7.アルバイトじゃ
父上、母上、いろいろ送ってくれてありがとうございます。
母上、迷彩のハンター服、さっそく着てみたぞ。ピッタリじゃ。
しかし防御魔法かかりすぎじゃ。シュピランパーゼスがやったんだと思うが心配性すぎるわの。ゴーレムに踏まれても平気そうじゃな。
父上、ハンティングナイフ、ありがとうございます。
こちらもシュピランがいろいろ付加付けすぎじゃ。
父上の魔剣ルシフィスの術式を真似しておるらしくての折れん錆びん切れんもんが無いと万能すぎじゃ。
それからシュピランパーゼスの名前いいかんげん覚えてやってほしいの。
いつまでもテルテルボーズはかわいそうじゃ。
それにしても父上の魔法のコントラクションはすごいのう。
ナイフもくるりと一回転させるたびに大きさ、長さがくるくる変わる。
全長3リンから20リン(作者注:5~30cm)まで自由自在じゃ。
これでいつでも持ち歩けるの。
一つ言いたいのじゃが娘がハンターをやるというのにそちらのほうの心配はゼロなのかの?
心配する方向性が間違っておらぬかのう。
日曜日、さっそく狩りに行ってみたわ。
ヤマドリが十羽獲れて、一羽銀貨三枚でハンターギルドに売れた。
まあ、ヤマドリぐらい石をぶつけただけで獲れるがの。
危ないことはよしてしばらくは鳥専門でいこうかと思っておる。
そうそう、羽根といえばヤマドリの羽毛で枕を作ったのじゃ。よく眠れて快適じゃ。
学校の授業はの、やっぱり平民と貴族では学力に差があるの。
平民の子供たちも一生懸命勉強はしておるが、ついていくのがやっとだのう。
夜、食堂で食事が済んでから、平民の子たちとよく勉強会をしておる。
わしが数学、理科の宿題を面倒見るのじゃ。
すこーし、貴族の子らと平民の子らで、ちっと壁が出来とるような気がするのう。
トーラスの理念、あまり理解されておらぬようじゃ。
もう少し、互いに歩み寄ることはできぬのかのう。
数学の屋外実習で、グラウンドを畑に見立てて実際に面積を測る、という授業があったのじゃが、貴族の子らが命令して平民の子らが縄をもって走り回る、なんて光景が自然にできてしまうのじゃ。
これではダメじゃ。わしは先生に言うて交代させたぞ。
貴族の子らはぶーぶー文句を言うたがの、「平民が畑の面積を測れるようになるとなにか不味いことでもあるのかの?貴族は農民をごまかして税を多めに取ったりするのかの?」というと「そんなことするものか!」と怒ったので、「じゃあなにも問題ないではないかの」となったのう。
先生は、わしらが計算したほうを合格にしてくれて、貴族らの方は不合格になってやり直しさせとったわ。どういう計算をしておったのじゃ。
税を取るなら公平にやるのは当たり前じゃ。間違いがあってはならんのじゃ。
貴族だったら、ぜひ覚えてほしいことじゃのう。
1028年4月17日 ナーリン
次回「あいさつ回りじゃ」