閑話【アーシャの手紙1】
2話連続して投稿しております。
前話を未読の方はご注意くださいませm(_ _)m
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父様、母様、お元気ですか?
町の皆も元気にしていますか?
私は元気です。まだ慣れないことばかりで戸惑う事も多いけれど、なんとかやって行けそうです。
聖都の学校は、やっぱりお貴族様がいっぱいでした。この前なんて、皇子様と隣に座ったんですよ!
しかも、ペンを忘れてしまったみたいで 猟師のおじちゃんが作ってくれた羽ペンを お貸ししたら、気さくに「ありがとう」と言ってくださいました。
クラスの皆も、私に意地悪を言ったりする子は一人もいません。だから、心配しないでくださいね。
同封した小壺は、初めて作った コルフルイ軟膏です。良かったら使ってください。色々と作れるようになったら、もっとすごいお薬を送ります。楽しみにしててね。
また、お手紙を書きます。お体には気をつけて。
アーシャより
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(うん。これでよし!)
現世の両親に宛てて書いた手紙を読み返す。大丈夫、これは嘘じゃない。少しだけ、要約して書いているだけである。
その“皇子様”が、羽ペンを貸してから やたらと隣に座るようになったとか、呼び捨てを笑顔で強要されたとか、時々 手を引かれて教室を移動するようになったら、ひそひそ話をされるようになったとか……ただでさえ弱い父様の胃を脅かす内容は、書かなくてもいいと思うんだ。うんうん。
(今のところ問題も無いし、大丈夫……だよね?)
インクの乾きを確かめて、手紙を折り畳む。
緩衝材代わりに木屑を敷き詰めた小さな箱。そこに入れられた布で包んだ小壺に手紙を添えて、途中で蓋が開かないようにしっかり梱包する。
小包を出したら その足で校内の人工林へ採取に行けるよう、片手で持てる大きさのカゴに小さなスコップやらハサミやらの採集セットも詰め込んでゆく。……まだ コルフルイくらいしかわからないけれど。きっと、自分で採集して 自分で調薬した方が練習になると思う。その方が調薬師っぽいし。
(あ。配食・購買棟に行ってサンドイッチかおにぎりでも包んでもらおっ♪ 天気が良いから外で食べるのも良いかも)
今日の午後は授業が入っていないのだ。折角 空いた時間なのだから、有意義に使いたい。
片手にカゴを提げ 小包を持って、まずは生徒の手紙や小包を預かって輸送手続きをしてくれる 職員棟にある事務室へ向かった。
口下手だけど、手紙やメールでは そこそこコミュニケーションが取れる人。それがアーシャ。
ちなみに、作者もそんな感じ(どうでもいい情報)。
[うっすらとある設定]
《〇〇棟》
学校の敷地内には用途によって様々な建物があります。研究院附属学校なので、もちろん研究棟は幾つも。よく爆破される棟が存在するかは不明。
《配食・購買棟》
自腹を切ってでも高級料理しか口にしない階級の人以外の人達の食事を賄い、学業に必要な備品や生活用品を支給されたり購入できるところです。朝夕の食事は各寮の食堂で摂れますが、ランチや時間外の食事・お弁当の依頼などはこちらに出向く必要があります。小壺を入れた箱は有料(学生は割安)だけど、木屑はサービスで貰いました。