13.ギルドマスターと会ったのじゃ
父上、母上、昔の悪行を覚えておるかの?
いつものように日曜日にシシ肉を一頭分獲ってくるのだがの、今日はギルドで「会長がお会いになります」と受付に言われたわ。
王都のギルドマスターだからギルドマスターのマスターじゃな。一番偉いやつじゃ。ジョーウェルという男じゃが知っておるじゃろう?
わしのことをじろじろ見て、カードを何度も見て、「お前魔王の娘だな?」と言いおった。その後さんざん恨み言を聞かされたぞ。
父上も母上もジョーウェルの田舎ギルドでハンターになり、ジョーウェルの推薦で一級ハンターになったそうだのう。だがその後で二人が武闘会で優勝し表彰式で国王のトーラスをかっさらったせいで、ジョーウェルは魔族を手引きしたとか国王誘拐に手を貸したとかで逮捕されて、あと一日国王が帰ってくるのが遅かったら死刑になっとったそうじゃ。そりゃあ恨みにも思うわの。
トーラスのやつ、けろりとした顔でドラゴンで帰ってきおって、そのあと魔族との和平がトントン拍子で進んでの、ジョーウェルはトーラスの口利きで無罪になり、和平の立役者として表彰されて褒美までもらって、今は出世してハンターギルド会長じゃ。
「俺はお前の両親のことは大嫌いだが、ハンターとしては超一流だった。それは認めてやる」と実に面白い顔をして言いおったわ。
わしのことを「実力を隠しておるな?」という。
「ハンターってのはな、どんなにベテランでも獲物にはばらつきがある。たくさん獲れる日もあれば一匹も獲れない日もあるんだよ。だがお前はたった一人で毎週毎週日曜日の午前中にきっかり一頭分だけイノシシだけを肉にして持ってくる。まるで牧場から出荷するみたいにな! そんなことできるやつは一級ハンターにもいねえんだよ!」と怒鳴るのじゃ。
バレバレじゃ。しくじったのう。
そんなわけでわしのハンターランクはジョーウェルの推薦でいきなり三級じゃ。
「なんかあったら手伝ってもらうからな、コキ使ってやる。一切特別扱いせんからなっ!!」とのことじゃ。
もうそれがかなり特別扱いのような気がするが気にしちゃいかんのだろうのう。
父上、母上、完全に忘れておるのだろうがの、相手は恨みという奴は忘れぬものじゃ。今度王都に来たら、なにか手土産持ってちゃんと謝っておくのじゃぞ。
1028年6月12日 ナーリン
次回「炊き出し実習があるのじゃ」




