみたいね」

 腕を組みそう状況を説明する。

 「それって拉致られたって事?」

 「拉致? そうね、でもそういう輩はいなかったけど……。逃げ出したかしら?」

 「そんな事あるわけないだろう!」

 「落ち着けってエイブ」

 今にもクレに掴みかかりそうなエイブをトンマーゾはなだめる。

 「もういい。俺が探しに行ってくる」

 「待てって!」

 「何? トンマーゾさんが探しに行く訳?」

 「いや……」

 エイブの問いにトンマーゾは首を振りニヤッとすると、それを見て彼はムッとする。

 「だから落ち着けって。ザイダは戻って来るさ。ミュアンと一緒にな」

 「ミュアンさん?」

 「そうですね。その可能性が高いでしょう」

 トンマーゾの意見にレオナールも同意する。

 「え? 母さんが? どういう事?」

 「ザイダはミュアンに拉致されたって事さ。勿論、お前を迎えに来る為にな」

 「多分、その指輪を手に入れる事が目的でしょう」

 「ほう。気づいたのか」

 トンマーゾの言葉に付け加えたレオナールを流石だなと褒める。

 「皆、一緒の指輪をしていれば、気づくでしょう」

 レオナールはそう言うが、ティモシーは今聞かされて気が付いた。言われてみれば、エイブどころかトンマーゾもしていた。

 「では、迎え撃つ準備をしなくてはね」

 クレがそう言うと、トンマーゾはそうだなと頷く。

 「え? 何をする気?」

 驚いてティモシーに言うもトンマーゾはニヤッとするだけだ。

 「どこへ行く?」

 無言で部屋から立ち去ろうとするエイブにトンマーゾが問う。

 「……俺、何か手伝う事ある? ないよね? 部屋にいるよ」

 「探りを入れるのはいいけど、ヘマはするなよ」

 「わかってる」

 トンマーゾは、エイブが精神体で辺りを見に行くのだと思いそう声を掛けた。ミュアンなら何か精神体でも撃退する魔術を持ち合わせているかもしれないからだ。

 ティモシーは焦る。ミュアンに会えるのは嬉しいが、ここで捕まっては困るのだ。コーデリアの事を聞きだし、彼女を何とかする方法を考えなくてはいけない。そう、一緒にここから抜け出さなくてはいけない。

 「ティモシー。お前はこっちだ」

 ふとトンマーゾの手を見ればブレスレットのような物を持っている。

 (魔術を封印する気?)

 咄嗟にティモシーは、トンマーゾを突き飛ばし一階に走り去る。

 「おい!」

 「何あの子、ことごとくレジストされたわ!」

 クレは驚いて叫ぶ。

 「っち。めんどくせいな」

 トンマーゾがそう言った途端、一階に下りたティモシーが首の後ろを抑えつつしゃがみ込む!

 「うわー!」

 「抵抗するなよな……」

 トンマーゾが階段を下りながらティモシーにそう言って近づいた。そして、ティモシーの手を取った途端、後ろに吹き飛んだ。

 その場の全員が驚いた。エイブも部屋に入る前だった。

 「え? 何? 今、魔力感じなかったのに……」

 「腹に蹴りを入れただけで、魔術は使ってないから」

 クレの言葉に立ち上がりながらティモシーは返した。

 「俺、協力はしないって言っただろ? ここを出る方法が見つかったんだ。母さんと一緒に行くよ」

 「てめぇ」

 片膝を付き腹に手をやりながら、トンマーゾはティモシーを睨む。

 「最初からつけておけばいいものを付けておかないからでしょ?」

 そう言ってエイブも一階に下りてきた。

 ガチャッとドアが開く音が聞こえ皆、ドアに注目した。

 「迎えに来ましたよ」

 そう言ってミュアンが入って来た。その後ろにはザイダがいた。

 「ご、ごめんなさい。指輪を奪われて……」

 消え去りそうな声でザイダが言った。

 「ザイダさん! 無事でよかった」

 エイブは、彼女に駆け寄る。驚く事にミュアンは、彼には攻撃を仕掛けなかった。エイブは無事にザイダの元に駆け寄った。

 「母さん。俺、母さんと行くからだからお願いが……」

 「ティモシー。まずは組織の人間を何とかしてからにしましょうか」

 言い終わるか終わらないか、二階から魔術がミュアンに放たれた。それは、ミュアンの結界によって吸収される。

 「ちょっと! 俺達もいるんだけど!」

 「うるさいわね! だったら後ろから襲うぐらいしなさいよ!」

 チャンスはいくらでもあっただろうと言われるも、エイブは魔術は使えない。武器すら持っていない。攻撃を出来るはずもない。それはクレも知っている事である。

 「無茶言うなよ!」

 言い返したエイブは、下りて来たクレを見てハッとする。彼女は、レオナールの首筋にナイフを突きつけながら下りてきた。

 「あなたが人質になるとはね……。ティモシー、早くこっちにきなさい!」

 「………」

 ティモシーは戸惑う。レオナールは死ぬ気かもしれないと思ったからだ。

 「行きなさい、ティモシー」

 レオナールはそう声を掛けるも、ティモシーは横に首を振る。

 「母さんお願い、レオナール王子も助けて!」

 「助けたいのならあなたが助けなさい」

 「え?!」

 返したミュアンの言葉にティモシーだけじゃなく、皆驚いた。それは、レオナールを助ける気はないとも捉える事が出来るからである。

 「わかっているでしょう? 私達は、その王子の国に狙われているのよ? 何故助けなくてはならないのかしら?」

 言われてみればそうだ。助ける義理などない。

 「あら? もう一人の王子は助けたって聞いたけど?」

 「彼を助けたのは、陛下にお願いされたからよ」

 陛下の命令だったからだと言う。

 「もう母さんはどうしてそんな事ばかり!」

 ティモシーは、クレに走り出した!

 「あぁ、もう!」

 人質だったレオナールを突き飛ばすように放すと、迫りくるティモシーにナイフを切りつける! それをスッとかわすと同時に腹に蹴りを入れる! クレは、そのまま後ろに蹴り飛ばされた!

 カラランとナイフがクレの手から落ち転がる。彼女は、一発で伸びたようだ。

 「なるほどな。さっきの蹴りは、まぐれじゃなかったわけだ」

 クレが手放したナイフを拾いつつ、トンマーゾは言った。

 「ティモシーって、体術みたいのが出来るの?」

 驚いてエイブは言う。

 「まあ、かじった程度ですけどね」

 「あれが、かじった程度なんだ……」

 少し呆れた様にエイブはミュアンに返した。

 「俺達を素直に開放してよ!」

 「……わかった。出て行けよ」

 ため息交じりにトンマーゾは言った。この状況では勝てないとわかったからだ。レオナールも人質にならない。ティモシーも魔術を封じてもダメだともわかった。そして……

 「エイブ! 覚えておけよ! 裏切りやがって!」

 「俺が何をしたと?」

 「お前以外いないだろう? 指輪の事教えられるのは!」

 精神体になれば連絡を取り合えると言っているのだった。ティモシーの居場所がわかったところで、指輪の事まで筒抜けのはずがない。今エイブは、ミュアンの側にいる。きっとエイブが魔術が使えない事もミュアンは知っているのだろうとトンマーゾは推測した。

 「まさか、ミュアンと手を組むとはな……」

 「「え?!」」

 ティモシーとレオナールは驚いてミュアン達を見た。言われてみれば、彼女達が来る直前にエイブは一階に下り、直ぐにザイダに駆け寄った。その彼は完全にスルーされそのまま彼女の後ろにいた。

 自然の動きに見えるが、ミュアンから攻撃も受けずその後彼女から離れてもいない。

 「何それ? どういう事?」

 「ティモシー。行きますよ」

 そこ言葉と同時に突然、トンマーゾは倒れた。

 「え?」

 「眠らせただけです。で、レオナール王子あなたはどうします? ここに残りますか?」

 「行きましょう。レオナール様」

 二階から下りて来たブラッドリーが代わりに答えた。

 「仕方がないとはいえ、この人と一緒なんてね……」

 ボソッとエイブは呟いた。本当にエイブはミュアンと繋がっていたんだと驚くティモシーだった。

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