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夕立

作者: 悪之文学

夕立。

もぅ夕立が来る。



肌寒い風は僕を抜けて、はっきりと別れる曇天の空に吸い込まれて逝くようだ…

生暖かい風は、私の心を擽った。

頭の上の黒い雲は、くっきり別れる夕焼けの夕日でまるで西洋絵画に描かれる燃える雲のようなだった。


もぅくだらない…この世界も


感動的なものなんていつか、無くなってしまうし

私が生きてこの世に生き続けていられるのでさえ、70年?80年?いや もっと短いかもしれない



再び、生暖かい風が私を抜けていった。


『もぅ、何もかもめんどうだな…』


何を見ても驚かなければ感動すらしない…だけど、最近は涙を零した

だが、自分でもわからない。

何かと重ねてしまっていたのかも


自分の中で欠けた何か



『あぁ、ウザ』



夕立の迫る帰り道で一言呟いた言葉は消えた。


時間すら感じる事のない夕暮れ時


学校終わりの帰り道

雨の匂いと、しつこい風


失望と無気力な私。


立ち尽くした時に伸びた私の影に気づいた


存在している事に


欠伸で誤魔化す事すら危うい変な緊張感。


悲しい歌が聞こえてきそう、もし鼓膜に触れたのなら泣き崩れてしまうだろうか…あぁ、終わり始まりまた明日


ずっと続く気怠い半身


抜け落ちた両手の重さ。



世界の破滅にも見えたその風景に私は罪悪感すら感じた



自殺志願者はこの風景で今日、命を絶とうと思うだろう


それだけの罪深き夕立。



私の頬の筋肉は緩み、力無き笑が込み上げてきて怪しくも健気に微笑した。



雷の音が鼓膜に辿り着いたのは微笑してから2秒ぐらい置いてからで瞬時に薄暗くなって周りは雨が降る前の冷気と湿って重い空気が私の横顔の頬を擽って、首筋を弄った。



『あーぁ、土砂降りかな…』



と呟いた時には、雨は髪を濡らし夕立の時の黄昏模様は雨音と秒速7メートルで冷気を満ちた粒が何事もなかったように降り、私を優しく雨の匂いで満たしてくれた。




今日、死んでしまった人。


今日、誕生日の人。

今日、産まれてきた人。



私は、



夕立の存在も在り方も、風景も次にどうなるかも知っている。



ある意味、夕立こそがこの空の本当の姿なのかもしれない。


私は、遥か遠く見える曇天空にむかって吐き出した


最後の言葉。




『     』




その言葉は落雷の轟音と同時に曇天に響き渡って空に呑み込まれた。




雨は、まだ降っていて…


心は澄み切ったように優しくて、瞳に映るもの全てが美しかった。


土砂降り。

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