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ステップ3

 未来学園には二つの科がある。

 普通特進科と冒険者科の二つである。

 特進科は言わずとしれた未来学園の表の顔で、学園の独自調査で選ばれた各分野の天才が在籍し、その人にあった専門の教師が付けられ、幼~大学院までの間一度入学すれば卒業するまで無料で教育を受けられる。 もちろん、在学途中で学園をやめ独立することもできるし、在学中は年齢に応じて国から月に給付金としてお金も支払われる。 すべては本人の意思一つで決めることができる。


 そして、表の生徒を支えているのが冒険者科と呼ばれる生徒だ。 イクリプスと呼ばれる自身の体を、変化・改造する薬に適正のある人材が集められ、ゲームのように創り変わった体に異能力を携え迷宮に入って情報を持ち帰ってくる。 迷宮に入り情報を持ち帰ることで冒険者科の生徒は国からお金が支払われるまた、国は持ち帰った情報や技術で国は潤い表の生徒を育成しているのだ。 はっきりと・・・言わなくても違法な行為ではあるのだろうが、現に10年前と比べ国の借金は10分の1にまで減り数年後には黒字の見込みもでている。 迷宮技術により各分野で成長しているのまた事実である。 が、一つ問題があるとすれば迷宮の情報を秘匿を目的に、冒険者は一生未来学園の敷地外に出ることが出来なくなるということだろう。当然だろう、人をやめたような存在をおいそれとさらすわけにはいかないのだから・・。 まぁ、そのために各方面からかなりの支援を受けているし、都市を丸々一つ改造して最新の技術満載の飽きのこない作りになっているし、定期的に都市も作り変えられている。 のだけど、呈のいい監禁に変わりはない・・・と、一部では言われているもまた事実である。

 







 未来学園高等科冒険者コース2-1。

 そう書かれた教室のドアを開け俺は教室に入る。

 教室の中には、普通の高校生となんら変わりのない学園の制服に身を包んだ男女が和気藹々と会話を楽しむ姿があり、会話の内容も、今時の高校生らしくファッションや好きな芸能人の話で授業が始まるまでの時間を潰している。

 そんな雑音を聞き流しながら、俺は自分の席である窓際一番後ろの席に腰を下ろす。 俺が教室に入ってきた時何人かのクラスメイトが舌打ち交じりに睨んできたが、誰一人として俺に話し掛けてくるものはいない。 このクラスで俺はいない者として扱われているからだ。

 それもこれもあの日に・・・


「新庄君おはよう♪」


 訂正。 一人だけ俺に鬱陶しく話しかけてくるやつがいる。 


「今日も遅刻ギリギリだったね。 ダメだよ朝は余裕を持って行動しなくちゃ」


 それがこいつ|花篭 桜≪はなかご さくら≫である。

 名前のように桜の花を思わせるピンク色の長い髪が特徴的で、その整った容姿と子供のように柔らかく白い肌はそんじょそこらのアイドルより遥かにスペックの高い美少女である。

 現に彼女は、幼~大まで未来学園全校生徒の中で神5と称される位男人気が高い。

 そんな彼女が何故俺などに話しかけてくるかと言えば、


「やっぱり子供の頃みたいに、私が毎朝起こしに行かないとダメだね。 うん、そうしよう。 ね、いい考えでしょ? あ、それとも一緒に暮らしちゃう? 私はいいよそれでも」


 所望幼馴染というやつだからだ。

 リアルでこんな奴いるのかって思うだろ? 俺もそう思うよ。 ぶっちゃけ、お前は俺のオカンかってぐらい世話を焼こうとしてくるし、毎日毎日こうして俺に話しかけてくる。 見てみろよ、周りの男連中の俺を呪い殺すんじゃないかと思うぐらい殺意のこもった視線・・・・・・たまんねぇだろこれww。

 だけどそろそろ・・・・


「だからね蓮く・・「花篭さん!」・・・」


 ほら来た。


「今日の迷宮攻略のことで話があるんだけど」


 と言って、数人の男子が桜に近づいてきて、俺に背をむけるようにして桜から俺を見えないようにガードする。

 そんなことしなくても俺は何もしねぇよ・・。


「あの、今私新庄君と話を・・・」


「新庄? 誰それ・・・あぁ、去年死んだやつか。 花篭さんはまだあいつのこと忘れられないのかい」


「そんなこと言わないで! 彼はちゃんとここに・・・」


『はーい。 席につけよガキども~』


 桜が言い切る前に、教室のドアが開かれ担任の教師が入ってきた。

 それに合わせ、それぞれの席へと戻っていく生徒達。

 桜はまだ何か言いたそうにしていたが自らの席に戻っていった。


「死人が学校にくんじゃねぇよ」


 去り際に吐き棄てるようにして浴びせられる罵声。 もちろん俺にしか聞こえないようにしてだが・・・。

(心配すんな、俺もお前たちのことなんて何とも思ってないからよ)

 と心の中で返しておく。


 その後も何事もなく、俺はいない者として扱われ12時丁度にその日の授業を終える。 説明しておくと、冒険者科の授業は午前中のみで午後は基本的に自由時間で、土日は普通に学校も休みだ。 迷宮に入るも、訓練するも、勉強するも、遊びにいくも自由、危険の伴う仕事のため冒険者という者には多くの自由が与えられている。


 普段なら真っ先に一人で迷宮に稼ぎに入るのだが、昨日苺さんにソロでの活動を禁止され装備も新しく新調中のため今日は午後からは丸々空き時間になってしまった。

 何をして過ごすか考えながら教室からを出ると、


「待って! 新庄君!」


 桜が俺を追いかけて後ろから声をかけてくるが、俺は一切耳をかさず歩き続ける。


「待ってよ・・」

(とりあえず飯かな~)


「お願い・・・待って・・・」

(何食うかな~ 久しぶりにがっつり食いためるか)


「・・・ま・・・・って・・・・」

(その後は・・・あいつ等のとこ行って時間潰すか。 よし、それで行こう)


「待ってていってるでしょ!!」


 歩みをやめない俺の前に、桜は両手を広げ道を塞ぐ。

 横をすり抜けていこうとするが、サイドステップで横に移動して進路を塞ぐ桜。

 はぁ~ 

 仕方がないので話を聞いてやることにする。

 ま、どうせ言うことは想像できるが・・・


「何?」


「あ!・・・えっと・・・・」


 俺に話を聞いてもらえたのにビックリしたのか、桜の顔は少し赤い。


「用がないならどいてくんないかな、邪魔だから」


「っく!」


 今度は邪魔と言われ突き放されたことで、涙目になって悲しそう顔する桜。

 なんなんだろうね一体・・。 

 

「用がないみたいだから俺行くわ」


「!! 待って!!」


「何? 俺忙しいんだから用があるなら早くしてくんない」


 ホントは急いでもないければ用事もないけどね・・。

 だけど、これ以上長くいるといろいろと面倒になるからなぁ。


「・・・・・今日の夜時間あるかな・・・話があるんだけど・・・」


「ない。 ていうか、あっても話したくないから無理」


 俺は桜を冷たく突き放す。

 桜は今度こそ、目に溜めていた涙を流し泣き始めた。

 何がそんなに悲しんだか・・・泣けばどうにかなるとでも思ってるのかねぇ・・。


「それだけ? じゃぁ俺行くか「・・・どうして」・・ら」


 消え入りそうなぐらい小声で、桜は「どうして」と尋ねる。

 この「どうして」の意味を俺は理解している。

 「どうして」そんな風になったの、「どうして」そんなこと言う、「どうして」こんなことするのだ。

 そして、「どうしたら~~の」と言う言葉に繋がってくる。

 

 だから俺は「どうして」の答えにきっぱりとこう言ってやるのだ・・・


「そんなのお前らのせいに決まってるじゃん。 俺はお前らに殺されたんだ、だからこそお前らは俺をいない者として扱ってるんだろうが。 ま、俺としては復讐するつもりもないし、誰かれ気を使わなくてもいいから楽だけどな。 と言うわけでだ、お前も俺に構うのやめてくんないかなうざいから」


 俺は笑顔で酷い言葉を浴びせ、桜の横を通って遠ざかろうとする。

 桜は俺の言った言葉が信じられないのか、俺の服を掴んでそれを止め、


「うざくてもいいよ・・・・私は、私は蓮君と一緒にいれればそれで・・・」


 蓮君・・・か。 昔はそうやってお互い名前で呼びあってたっけな。 

 俺が壊れてなかったらその言葉も響いたんだろうけど・・・


「俺は一緒にいたくないから」


 俺は桜の手を払いのけるとそのまま歩き出した。

 後ろの方で桜の泣く声がしていたが、俺の壊れて無くなった俺に響くことはなかった。


(ホントどこまでも俺壊れちまったんだな)

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