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ソードダンサー  作者: 少女遊 夏野
第二幕
10/12

昔話


 遙か昔。それは古の神々の時代。天界に住まう神々の恩恵が大地に降り注いでいた時代の話である。

 大神グラドデイウスを初め、海神ウォータミウス、戦神バトラドリウス、美の女神プルスィアロン。彼ら四神が主に神々を束ねる長たちである。しかし彼ら兄妹には末の妹がいた。それは戦神バトラドリウスの分身であるデカルソフィである。戦神は己が心にある人間のような醜さに怒り、嘆き、嫌悪した。そして彼はその心を外に産み落とした。自らが神々の一柱であるがために、人間らしさを拒絶した。神は人間を凌駕するものであり、人間と同等のモノを神であるものが持ってはならない。そう彼は信じていた。


 故に彼女――デカルソフィ――が誕生した。


 デカルソフィは娼婦のような女神であった。他の神々が美しい神々しさを持つのに対し、彼女は禍々しさを持っていた。禍々しいが美しい。心に巣食う闇すべてを具現化したかのようだった。漆黒の髪に白い肌。唇には真っ赤な口紅が塗られ、いつも嘲笑の微笑を浮かべていた。

 彼女は戦女神としての地位を天界で得た。しかし戦女神といっても、戦をするわけではない。ただ、人間どもの戦をいき過ぎないように見守り管理するだけであった。

 それが、神々のする仕事であり遊戯であった。この世界というボードで人間という駒を動かし優越感を得るだけのゲーム。

 彼女は退屈だった。とてもつまらなかった。彼女は不浄の心を持つ神だ。より大きな、この世界を壊してしまうくらいの戦を見たい、やりたい。こんなつまらない世界など壊してしまえばいい。

 デカルソフィは大神に向けて戦争を仕掛けた。自分を受け入れることのできる世界を憎む心を持った人間に憑り付き、大地を血で染め始めた。だが、大神はそれを許さなかった。信仰心の厚い忠実な戦士を筆頭に、向かい打った。

 それはそれは大きな戦いになった。大地は血に染まり、天には黒雲が立ち込めた。デカルソフィは人間がボロボロになるまで使い、乗り換え何年も戦った。だが、大神の軍は強かった。この世界を善とするものが多かったのだ。

 次第にデカルソフィは衰弱していった。その力もだんだんと衰え、ついに追い詰められた。彼女は悔しくも人間の手によって捕らわれ、天界の裁きにかけられた。

 彼女は天界を追放された。だが、諦めてはいなかった。むしろ憎しみの心がより彼女を燃え上がらせた。彼女は神々の箱庭より追放されるときこう言葉をのこした。


「みていなさい、この脆弱ども!いつか必ずこの世界を壊してあげるわ!あなた達の大好きな人形でね!」


 高らかな笑いを残し、彼女は黒雲とともに天界から姿を消し冥府ヘルカトラムへと移った。そこで、次なる戦士となる人間の誕生を力を蓄えながら待つために。



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