74.卒業式じゃ
父上、母上、今日は卒業式じゃ。
兄上も、キャロルも、もう学園では会えんくなるのう。
さみしいのじゃ。
卒業式、代表挨拶で生徒会長のキャロル、わんわん泣いておったのう。
兄上は目立たず騒がず、最後の最後まで地味を通したの。
成績優秀な者、休まず登校した者、在学中に華々しい成果を上げた者、表彰がされるのじゃが、兄上はどれにも無関係で一般の生徒に紛れておった。
手紙に書いて送るようなことはなんにも無しじゃ。
兄上はさっさと魔族領に帰ってしまうそうな。
一刻も早く父上の仕事を手伝いたいと申しての。
そんなに切羽詰まっておるのかの?
来月から、わしは三年生になるのじゃ。
わしはふらふらしておるのじゃ。
どうしたらいいかわからんくてもやもやしとるのじゃ。
母上はカッコいいのじゃ。あんなふうになりたいのじゃ。
父上も凄いのじゃ。ああなりたいんじゃ。
兄上も、素敵なのじゃ。わしはほんとに家族に恵まれておるのじゃ。
わしはなにになったらいいんじゃろう。
あと一年で、それが決められるのかのう?
誰も教えてくれぬ。わしが決めなきゃならんとわかっておる。
わしは目立たぬように、魔族だとバレぬように、そう思ってこの学園におる。
それじゃつまらないんじゃないかと思っておる。
わしは人間が好きになっておる。
この街が好きになっておる。
嫌いな所もいっぱいある。でも、それは直せるかもしれんしの。
みんなに、魔族じゃとばらしてしまうかの?
わしを好きになってくれておる者も大勢いる。
それとも、今のままにしておくかの?
おなごだてらに、武闘会に出て優勝でもしてしまうのもいいの。
選挙に立候補して、生徒会長でもやってみようかの。
部活に入って、活躍してみようかの?
後輩の面倒とか、みてみたいわ。
それとも、トラスタン引きずり回して立派なハンターに仕立て上げてみるかの?
あと一年しかないんじゃ。
この二年、びっくりするぐらい、あっという間だったのじゃ。
そんなことを考えても、来月から新学期が始まってしまえば、そんなこと悩んでいたことなんかケロリと忘れてまた、フツーにフツーに、学園生活送ることになるのだろうのう。兄上みたいにな。
なんかそんな気がするのじゃ。
フツーが一番なんじゃ。
特別なことなんか、なんにもないのが一番いいんじゃないかのうって。
1030年3月10日 ナーリン
本当はここで最終回にする予定でした。
もうちょっとがんばって、ナーリンの卒業まで書いてみようと思います。
あと一か月ほど、お付き合いください。
次回「三年生じゃ」




