10.魔法の特訓じゃ――!
父上様、母上様。
昨日学生寮にシルビスが来たわ。
いきなり魔法陣と共にわしの部屋に現れおった。さすがにびっくりしたわ。
昔、父上と母上と一緒に異世界で冒険した仲じゃそうだの。
自分で自分を送召喚してこっちにもあっちにもどこでもいけるようになったのだからのう……。とんでもないアライグマじゃ。
母上に言われて、わしに召喚術を教えるために来たというのじゃ。
自分で送召喚ができれば、狩場の往復、獲物の搬送、全部解決じゃ。
転移魔法など伝説の魔法で神話で神が使うような魔法じゃが、召喚術を転移魔法の代わりに使うなどシルビスにしか思いつかんことじゃな。
わしにできるようになるのかのう。
半信半疑で、夜中、郊外に連れていかれて、たっぷり術式を仕込まれたぞ。
術式が複雑すぎでの、わしにはいくらなんでも無理じゃというと、布に魔法陣を描いてくれての、これを広げて使えと言う。
確かにわしにも使えるようになったわ。たいしたもんじゃアライグマ。
布は二枚あっての、場所を思ってそこに飛ぶ奴が一枚。
人を思って、その人のいる場所に飛ぶ奴が一枚じゃ。
つまり行ったことのないところ、会ったことのない人の所にはいけん。
あと、距離がありすぎると魔力が足らんで空撃ちになる。
魔族領に帰るにはまだまだ魔力がたらんのう。修行あるのみじゃ。
まあこれで狩場への往復ぐらいなら、なんとかなりそうじゃ。
魔法陣もの、百回も使えば自力で展開できるようになるとのことじゃ。こちらも修行じゃの。
シルビスも月に一度はこっちの世界に遊びに来ておるがの、こんなことばっかりしとらんで、さっさと嫁に行けばよいのにのう。
いくつになったのかはしらんがな。見てもわからんわ。
とにかくこれで移動の問題は全部解決じゃ!
シルビスにも母上にも礼を申すぞ。
それから父上。
肉はギルドに卸さないとハンターランクが上がらないぞとのことじゃが、言われてみれば確かにそうじゃ!
うっかりしておったわ!
まあこれでたくさん獲物を獲っても大丈夫じゃからの。半分はギルド、半分はミルティーの店に卸すようにするわの。
1028年5月10日 ナーリン
次回「友人たちじゃ」




