41.作文じゃ
父上様、母上様。
いつもわしの手紙を読んでおると思うが、わしに文才があると思うかの?
文学の先生が好きな授業は作文じゃ。
授業の一時間丸々使って文章を書かせるのじゃがこの間先生はなんにもしないでいいから楽なものじゃの。授業に手を抜いてはおらぬかの?
後で生徒全員分読んで評価するのだから、一概に手抜きとも言えぬかの。
誤字脱字は別にいいんじゃ。それは文才とは関係ないからの。先生に言わせればの、わしの作文にはテーマが無い、軸となるストーリーが無くエピソードが尻切れトンボで途中で別の話になっとるし、あっちこっちに横道にそれまくりで帰ってこんうえに何の教訓も無い。言ってることが最初と最後で全然違うしこれでは言いたいことが伝わらぬし、そもそも話が終わっていないとのたまうのじゃ。
わしは作家じゃないんじゃからの、なんでそんな文章を書かねばならんのじゃ。
家族のことを書けとか学校生活のことを書けとか人のプライバシーにズケズケ踏み込んできよるところも気に入らぬわ。
わしがなんでも正直に書いたら大変なことになるわの。
短くてもいいからちゃんと終わりのある話を書け、読者をちゃんと意識せよ。書きたかったことは何か、読者に伝えたかったことは何かを最後まで忘れるな。思い付きで書き進めるのではなく起承転結で最後、話をどう結ぶかをちゃんと考えてから話を書きはじめよというのじゃがのう。
毎日普通に生活しとって「転」とか「結」なんてことそうそうしょっちゅう起こらんじゃろ。学園生活なんて起承承承じゃ。どこに転と結があるというんじゃ。無理言うなじゃ。
父上は困ったら「おいしいかれーの作り方」を書けと言ったがの、かれーってなんじゃ。知らんわそんなの。
しょうがないので自由課題の時にブタ汁の作り方を書いたのじゃ。
山に行ってイノシシを探しこれを獲って吊るし血を抜いて腹を裂いて内臓を切り落とし皮を剥ぎと最初から最後まで全部詳しく説明したのじゃが、後で呼び出されて、「こういうことを書けと言っているのではありません!」とキレられたわ。
また書き直しじゃの。
1029年4月11日 ナーリンより。
次回「生徒会の仕事ってなんじゃ」




