2【社会学】国の興り
|q´ω`) 2話目でやっと 担任登場。口調にブレがあったらごめんなさい。
お〜い、席につけ〜。始めっちまうぞ〜。
うっし、これから一番基本的なこと話すかんな、これが分からんと この先ちんぷんかんぷんだ。この初等部の社会学の試験を全滅させたくなきゃ よぉ〜く聞いとけよ。貴族の坊っちゃん嬢ちゃん方も、家庭教師あたりから既に習ってるかもしれんが、確認を兼ねて大人しく聞いといてくださいよ。
ファンタジニアス皇国、聖都エアリスハイランディア……は、今 俺らが住んでるここだから知らないわけないよな。
お前らのお手々の指じゃあ数えきれんほど昔……わ〜ってるよ、指なんか使わなくてもそこそこ数えられるくらい。喩えだ、喩え! ウン千年って前の大昔の話ってことだよ。
ごほんっ。いいか? その大昔、僅かに残っている資料からすると3000~3500年くらい前だな。人族は多少の知恵はあっても 動物みてぇに好き勝手して、てんでバラバラに領土争いをしてたんだ。人々をまとめ上げ、合い争う群雄を捩じ伏せて 1つの国を立ち上げたのが……我らが 創 皇王 とお呼びしている 初代ファンタジニアス皇王陛下だ。
古い言い伝えや後の時代の文献によると、ファンタジニアスが 創 皇王陛下 の郷の言葉である“夢”と“才能”を捩った言葉で、エアリスハイランディアは“大地”と“至高の場所”を捩った言葉だと伝えられている。まあ、大昔なもんだから他にも色々な説があるがな。この説が最も有力とされていて、俺もいっちばん これが好きだな……《夢と才能に溢れた国》《大地で最も尊い場所》ってなわけだ!
まぁ、あんまり これに拘りすぎても、230年くらい前に問題になった 人族至上主義 の奴等みたいになっちまうからな。他種族への迫害が行きすぎて 恨みを買った種族たちに追い回され、他種族と友好的な人族に敵視され、それでも他種族を目の敵にするもんだから 終いにゃ中立だった人族にまで見捨てられるっつー憐れな末期を迎えたくなきゃ、他種族たちとは仲良くしとけよ。
おっと、横に逸れちまったな。
その 創 皇王陛下 は、人族の中で決まり事を作って無駄な争いを減らし、それまでに無かった 新しい文化を産み、育てることを推し進められた。
もちろん。好き勝手やってたのに、決まり事……律令のことだな、それに縛られることに反発したり、それまでと全く違う習慣や道具なんかに なかなか馴染めない者も多かった。
お前らも嫌だろ? 今日から室内の水洗トイレは使っちゃいけません、その辺で垂れてそのままか、手を洗う代わりに変な臭いの汁が出る葉っぱをよく揉んでください とか言われたら。
おっとすまん、お嬢ちゃん方に聞かせる例えじゃなかったな!だが、こんなようなもんだ。それくらい違う。
それでも、創 皇王陛下 は根気強く人族を導き、その生涯を終える頃には この国の基礎を作り上げたんだ。凄い御方だろう?
その他にも、当時は交流の無かった他種族と交流を始めるどころか、おそらく人族で初めてエルフの嫁さんを娶ったり、獣人と仲良くなって近衛隊長に任命したり、ドワーフと意気投合して次々と新しい道具や武具を生み出したなんていう逸話もある。今でこそ珍しいことでも無いように思えるが、当時は天地がひっくり返るような驚きだったらしいな。とんでもなく労力がかかるのに、石板に刻んでまで伝えたい一大ニュースとして、幾つもの石板に“ありえないこと”だの“考えられない”だのと残されてたんだ。
ま、そのお陰で 遠い昔の出来事を今の時代にも知ることができるから、ありがたいっちゃありがたいんだけどな。
それに、皇王妃殿下がエルフだったのも重要だ。次代の皇王が長寿で、在位期間が人族と比べて とんでもなく長かったんだ。創 皇王陛下の遺志を継ぎ、父の築いた国の基盤を整え、多少の事では揺らがぬように固め、数千年に及びファンタジニアス国を存続させることとなった。まあ、父親と比べて地味で堅実な性格と治世だったらしくてな、在位期間の割りには石板の記述が少なく、名前や即位した皇王に贈られる《号》についての記録が散逸しちまったってのが残念だ。
ハーフエルフだから、きっと目も眩むような美男子だったっつ~のはわかるんだけどな! はっはっは!
おっし、今日は初日だかんな。ここまでにしとくか! 大事な事だからなんとなくでも覚えておけよ。次からは 創 皇王陛下 の子孫の中でも賢君と言われる有名どころと、大きな争いを起こしたり 国を傾けた馬鹿共の起こした戦役なんかを ざっくりやりながら、地図で現在の領土と見比べていくかんな。
ほい、解散。午後は基礎訓練で腹減るから、昼飯はしっかり食っとけよ〜(遠ざかる声)
〜*〜*〜*〜
てっきり基礎訓練とか戦闘技術とか運動系の科目の先生だと思っていた担任のヒュー先生は、まさかの社会学担当だった。
(いかにも冒険者してますって感じの見た目と口調に騙された……ってゆうか。初代皇王って、転生か転移してきた人だよね?たぶん)
いきなり歴史に垣間見えた同 胞らしき存在に、遠い目をしてしまった私は、既にクラスのほとんどが昼食を摂るために移動しつつある事に気づき、やや片付けを急いだ。
(それにしても。王様になって、エルフの奥さんに、モフモフ高スペック護衛と人類最高峰の職人を侍らすとか、ファンタジー世界をこれでもかっ!てぐらい満喫しすぎだと思うんだけど……)
ちょっとだけ、先達である 創 皇王 を羨みながら、私も遅れないよう 昼時の廊下の喧騒へと踏み出した。
語学や算術の授業は、(作者が)楽しくないので省いていますm(_ _)m 魔法を使わない運動系も省略。礼儀作法とかはどうしようかなぁ……
[本編に活用する予定の無い設定]
《担任 》ヒュー・ストライデル 濃い金髪・赤目
ベテラン冒険者とかやってそうな脳筋っぽいおっさ…お兄さん。 そこそこ良い顔立ちなのに、がさつな言動により しばしば恋人候補を取り逃がす。見た目も性格も運動・武術系を担当してそうな雰囲気だが、まさかの社会学担当。頭は良いのに知性が滲み出ない残念なお人。でも、子供からの人気はピカイチ(いじられる的な意味で)である。彼のクラスには平民や変わり種が多く割り当てられるのは、偶然ではないかもしれない。
《第二代 皇王》???
ハーフエルフ。父の後を継ぎ 即位し、ファンタジニアスの基礎を盤石なものとした縁の下の力持ち。破天荒な父とふわっとした性格の母に挟まれ、真面目で苦労性な性格に……(涙)
在位は300年程で、その後は次代に任せて旅するご隠居となった。護衛2人やうっかりさんを従えて、世直しをしたかどうかは定かではない。