表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/12

ステップ8


 あっという間に1週間がたった。

 この1週間は特になにもなかった。

 桜を泣かせたことで一部の連中からリンチにあったり、緊急依頼で懐が暖まったおっさんから毎日飯を集って金を使わせたり、何故か苺さんのお見合いに同席されられたりとうぐらいはあったが特に変ったことはなかったと思う。


「いやいや、お前いろいろあり過ぎだろそれ・・。 てか、さらっと俺のことまでどうでもいいみたいに言うなっての!」


「実際おっさんのことなんてどうでもいいからな・・ごちそうさまでした」


「くっ、今日も今日とて人金で好き勝手食いやがって・・」


 おっさんはからになったサイフを広げ俺を睨むが、


「安心しろよおっさん。 さすがにこれ以上はたからないって」


「これ以上もなにも、もう一銭も残ってねぇーつうの! あぁ、明日からどうやって生活しろっていうんだよこれ・・・」


「はぁ、 だから心配すんなよおっさんこれから万里さんとこに装備取に行くから、その後慣らしがてら一緒に迷宮潜ってやるから」


「何か上から目線なのがあれだが頼むわ。 俺一人だと効率があがんねぇからよ」


 俺は返事の変わりに頷き、おっさんと共に万里さんの研究塔へと足をむける。


「そう言えばおっさん、緊急依頼はどうだったんだ? 討伐成功は聞いたが結局誰が参加してたんだ」


 おっさんはこの1週間レイドを組んで、階層跨ぎの元凶と思われるギガンテス討伐に参加していた。

 階層跨ぎ発見が早かったため、ギガンテスが成長しきる前に討伐できたので今回は大きな被害を出すことはなかった。

 で、無事討伐が完了したのが3日前で、今は階層跨ぎで階を越えてきた残党狩りが行われているところだ。 ソロでの迷宮入りは今だ禁止されているため、装備の慣らしに迷宮に入るにも人がいる。 なので、おっさんを利用しようと思ったわけなのだが・・・


「お前また何か変なこと考えてただろ」


「さぁ? 何のことだ」


 流石はおっさん。 不穏な考えに気づきかけやがったよ。


「まぁいいか。 で、今回参加した連中だが有名どころで言うと「銀狼旅団」 「魔法帝国」 「鮮血の騎士団」 のパーティだな。 ソロだと「雪花姫」 「ケモナー将軍」 「疾風迅雷」だな。あとは、お前んとこのクラスの連中も参加してたなぁ・・・「桃姫親衛隊」だったか? あれだよ」


 どうでもいいが、おっさんも「防衛大臣」なんてだっさい二つ名があるそれなりに名の知れた冒険者なんだぜ。

 にしても、二つ名ダサすぎ一体誰が付けたんだろうな・・。


「ふ~ん、それなりに上位に冒険者が参加してたんだな・・。 なのに、学生パーティが参加してんのか? あいつらの実力だと、Cランクの魔物狩るのでもつらいんじゃないか・・。 数合わせか?」 


 あぁ、一応言っとくが桃姫ていうのは桜のことだ。 まぁ、言わなくても分かると思うが桜のパーティで桜の親衛隊という名のファンクラブのあつまりだ。 俺には関係ないしどうでもいいけどな・・。


「何でも、あのパーティの中に学園関係者の息子がいて、そいつのコネで参加したんだと。 大方、桃姫に格好でもつけたかったんだろうな・・終始邪魔で役立たずの連中だった。 のくせに、ギガンテスを倒したことを自分達の活躍のように法螺吹くから余計質が悪いってもんだ。 お前もよくあんな連中と一緒にいられるよな・・」


 あーそんな奴いたっけなそう言えば・・。

 あまりにも小物臭がするんで忘れてたわ。

 だけどまぁ、


「別に一緒にいるわけではないぞ。 あくまで俺は一人であってあいつ等のことなんてどうでもいいからな」


 わりと本気でどうでもいい。

 といより、あんなのに関わっても仕方ないだろ? 下手に関わってテンプレイベント発生したらしゃれにならない。 テンプレも、何もせず関わらなければ起きないだろうしね。



 そんな事を話しているうちに、万里さんの|ラボ≪研究室≫に辿り着いてしまった。

 出来ることなら来たくないのだが・・・。

 俺は用事を済ませさっさと出ようと心に決め扉を開ける。

 そこには・・・・・


「なんじゃこらー!」


「どうやればたった1週間でここまでのゴミ屋敷になるんですか・・」


 1週間前俺が来たときしっかりと掃除をしゴミを片付けたはずなのに、今は足の踏み場もないほどゴミが散乱していた。

 そしてその中のソファーに寝転びながら俺たちを出迎える自分・・・


「お~ 蓮蓮待ってたよ~って、なんやハゲも一緒かいな」


「ハゲじゃねー坊主だ坊主!」


 ヘンタイさんもとい万里さんがいた。


「はぁ とりあえず風呂行ってきてください。 片付けときますんで」


 



「いや~ すまんかったね折角来てもらって掃除までしてもらって」


「そう思うなら、普段からちゃんとして下さい」


「まったくだ」


 俺たちの前には、ゴミが撤去され足の踏み場を取り戻した部屋が。 

 毎回きたら掃除させられてる気がするんだが・・・ひょっとして使われてるのか? だとしたら、そろそろ金とってもいいだろうか・・。

 などど考えつつも、本来の用件を済ませることにする。


「で、頼んだ物は出来てますか?」


「ばっちしや。 ほい、こいつが新しい蓮蓮の装備や」


 そう言って、万里さんはケースに入れられた真新しい武器を俺に手渡す。

 ハンドガンをモデルに、銃身を挟むようにして20cm程度の刃が着けられている。

 色は漆黒の黒でグリップ部分に万里さん作を示す猫のようなマークが。 それが二つ・・二刀流ならぬ二双銃というやつだ。


「へぇ~ なかなかかっこいいじゃねえか」


「ですね。 手に持った感触も悪くないし、振った感触も問題ないです」


「せやろ、うちはやれば出来る子やからな」


 と万里さんは胸をはる。

 仕事の腕に関しては信頼してますよ。 でないと誰がこんなヘンタイと専属契約するっていうんですか・・ホントに・・。


「蓮蓮の要望どおり、|暴走爆発≪バースト≫を使っても壊れへんよう複数の特種鉱石を調合して作ったから、かなり無理が効くはずや。 さらにや、こいつには隠し要素も盛り込んであるんやで」


「隠し要素ですか?」


「そうや、その名もシフトチェンジ!」


「・・・わりと普通のネーミングですね」


「いろいろ考えるのも面どいからな、こういうんはシンプルでいいんや。 ちゅうことで実演や、蓮蓮そいつを手に持ってタイプ2って言ってみ」


 俺は万里さんに言われ二双銃を手に持ち、


「タイプ2!」


「うぉっ」


 横で見ているおっさんが驚きの声を上げると、手に持っていた武器が形状を換えた。

 さっきまでのをタイプ1ハンドガンと呼ぶなら、タイプ2はショットガンタイプであった。 刃の長さも50cm程度まで伸び、短剣から片手剣に変わった感じだ。


「こいつが、タイプ2中距離戦闘型ショットガン×片手剣や。 タイプ1はハンドガン×短剣二刀流でスピードと手数で勝負近接戦闘型、タイプ2はバランスを重視した中距離型や。 そして、タイプ3」


 万里さんの声で再び武器が変形した。

 今度のは、スナイパーライフルをタイプのもので銃としてもかなり大きいく、刃も1mぐらいの長さで幅がかなりある大剣に分類されるものだろう。


「タイプ3遠距離型のスナイパーライフル×大剣、完全パワー重視の攻撃形態やな。 どや、これがうちの研究の成果のシフトチェンジや」


「研究の事は俺には分かりませんが、こいつは使えそうです。 正直ビックリの出来です」


「せやろせやろ。 もっと褒めてもいいやで♡」


「ま、これぐらいはやって貰わないと契約主としては困りますよ」


「アハ 無表情罵りいだだきました♡」


 ヘンタイ・・・・。


「それと、こいつも渡しとくわ」


「何ですかこれ?」


「新しい弾薬ポーチや。 そいつは二双銃とリンクしとるから、そいつに弾を入れておくと自動で二双銃に弾薬を装填してくれるように改造してあるんや」


「さらっと言ってますが、結構すごいことだと思いますよその仕組み」


「まぁ、うちは天才やからなこれぐらいちょちょいや・・。 んで、弾薬のタイプを変えたい時は、~~弾セットで切り替わるからな」


「こいつの売りは、音声認識換装ですか・・。 ややはずいですね」


「何を言ってるんや蓮蓮、魔法もそうやけどこういうのは声にださんとかっこよくないねんで!」


「いや別にかっこよさは求めてないんですけど・・・」


「あとは、2と3は片手装備になるからそこんとこ注意しいや。 弾薬は、通常弾×1000と各種特種弾薬500ずついれてあるからな」


 まさかのスルーですか・・・万里さんあなたもやるようになりましたねぇ・・・。

 まぁ、どうでもいいですけど。


「あともう一個、タイプごとに使える弾薬が決まってるから注意や。 具体的に1は通常のみ・2はオールOK・3は通常とバースト専用かな」


「バーストは3でのみですか?」


「1や2でも撃てるけど、3が一番威力が出るし頑丈なんや。 出来れば1や2では使わんでほしいな、下手したら壊れてまうかもしれへんから・・」


「了解です。 バーストは3だけにしときます」


「そうしてな。 とりあえず、説明はこんなもんやと思うから後は実践で確かめて、分からんとこや不備があったらうちのとこに持ってくる感じやな」


「ですね、さっそく試しに行こうと思います。 万里さん今回はいい武器を貰いましたよ」


「アハ そんなの当たり前やって。 でも、蓮蓮がどうしてもっていうならうちのこと貰ってくれてもいいやで♡」


「そういうのはせめて、一人でまともな生活が出来るようになってから言ってください。 毎回来て掃除もめんどいんで・・」


「や~ん♡ その、つんとした返しがまた私を狂わせる~♡」


「狂ってるの貴方の頭の方でしょ・・・じゃ、俺はこれで」


 俺は万里さんのラボから退散する。 あれ以上ヘンタイに付き合ってられるかっての・・。

 部屋のほうからヘンタイの喘ぐ声が・・・・幻想だな。

 ってあれ、おっさんは?

 ・・・・・・・あ、おっさん忘れてきた・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・まいっか。

 てか、いつのまにかおっさん空気だったよな。

 

 俺は心の中でおっさんに合掌するのだった・・・・・。


「俺を忘れるなーーーーーーーーーーー!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ