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104/106

104.最後の三学期じゃ


 敬愛する父上様、母上様。そして兄上様。


 魔王城の前でぶっ倒れておるわしを見つけてさぞかし驚いたであろうのう!

 王都から魔王城までの送召喚、ついにできるようになったのじゃ!

 魔力ぜーんぶ使ってしまうがの。あっはっは。


 一日寝る羽目になったがのう、本当にいいお正月じゃった。

 父上と、母上と、兄上と、シルビスと、家族が全員揃ったお正月って何年振りじゃろうのう。ガイコツとホロウも帰ってきておって、四天王勢ぞろいもひさびさじゃ。


 ホロウがの、うちの学生がやった一発芸で面白かったものを真似して披露してくれるのじゃ。

 やんちゃ坊主共に見せてやりたかったのう。爆笑じゃて。

 あれはあれで人間のことがけっこう好きなのだのう。なんか意外じゃ。


 みんなの報告会でも、王都にもなんにも怪しい動きが無くて安泰じゃの。

 なにもなし。

 これが一番幸せなのじゃ。わしは最近つくづくそう思う。


 みんなわしが卒業したらどうするのか聞いてきたがの、「魔王城に戻って母上を手伝う」と言うたら拍子抜けしておったの。

 わしそんなに変わったことやりそうかの?

 学校で学んだこと、魔界で生かさずになんとする。

 兄上だってそうしておる。もう立派な父上の右腕じゃ。


「もっと見聞を広げてもいいんだぞ」と父上は申しておったがの。

 ニヤニヤ笑ってのう。あれはお見通しかの。


「ジルベスター、見に行きましょうよ!」とシルビスがうるさかったの。

 もう寝るという時間に、みんなで外套にくるまって、シルビスの送召喚で一気に王都の中央公園すみっこじゃ。

 ものすごい人だかりにびっくりじゃったのう。

 真夜中なのに明かりがついて、大時計が照らされて、みんなでカウントダウンじゃ。父上は懐中時計出して「二分進んでるじゃねーか!」とか言っておったがの、堅いことは言いっこなしじゃ。

「3、2、1、ゼロ――――!」

 みんなで大合唱しておったのう。

 鐘がゴンゴン鳴って、「新年おめでとう――」と叫んでおった。

 父上、嬉しそうだったのう。

 父上が寄贈した大時計だったからのう。

 王都のみんなに、愛されておるのがわかるかの?

 母上も、兄上も、誇らし気じゃった。もちろんわしもじゃ。


 王都の時計塔、正月に魔王一家で見上げて笑うなんてことが実現するなんて誰が想像できたのじゃ。


 和平も、友好も、本当にすばらしい。

 それを成し遂げた母上と、父上に、感謝じゃ。



 今学生寮でこれを書いておる。

 さすがに学生寮の前でぶっ倒れるわけにはいかんのでの、シルビスに送ってもらったがの。

 よく考えてみればわしの部屋のベッドの上を狙えばよかったのじゃの。

 失敗じゃ。


 卒業まであと二か月。精一杯がんばるつもりじゃ。


     1031年1月15日  ナーリンより。



次回「進路じゃ」

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