14.炊き出し実習があるのじゃ
クラスの編成を説明しておらんかったのう。
わしのクラスはの、全部で三十人、男子が二十五名で女子が五名じゃ。
おなごはの、なかなか高等教育というやつはうけられんので数が少ないのじゃ。
わしのクラスの貴族はプラルによれば女子が三人、殿御が三人じゃ。
貴族というのは優秀な教師を独占しておって家庭教師が普通じゃ。
こんな平民と机を並べて学ぶような学校に来るのは貴族とは言っても三男四女側室の子じゃな。
それでも国王肝入りの公立校じゃからの、ここで優秀な成績上げて卒業すれば国王の覚えめでたく未来が開けるかもしれん、とやつらは思っておるようじゃ。
そんなわけで平民のおなごはわしとプラルだけじゃ。
わしは平民の子と思われておるからの。別にいいわの。
他にも出てきたおなごはの、同じ女子寮でもクラスが違うのじゃ。
貴族はの、学生寮などには入らぬ。自分の屋敷か、他家預かりじゃな。
で、クラスで三十人で班分けして、六人一グループで、五班あるのじゃが、男ばかりの中に女子が一人ずつ放り込まれての。
で、わしのグループはの、貴族男一、平民男四、わし、じゃな。
来週、この班で初めて屋外実習することになった。
炊き出し実習じゃ。
炊き出し実習というのはな、貧民街に行ってみんなで大鍋で料理を作り、浮浪児に食事をふるまうのじゃ。
週に一度一年から三年まで各クラスで持ち回りでの、つまり三~四か月に一度これをやることになるのう。この炊き出し、平日は教会とか商工会とか下っ端の貴族の雇い人がやっておる。
これはトーラスの提案でのう、貧民など見て見ぬふりの貴族や市民たち、それに学生に若いうちからちゃんと問題意識を持ってもらおう、奉仕の精神、慈悲の心を育むためだという。
とんでもなく偽善で何の問題解決にもなっておらぬような気もするが、やらぬ善よりやる偽善じゃ。
魔族だとホームレスだの孤児だのというのはまずないからのう。
一人一人がいっぱしの狩人じゃから食い扶持に困るということはまずないし、親が死ぬと残された子供はすぐに誰かが自分の子にして面倒見るから孤児もありえん。
家もなく親もいない貧民街の孤児、などというものが存在すること自体が大問題じゃと思うのじゃが、人間社会のいびつなところじゃの。
各班銀貨五十枚もらっての、それでできるだけ栄養があって旨くて量があるものを作るのじゃ。鍋はカーリン鍋(※作者注:直径160cmの大鍋)じゃの。
男どもはの、オートミールにライ麦パンで決まりじゃという。
おーとみーるってなんじゃというと、あきれられたの。
オート麦を使った粥じゃそうじゃ。
燕麦じゃぞ!
ふざけるでないわ! 馬の餌ではないかの!
ハラペコの貧民の子供にそんなものを食わすのかの?!
わしが激怒するとの、貧民へのふるまいへの定番じゃという。
それが当たり前なのじゃという。
じゃあおまえやれ俺たちは手を貸さんとケンカになったわ。
わしも売り言葉に買い言葉じゃしの、やるわと言ってしもうたわ。
……トラスタンだけが残ったのう。
ほれ、あのわしの隣の口もきかん貴族の男じゃ。
「で、どうするんだ?」と初めて口を利きおった。
「おぬしはやるのかの?」と言うと、「学生の義務だ」と答えたわ。
腹立つ答えじゃ。
「人としての義務ではないのかの?」
わしが言い返すと、「……そうだ、そうだったな」といって頷きおった。
ふん、つくづくつまらん男じゃて。これだからボンボンは。
先生にの、質問じゃ。
予算は銀貨五十枚じゃが、そのかわり手間はいくらでもかけてよいそうじゃ。
その手間と言うのはわしが自分で調達してくるのもよいのかのというとOKじゃという。
肉じゃがをつくることにしたぞ。
魔族の炊き出しの定番じゃからの。水害があった時など母上と作ったものじゃ。
勝負は来週の日曜じゃ。一番早く鍋が無くなった班が高評価なのじゃ。
がんばるわの。
1028年6月20日 ナーリン
次回「炊き出し実習当日なのじゃ」




