6.クラブ活動じゃ
父上、母上、お返事ありがとうございます。
母上、父上に惹かれた理由、「わしより強くて賢いからじゃ」はよくわかったがの、娘への手紙に二行で済ますのはどうかと思うの。
父上、「乳は手のひらサイズこそが至高」との御高説よく賜ったがの、しかし、年頃の娘に対して六ページはどん引きじゃ。
母上に気を使ってはおるまいの?
わしはまだ手のひらサイズも無いのだからの。
クラブ活動、なににするか、まだ悩んでおる。
やってみて面白そうなのは断然ハンタークラブだがの。
実際にハンターギルドに登録して、ハンターとして活動するのじゃ。
ハンターのクラスは1級から7級じゃが、ルルノール学園の生徒は新設された8級で登録できるらしいの。学生は登録料はいらん。もちろん実績上がれば昇級できるし、このクラブで実際に休みにハンター仕事をして学費を稼いでおる生徒もおる。もちろん平民ばかりじゃ。貴族はハンターなど卑しい職業とバカにしておるからの。
年に一人は死亡者が出る危ないクラブじゃな。
演劇部は……うん、わしには才能がまったくないようじゃ。
真面目なセリフを読んでも笑われるだけでのう。部長に「無理だ」と言われたわ。メンバーは貴族ばかりでの、美男美女ばかりなのでわしには無理じゃ。
平民の子は学校が終わると半分がアルバイトじゃ。
クラブをやっとるヒマがない。
わしの友達になった子もみんなアルバイトじゃの。パン屋だの雑貨屋だの配達だのさっそく仕事を見つけてきたようじゃ。
こちらでも子供が働くのは当たり前じゃの。
わしもバイトしてみるか。貴重な人生経験になりそうじゃ。
兄上はの、クラブもバイトも何もやっておらぬ。
「やれば目立つから」というとった。
まあたしかにの。
わしもこのままだとクラブ無しになりそうじゃ。
まあ、クラブに入るかどうかは別にして、アルバイトでハンターをやるのはいいかもしれん。っていうかわしにも出来そうなものがそれしかないわ。
「ナーリンはバイトしないの?」とプラルからもちょっと不思議に思われておるからの。まあ週末に山で何か獲ってくるぐらいなら勉強の邪魔にもならんじゃろ。
と、いうわけでの、とりあえずハンターギルドに行ってハンター登録だけしてきたのじゃ。受付のおじさんしぶっとったの。わしみたいな学生の子供がハンターになるなんて大反対のようだったのう……。
キャロラインはの! なんとかならんかの!!
わしをみつけての、「ナーリンちゃーん!!」といって抱き着いてきおった。
ほれ、あのトーラスの娘じゃ。第三王女!
わしより一学年上じゃがの、国王の姫じゃ身分は隠しようがないからの、学校中の生徒、先生から「姫様」で通っておるわ。
そんな女が急に抱き着いてきて馴れ馴れしくされたら大迷惑じゃて。
子供のころから知っておるし昔は一緒に遊んだこともある幼馴染じゃがのう、学園ではそれはまずいて。
あわてて引っ張って行ってのう、人気のないところで「身分を隠すのがこの学園の習いじゃ。わしが魔王の娘とばれたら大変なことになるわの。かまわんでもらいたいの」と言うと「貴之様と同じこと言うのね!」といってぷんすかしておった。
たちまち黒服四人にかこまれての、あのボデイガード共も大変じゃの……。
とにかくボデイガードたちにも説得されてしぶしぶ引き上げていきおったがの、わしの学園生活をだいなしにしそうじゃ、あの女。
背は高いし金髪で美人じゃし、あのでっかい乳で男子生徒に大人気らしいがの。
悪い娘ではないのじゃが、学園ではかかわりたくないのう。
1028年4月12日 ナーリンより
次回「アルバイトじゃ」