4.買い出しじゃ
今日は休みなのでさっそく友達になった女の子たちと買い出しじゃ。
なにより必要なものは文房具じゃな。
魔族産鉛筆やノートなど、こちらでも手に入るぞ。
父上が改良した鉛筆、こちらでも好評で売れておる。
芯に鉛をやめて、焼いた黒鉛を使ったやつよ。貴族どもは未だに気取って羽根ペンとインクじゃが、消しゴムで消せるところが鉛筆のいいところじゃ。
商人ぐらいでやっと鉄ペンじゃの。
平民のみんなは品質のいい魔族産ノートと鉛筆を買って喜んでおった。
学生証を見せると割引してもらえるし、平民の子は入学祝いに国から銀貨20枚をもらえるからの。トーラスも粋なことをするわ。
みんな制服を着ておる。
せっかくルルノール学園に入れたのだから着ない手はないということらしいの。
古ぼけたオーバーオールを着ておるわしが子供のようじゃった。
次からはわしも外出時は制服にしようかの。ちっと失敗じゃったな。
屋台で買い食いなどもしたが、味はまあイマイチじゃの。
それでもみんな喜んで食っておった。
途中で兄上に会ったわ。路地裏で手招きしておった。
街の地図をくれたぞ。こっちに来て自分で描いたそうじゃ。
安い店とか美味い店とかびっしり書き込んであって便利そうじゃ。
「用足しに出てきただけ」というのですぐ別れたがの。
下着とかも買いそろえなければの。
これは人間のほうが品質も抜群じゃ。手触りも良いしなかなかじゃ。
みんな乳袋を買いよる。
わしにはまだいらんのう。
乳袋を付けるのは貴族だけらしいのう。平民にも普及してきておるがの。
そうそう、こっちでは乳袋はぶらじゃーと言う。一つ利口になったのう。
乳が大きいか小さいかはステータスなんだそうじゃ。
かっこいい乳にするには乳袋が必須なんだそうじゃ。
殿方はみなでっかい乳がお好みなのだそうじゃ。
乳がのう……?
父上はどう思うのじゃ?
一度聞いてみたいのう。
みんなでカフェでお茶してクラスのカッコいい殿御の話になったぞ。
「貴族の人はやっぱカッコいいー」とか「マイケル様が美男子」とかでキャーキャー言うとったわ。トラスタンと隣のわしがうらやましがられるぐらいじゃからな。
見た目と財産が大事なのじゃのう。
わしもそうじゃが、魔族だと自分より弱い男など論外じゃな。
見た目なんてどうでもいいと思うのじゃが。
母上はどう思うのじゃ?
これも聞いてみたいのう。
帰りにまた兄上に会ったぞ。
この街で一番うまいケーキをくれたわ。
おいしかったぞ。
今度こっちに来たら母上も食うとよいぞ。
「プルマールのベーカリー」じゃ。
そうそう、公園でハトを捕まえようとしたら兄上が飛んできてやめさせられたわ。
そんなことをしたらわしが巡回兵につかまるそうな。
羽根布団は諦めるかの。
兄上、公園でなにをしておったのかのう。
あとで友達に「あの人誰?」って聞かれて困ったわ。
夜、買ってきたノートと鉛筆で少し書き取りをしたぞ。
アルファベットが少し違うからの。
今のうちになれておいたほうが良いじゃろうの。
ちゃんと勉強もしておるからな。父上も母上も安心するのじゃ。
気が付いたら毎日手紙を書いておるのう。
まあ、それだけ報告したいことがいっぱいあるのじゃ。許すのじゃぞ。
1028年4月2日 ナーリンより
次回「初めての授業なのじゃ」




