6【基礎薬学】ありふれた薬
拙作にお立ち寄りいただきありがとうございます(*^人^*)
おはようございます。
本日から授業の始まる基礎薬草学を担当している、ルイン=ヴェルデ=プリムフォレです。
薬草学と言っても、初等科の必須科目で習う範囲なので 比較的ポピュラーで薬効の薄い薬草の種類や特徴、単一から2〜3種類の薬草で作れる簡単な薬や魔法薬の作り方 程度しか教えられません。
数えきれない程の薬草や、緻密にして美しき比率で編み上げられた奇跡の薬効をもたらす魔法薬に興味のある子は、是非、来年度以降の選択科目【初級薬学】や【中級薬学】を選択してください。薬学の深奥に触れたい子は、高等科に進んで【上級薬学】や“魔法薬研究開発室”に来てくださって構いません。歓迎します。
では、授業に移ります。
世の中で一番使われている薬をご存じですか?
腹痛薬でもなく、風邪薬でもなく、ましてや高価な魔法薬の類でもない。この、小さな軟膏です。良いところのお家では あまり見かけないでしょうが、庶民から下位貴族、貴族の使用人などの常備薬として、冒険者や軍人など怪我の多い職種の者も魔法薬や上位の軟膏と共に携帯するほど、幅広い人達がお世話になっているでしょう。
何故だかわかりますか?
最も大きな理由は、安価で手に入ることでしょう。
それと、材料が手に入れやすく 作成が容易であることにより、品質の差はあれど 多くの人が自作できるため 生産数が多いという事もあります。
そして、ちょっとした擦り傷から小さな切り傷、軽度の火傷、吹き出物まで、日常の中で高い頻度で起こりうる皮膚トラブルに対して概ね有効であるという汎用性から、魔法薬と比べて薬効の薄い軟膏ながらも 常備薬の定番としての地位を確立しています。
主な材料は、森へ行くまでもなく 街壁から少し離れただけの草原にも生えている《コルフルイ》という多年草です。教科書3ページのコレです。本校の敷地内にある人工林の周辺にもありますので、実物を見たい子は足を運んでみてください。
軟膏の作り方は、洗浄した葉を磨り潰し、水を加えて弱火で灰汁を取りながら粘りが出るまで煮詰め、煮汁を濾してあら熱を取ったものを 湯煎したミツロウと植物油に練り込み、容器に移して冷めれば完成です。
急ぎの時には、千切った葉を揉み潰して患部に張り付けただけでも、簡易な傷薬として使えるのでコルフルイの見分けは確実にできるようになってください。
では、実際に軟膏を作ってみましょう。乾燥したコルフルイとミツロウ、植物油を配りますので こちらに来て順番に受け取ってください。乾燥コルフルイを磨り潰す時には、匙に半分ほど水を加えます。水魔法が苦手な子はこの水差しを使ってください。
ですが、魔法で出した水の方が純度が高く、調薬に向いているので、水魔法が使える子は なるべく水魔法を使うようにしてください。
ああ、忘れていました。授業以外で自主的に薬品を作る場合には、予め私に申請してください。薬品によっては、許可ができないものや監督が必要なもの、材料を無料で提供できるもの等もありますので、必ずお願いします。
では、作業を始めてください。
〜*〜*〜*〜
イケメン、というよりも美麗という言葉が似合うこの エルフな先生は、かなりマイペースに物事を進めてゆく人のようだ。問いかけておきながら、返事を待たずにすぐ説明に移ったり、言いたい事を一気に言ってしまうようなタイプの。
やや早口で 淡々と進められる授業に、若干 呆気に取られていた私たちは、再度ルイン先生に促された頃に慌てて動き出す。
自分の淡い紫の髪を 薬草として最も有名なコルフルイの花に喩えられる事があるため、それから作られる薬に何かしらの感慨があるかと思えば……
(感慨に耽る隙も無いとか、ちょっと どうなんだろう)
それでも。自分の進路には大切な授業なので、なるべく丁寧にコルフルイを磨り潰すべく、手元の乳鉢に意識を向けた。
(猟師のおじちゃん元気かな? 座りっぱなしの罠猟で痛めた腰に効く薬、早く作れるようになるからね)
作業が単純だったせいか、ちょっとだけ故郷を思い出した。後でルイン先生に湿布薬の作り方を聞いてみよう。母様の肌荒れの薬や、父様の胃薬なんかも良いかもしれないな と考えながら、夢への第一歩を踏み出した。
小説の執筆ページにメモしてあった あとがき の内容を、手違いにより消滅させてしまい、焦りました。(;;゛д゛)?!!←こんな感じ
授業に魔法が必要になる科目は、授業の始まる時期が遅く組まれています。週単位の時間割ではなく、月の始めに 受ける授業が組んであり、空白には選択授業を書き込める課程表を貰う感じ。……という言い訳。
コルフルイの元になったのは、コンフリーです。
本作の薬としての効能や加工法はなんとなく(^∀^;) これからも、なんとなくで薬の作り方を決めてゆきます。
そして、コルフルイ軟膏のイメージはオ〇ナイン軟膏。臭くないよ。
[本編で活用できたらいいな……な設定]
《基礎薬草学教師》ルイン=ヴェルデ=プリムフォレ(古代語で春の森の緑眼なルインさん 的な意味合い……ということで) 銀緑髪・濃緑目
エルフ先生。イケメンというより美麗という言葉が似合う98歳。まだまだ若造です。
人族の学校にて教鞭をとるだけあって、ぽややんとした者 の多い森林の妖精族にしてはしっかりしている方だが、マイペースなのはどうにもならなかった。植物(薬草)を愛している。プリムフォレ姓の部族は、植物の育成魔法を得意としている。