16【放課後】変態?! ……変態(肯定)
拙作へお立ち寄りいただき、ありがとうございます(*^人^*)
すみません。殿下に何かが芽生えたせいで、ここから数話ほど授業以外のエピソードが詰め込まれますm(__)m
最近、アーシャが基礎薬学のプリムフォレ教授と恋仲なのでは? という噂が流れている。いったい幾つの歳の差なのか と最初は鼻で笑っていたのだけれど、二人で人気の無い場所に行ったとか、度々 二人きりで 調薬室に籠っているとか、なかなかに具体的な噂が聞こえてきて……流石に少し気になってくるよね。
一応 皇子という立場の僕だからか、噂をしていた誰かに「教えて」ってお願いすれば皆すぐに教えてくれる。放課後に姿を消した2人を探すのは簡単だった。
そして、伝えられた場所へ向かうと。
「た、頼みます。アーシャ嬢……ほんの少し、ほんの少しだけでいいんです……どうか こちらへ……」
見目麗しきエルフの男が、人気のない第6研究棟の裏で、まだ幼けなさを残す少女に 息も荒く近づいてゆく。戸惑うように少女が一歩退くが、人を迷わせる深い森のような目を潤ませ、滑らかな頬を染めた男は、身の内に燻る情熱を抑えきれないとばかりに距離を詰める。
「ああ……大丈夫。無理に奪ったりはしません。ただ、少しだけ……この手で触れて……その 淡く初々しい香りが胸一杯に染み渡る幸せを味わいたいだけなんです……だから……」
怪しげな言葉を垂れ流し、その見目を裏切らぬ 清艶とでも言うべき色香を漂わせ、今にも少女に襲いかからんとしているように見えるその男から、少しでも遠ざけるように。僕は彼女を後ろから抱き抱えた。……身長が同じくらいでちょっと格好がついていない とか、言わせないよ?
「ひう?!」
「寄るな ド変態。僕のアーシャに何をしようとしているのかな?」
驚いて 小さく声を上げるアーシャを捕まえたまま、僕は目の前のド変態を笑顔のまま睨めつける。いや、笑顔である必要は無かったんだけど、癖でね。つい。
「……変態? 心外ですね。私はただ、アーシャ嬢の見つけた珍しい魔力草のシロツメモドキを 少し見せてもらおうとしていただけです」
「魔力草?」
怪訝な表情で発せられた その言葉を聞いて、アーシャの肩越しに彼女の手元を見下ろすと。
「ん」
彼女は普通に歩いていては見逃してしまいそうなほど小さくて地味な薬草を手にしていて、軽く掲げて見せてくれた。……。
「はぁ……なんて紛らわしい……」
溜め息とともに僕の腕から解放されたアーシャは、教授へと 恐る恐る(ああ、やっぱりちょっとは恐かったんだね) 薬草を手渡した。渡された教授の方は、珍しい薬草に夢中なようで、すぐに遠い世界へ旅立って行った。
そして、振り向いたアーシャはというと……
「いつからウォルセンのになったの?」
と言って、不思議そうに首を傾げた。
「……」
僕は自分でも無意識だった発言を指摘され、笑顔が引き攣ったのを自覚した。何故だか膝から崩れ落ちたい衝動に駆られたけれど、それは堪えた。
(照れも恥じらいも無いとか、全く意識されていないみたいだね……今は)
「でも、アレが 変態なのは同意する。……ありがとう」
そう言って 教授をちらりと見やった アーシャが ほんのり笑うから、僕は「まぁ、いいか」と思うことにしておく。
「で、どうして2人きりでいたの?」
気になっていた噂の真相を問い質すのは忘れないけれどね。
麗しきクールビューティーなんて幻想だったんや……(´;ω;`)
はい、申し訳ございませんm(_ _)m この変態は、【欠片】のキャラを考えていた かなり早い段階でこうなる運命が決まっていました。
お坊っちゃま・お嬢様の多い学校で、一緒に泥だらけになってまで 薬草を探してくれる子は貴重な存在。ルイン先生は何かとアーシャに目をかけています。自ら進んで調薬練習をしたがるのも可愛いところ。
[ちょっとどうでもいい設定]
《シロツメモドキ》
クローバーと呼ばれて有名な、シロツメクサに似た魔力草。小さく地味な見た目のため、四つ葉のクローバーを探すような意気込みで探さないと見つからない。幸い、シロツメクサとは生える場所が違うので 超絶難度の間違い探しみたいな事にはならないのが救い。都市伝説レベルで、四つ葉もあるとか……




