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赤い……光。その赤い光は地面に落ちるとその地をプラズマ状に焦がした。
「!?」
ジャスティーは瞬時に上を見た。赤い閃光が降って来た方向だ。すると今度は黒い人影が落ちてきた。
素早い!
瞬きをする暇もなく、ジャスティーと黒い人影との目が合った。「悪党か!?」とジャスティーが思う前に、ジャスティーの体は勝手に動いていた。
「ジャス!」
ミズが声を上げた。
「ちっ、……んだよ」
ジャスティーは青い光に包まれていた。ジャスティーを襲った人影は、その光を見た瞬間後ろへと下がり、ジャスティーを睨みつけ舌打ちをした。
ジャスティーはミズからの言いつけをちゃんと守って、青いスイッチしか押さなかった。
これは……。ジャスティーは自分を覆う光を見る。これは、防御壁の役割を果たす光か?
「はぁ……、はぁ……」、緊張からか、ジャスティーの息はあがる。
「ジャス、解いて」
ミズが言った。
「ミズ! そいつから離れろ! 今の見てただろっ!」
「ジャス、お前、殺されなくてよかったな……」
ジャスティーは感覚を研ぎ澄ませ、臨戦体勢に入っているというのに、ミズは呆れたようにそれを見て笑っていた。
「ミズ? 何笑ってん……」
「遊びは終わりだ。お前らで最後だ。全員揃ってるぞ」
ジャスティーは一瞬何が起きたのかわからなかった。しかしジャスティーがつくった青い防御壁は消えていた。目の端で、かすかに赤い光の残像だけを確認することができた。
今、何をした? こいつ。
「ミズ!」、こいつは危険だ、離れろ!
ガコンッ……。
「いちいちうるさい奴だな! 大人しくついてこい! 余計なことさせるな!」
レイスターがジャスティーを思い切り殴った。そして、「ミズ、ちゃんとジャスのこと見てろ」と言った。
「すみません」
ミズは分が悪そうに笑った。ジャスティーにとっては謎だらけの夜の散歩だった。
そんなに怒るならもっと説明が欲しかった。だいたい……。ジャスティーは自分を襲ってきた男を見た。「俺が」襲われたんだぞ。
「例の子か?」
「うん、いい奴だからよろしくしてやってくれよ」
……あれ? ジャスティーは何かに気付いた。
「……あっちはよろしくって感じじゃないぜ」
フードを被っていてもよくわかる。常に鋭利で冷淡な目をしている男だ。ジャスティーは睨まれているわけでもないのにその目に嫌悪感を抱いた。
……やっぱりこいつは悪党……、あれ? フード?
「おい、ジャス。いい加減わかれよ」
ミズが言った。ミズはジャスティーの不信感を読み取った。「防衛団のマント!」
ああ! そうだ! ジャスティーはやっと頭にひっかかっていたもやを振り払うことができた。
「……って、こいつにも言えよ! 味方に襲いかかってきたんだぞ!」
「バカ。俺は警備してたんだよ。新入りなんて知るか。レイスターとミズから離れたところにいた知らない奴だったから排除しようとしただけだ」
「マント!」
ジャスティーは赤いマントを掴み、叫んだ。
「知らない奴だ。マントぐらいの小細工には騙されねぇよ」
イライラさせるガキ! ジャスティーはそう思った。
「ライラ!!」
レイスターが怒鳴るようにライラを呼んだ。
「お前のせいだぞ」
陥没したほりの深い三白眼に睨まれた。ジャスティーは殺気すら感じた。「ライラ」と呼ばれた男は、素早くレイスターの元へと駆けて行った。
「ライラに嫌われるとはさすが」
ミズがジャスティーの肩をぽん、と叩き、なんだか嬉しそうに笑って走り出す。
「ほら、遅れるな。行くぞ」
「……なんだよ」
ライラ……か。女みてぇな名前。