1【基礎魔法学】魔法と属性
拙作へお越しいただき、ありがとうございますm(__)m
皆さん、初めまして。魔法学を担当しているミネリア・アンソワールと申します。気軽にミネリア先生と呼んでください。
今日は、魔法がどういったものなのかを お話しいたします。これを理解することが 魔法への第一歩であり、魔法を使うための準備となるのです。
魔法とは、自然界に満ちる“魔素”や私たち生き物が体内に保有する魔素が蓄積・濃縮された“魔力”を一定の法則性に従って 縒り集め、成形し、魔法現象として具現させることを指します。自然の法に従い魔を具現する者、それが“魔法師”と呼ばれる人達です。
その魔法師の中で より優れた者、主に属性と呼ばれる魔法の区分の何れかを極めるか、複数の属性を一定以上の水準で操る術を持つ者が、国の定める試験を経て“魔術師”と呼ばれるようになります。
そして、ごく稀に……全ての属性にて 魔術師の如く、いえ、それ以上に巧みにと言えるほど、思うままに魔を導く者が顕れます。それを“魔導師”とお呼びするのです。魔導師となられた方は その稀少性や能力によって、まず 間違いなく 歴史に名を刻まれることでしょう。
次に、属性の説明です。ここは大切な部分ですから、書き留めてくださいね。
魔力を持つ生き物の体は
内に流れる水を抱き
火の司る熱を持ち
絶えず風を取り込み
やがて肉体は土に還ってゆきます
魔力を操る人の心、魂とも言えますね。これは
光と闇を往き来し
空間を認識することができ
廻る時に縛られていると言われています
この 水・火・風・土・光・闇・空間・時間 の8つが基本の属性であり、魔法を使う上で無視することのできない礎となるのです。
これらの基本属性を昇華した上位魔法として、氷晶・灼火・雷煌・硬石・神聖・邪黒のような高度な魔法も存在しますが、先ずは基本属性から学んでゆきましょう。
適性や性格、生活環境などによって 違いはありますが、体に関係する4属性は比較的 修得や制御が容易であるとされ、扱いやすさや安全面から 水・土・風・火 の順に修練してゆくことが一般的です。
逆に。心に関係する4属性は非常に修得と制御が難しく、適性を持つ者や熟練者、または制御能力に優れた一部の者にしか扱うことができません。特に、空間の魔法は制御が難しく、時間の魔法を扱える魔法使いはこの世界の中でも数えるほどしか居ないでしょう。
皆さんがこれから学んでゆく魔法というものは、何でもできる万能の力ではなく、神官や巫女などのように祈りや意志によってもたらされる神の奇跡でもありません。
長い年月をかけて磨かれ、連綿と伝えられてきた正しい知識と他ならぬ自らが行う弛まぬ修練によって築き上げる 人の叡知の結晶 なのです。
知識が無ければ魔法は発現すらせず、修練が足らずに不相応な力を求めれば、魔法は貴方自身を傷つけることになるでしょう。
知識と修練を積み重ね、より高い次元での魔法の行使と、魔法学の更なる発展を目指して頑張ってください。
ここまでで 解らないこと、質問などはありますか?
では。難しい事ばかりでは飽きてしまうので、早速 水滴を出す練習をしてみましょう(・゜v^)☆
〜*〜*〜*〜
ひっ詰めメガネのお堅い見た目に、生真面目な口調を裏切って、話の締めに可愛くウインクを決めてくれた 意外とお茶目な魔法学のミネリア先生に、教室中の皆から歓声が上がった。お貴族様な女の子たちも、控えめながら声を上げていたようだ。斜め前のプラチナ髪なお嬢様は、口を押さえて 耳をほんのり紅く染めている。可愛いな。あんな感じのがお淑やかって言うんだろう。
(小難しいお話ばっかりじゃなくて、早く実践してみたいもんね、先生ったら子供心をよくご存じで……)
魔法原語を簡略化した水の属性記号というものを、黒板から 手のひらに収まるサイズに切られた魔法紙へ書き写しつつ、初めての魔法行使へ想いを馳せる私の口許は 期待に ちょっぴり弛んでゆく。
(……う~ん。 隣の子、ペンを忘れちゃったのかな~?)
初っ端の授業で忘れ物をしたせいか、ずっと冴えない顔色で俯いていた隣人の手元に 予備のペンとインク瓶を置いてやる。書き上げた記号に間違いが無いか確認している私の心は、既に 初魔法の華麗なる成功まで飛翔しているのだった。
もちろん、溢れるほどに水が吹き出し「こ、この子は天才?!」的なことにはならず、しょぼい水滴が出ただけでした。
[本編に活用されない設定]
《主人公》仮:アーシャ
輪廻人(転生者)
淡い青灰色の瞳に 薬草コルフルイの花を思わせる薄紫色の髪で、全体的に色素が薄い。ちなみに、小説の背景の色は彼女の色合いに近い色にしてみました。
派手さは無いものの整った顔立ちに産んでくれた今世の母様に、密かにではあるが とても とても 感謝している。……が、表情の変化が乏しく、内心は色々と考えていても口調が朴訥なため、あまり周囲に好意が伝わらない残念な子。
魔法学校では治癒魔法と魔法薬学をほどほどに修めて、将来的にド田舎の故郷で地域密着型の小さな診療所を開く予定(自分の見た目・言動が人に怖がられる事には考えが及んでいない)。
《主人公のペン》
オーロラのような光沢を放つ、水色のちょっと綺麗な羽ペン。お貴族様はインク瓶不要の魔法具製や、地球のガラスペンに似た クリスタルや輝石を魔法で成形したつけペンを使うが、平民は大体 羽ペンや木ペン。生家の近所に住まう猟師のおじちゃんが、名門魔法学校への入学祝いとして綺麗な鳥の尾羽で丁寧に作ってくれたお気に入り。実は予備が あと3本ある。