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魔術師なのはヒミツで薬師になりました  作者: すみ 小桜
第四章 魔術師の国の王子

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第十八話

 ティモシー達は、裏の来賓用のドアから王宮に入った。勿論、王宮専属薬師でも本来は立入禁止だ。そして、二階のある部屋の前で止まる。そこには兵士が一人立っていた。

 ランフレッドは、緊張した趣でドアをノックする。

 「ランフレッドです」

 「入りなさい」

 返事を返して来たのは、グスターファスだと声でわかった。ランフレッドは、ドアを開けお辞儀をする。ティモシーもそれに倣い、お辞儀をして部屋に入った。

 部屋には、左側の一人掛けの椅子にグスターファスが座り、ティモシーに対して正面の二人掛けの椅子に見た事のない男性が座っていた。その後ろに紅い髪の男性が立ち、会いたくなかった人物、ブラッドリーがその男の横に立っていた。

 座っている男性は、ティモシーと同じ銀の髪で長さは胸まであり癖のないストレート。凛々しく整ったその顔は、まさに王子様。年齢は二十代後半くらいに見えた。

 服装はというと、純白の裝束で時折銀色に光り、詰め襟で胸元は銀の四つの紋章入りボタンで止めてある。裾は膝まであり、お尻の下あたりから両側にスレッドが入っており銀の縁取りが施されている。ズボンも同じく時折銀色に光っている。銀色の髪とよく合っていて煌びやかである。

 ティモシーにも、この者がレオナールだと言われなくともわかった。

 そして、その彼の後ろに立っているのが護衛だろう。

 手を後ろに回し、ピシッと立っている。髪と同じ紅い瞳でジロッとティモシーを睨む様に見つめている。

 「カミーユ、彼が怯えている」

 ボソッと、隣に立つブラッドリーが言うと、ティモシーから目線を外した。

 (ビビった……。って、俺、場違いじゃないか?)

 ランフレッドがスッと前に進んで、こちらに背を向けて座っている人物の後ろに、カミーユと同じく手を後ろに回しピシッ立つ。

 「ランフ、お帰り」

 「只今戻りました。お時間を頂き、ありがとうございます」

 レオナールの向かい側、ランフレッドの前に座るルーファスは、チラッと振り返って声を掛けた。

 (俺、一体どうしたらいいんだよ)

 ティモシーは、一人ポツンと立ったままだった。

 「ティモシーといいましたね。こちらへどうぞ」

 よく届く澄んだ声で、レオナールは自分の開いている隣をトントンと叩き言った。

 (そこかよ!)

 一番座りたくない席だった。後ろにはブラッドリー、横は魔術師の王子レオナール。逃げ出したいと思うもティモシーは、お伺いを立てるようにグスターファスを見た。グスターファスは、うむっと頷く。仕方なくティモシーは、レオナールの隣に、失礼しますと座った。

 「申し訳ありませんね。ブラッドリーが少々やり過ぎたようで、大丈夫でしたか?」

 思ったより優しく話しかけられ、はいっと答えると、レオナールはニッコリ微笑む。

 ティモシーは、ブラッドリーとレオナールの関係が気になった。同じ魔術師だしレオナール側に立っている。

 「ところであなた、マジックアイテムを持っているそうですね」

 「え?」

 ティモシーは、ドキッとした。

 なんと答えればいいのか。はいと答えて大丈夫だろうかとティモシーが考えあぐねていると、レオナールはスッとティモシーの首元に手を持っていく。

 「これの事ですよ」

 そう言って、チェーンを引っ張り、胸元にしまってあったペンダントを引っ張り出した。ランフレッドが少し驚いた顔をしていた。彼は、ティモシーがペンダントなどしているのを知らなかった。

 「えっと……」

 ティモシーがまたもや何と答えていいかわからないでいると、レオナールは質問をしてくる。

 「少し拝見しても宜しいですか?」

 ティモシーは頷くと、ペンダントを首から外し手渡す。ここで渋ってもおかしいからである。ただただ、魔術師である事がバレない事を祈るばかりだった。

 「なるほど。大事になさいなさい。あなたを守ってくれるものですから」

 そうレオナールは言って、ティモシーの手に返した。そのペンダントを首に掛ける。

 「あなたも私と同じ銀の髪なのですね……」

 突然、レオナールはティモシーの髪に触り、ジッと目を見つめ更に驚く事を言う。

 「このまま伸ばしなさい。私の様に」

 (なぜ!)

 ティモシーは困惑する。髪は切る予定だった。今日がダメでも明日にはと。だが、皆の前でそう言われては、もう、切る事は叶わないだろう。

 「あの……」

 ランフレッドが何か話そうとすると、キッとレオナールが睨む。ランフレッドは何も言えず、口を閉じた。

 「別に伸ばせばいいだろう? そこまで伸ばしているのだし」

 ルーファスがそう言うと、グスターファスもうむっと頷く。ここにはティモシーの味方はいないかった。仕方がなく、ティモシーは頷いた。

 「では刻印の方を診ましょう。私の部屋に行きましょうか」

 そう言ってレオナールは立ち上がった。ティモシーも慌てて立ち上がる。

 「では、後程。ティモシーこちらへ」

 レオナールに言われ、チラッとランフレッドを見ると、頷くのでまたもや仕方なく、後について行く。

 そして、五階の奥の部屋の前に来ると、カミーユが扉を開けた。

 レオナールは部屋に入ると、どうぞっとティモシーを招き入れる。

 「あなた達は、そこでお待ちなさい」

 「っは」

 カミーユとブラッドリーは頭を下げると、扉を閉めた。

 (二人っきりかよ……)

 「さて、ペンダントを外しそちらに置いて下さい」

 レオナールは、部屋の中央にある気品あるソファーの前に設置してあるテーブルを指した。意図はわからないが指示に従うしかなく、ペンダントを外してテーブルの上に置いた。

 するとレオナールから魔力を感じ、ハッとして振り向くと同時に、彼の右手に手のひらサイズの火の玉がボッと出現した! ティモシーはギョッとする。

 (バレていた! 殺される!)

 「あなたは魔術師のようですね。試させて頂きます」

 「は? 試すって……ちょっと……待って下さい! 俺、魔術なんて使えません!」

 ティモシーは慌ててそう言うも、レオナールはにっこりほほ笑むだけだった。 

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