しばらく手を付けていなかったゲームは甘く見てはいけない。
魔王は最初に少し出てくるだけで、後は主人公オンリーです。あらすじの下にも書きましが完結目指して頑張りたいと思います。
俺の名前は道心黄麻。普通の高校三年生〝だった〟。…別に不祥事を起こして退学させられたとかじゃないぞ。何故〝だった〟かというと「これからよろしくね!〝破壊神様〟!」…俺の目の前にいる〝魔王〟が、俺を召喚したのが原因だ。厳密に言えば事故なんだけど、これからどうしよう。
~回想・数時間前~
道心side
「お!懐かしいなーこれ!」
自室のベッドの下からエロhもとい男のバイブルを取り出そうとしたら、何か本とはちがう堅いものが手に当たったので取り出してみると、昔なくしたと思っていたテレビゲームのカセットだった。
『エレメンタルナイト』
舞台は剣と魔法の世界。君は6種類の属性を使い分ける勇者になって、行く手を阻む謎を解き、魔王を倒して世界の平和を取り戻せるか!?
というありきたりなゲームなのだが、隠しパスワードを入れると最初から全パラメーターがカンストの状態で始められるので、ゲーム初心者でも無双ができるファンタジー系RPGだ。
「買った当時は見栄張って『チートなんて邪道だ!』って言っちゃったから、クラスメートから隠しパスワードの書いた紙を受けとっても使わずじまいだったな。」
…紙どこに置いたっけ?
~数分後~
「まさか、ハードの箱と一緒にしまってあったとか…」
久しぶりにやりたくなったので部屋中探したが、ハードの入った箱は見つかれどパスワードの書かれた紙は見つからなかった。諦めてハードをセットしようと箱を開けたら、中にハード一式と紙の切れ端が入っていて、紙には『隠しパスワード』と書かれた下に文字の羅列が書かれていた。
「小1の時の品だからもう11年前か、中古品を落とし玉で買ったんだっけ?」
ハード一式は箱に入っていたのである程度綺麗な状態だが、年代を感じるような汚れが見える。コントローラーも中古品なので1つしか入っていない。当時は大事にしていたが、箱にしまってからは数年ほったらかしにしていたので、動くか怪しいところだ。
「ま、やるだけやってみますか。」
ハードとテレビをケーブルで繋いで、カセットを差し込んで、電源を立ち上げる!
動かない。
電源を切ってケーブルの接触を確認して電源を立ち上げる!
動かない。
電源を切ってカセットとハードの接触部分にゴミが無いように息を吹きかけて、カセットを差し込んで電源を立ち上げる!
動いた!
「ふぅ。やっと動いた。」
画面にOPムービーが流れる。うわぁ、懐かし!
ひとしきり懐かしんでからスタートボタンを押す。
「orz」
セーブデータが全部消えていた…。いや、なんとなく消えているだろうなと思っていたけど…。だが!俺にはこれがある!このカンストパスワードですぐに全クリしてやるぜ!当時のクラスメートの話では、カンストすればストーリーにそって謎解きするだけなので、1時間で全クリ出来たと言っていた。ふっふっふ。ストーリーも大体覚えているから迷うことも無いだろう!目指せ!1時間以内!
ゲーム開始2分後
「では、早速パスワードを入力しますか。」
俺は紙に書かれたパスワードを入力欄に打ち込んで決定ボタンを押した。すると画面に〝パスワード入力を確認しました。全パラメーターをMAXの状態で始めますか?〟〝→はい・いいえ〟と出た。はいに矢印があるのでそのまま決定ボタンを押すと、画面に勇者の初期値が表示されたので確認していく。
勇者
HP:99999
MP:99999
AT:999・DF:999
MAT:999・MDF:999
SP:999
…うん!チートだね!名前は勇者で元から固定されている。特技や呪文のLvもMAXになってるけど、それを使えるようにするエレメントがストーリーを進めていかないと手に入らないので、最初は使えないのが残念だ。まぁ、エレメントを手に入れるまでに戦闘で苦戦することは無いだろうから、いいけどね。決定ボタンを押すと画面が切り替わりプロローグが始まった。では、サクサク進めていきますか。
開始10分後
「そういえば、この勇者一人で旅をするんだよな。今ではパーティー組むのが当たり前になってるけど。」
この勇者は一匹狼だったのかね?捕らわれの姫とかもいないし、勇者はセリフが無いから心情もわからない。…王様に脅されて、とかだったらやだな~。
開始20分後
ストーリーの半分くらいまで進んだな。HPの心配が無いから所々村や町を飛ばしてダンジョンだけ攻略している。これなら新記録出せそうだ。
開始40分後
あれ?このルートで合ってる筈なのに進めない。…風竜のペンダント?そんなのあったっけ?
開始1時間後
うっぜ~!何このモンスター遭遇率!夢魔の実とかいうアイテムをとりにダンジョンに入ったまではいいけど、ここ3歩も歩かない内にモンスターと遭遇するし、一回脱出しようと思ったのに脱出の呪文が使えないし、ダンジョンの名前どうりの迷路振りだし!このアイテムを欲した関所の門番のアホ~!
開始数時間後…
やっと魔王の前まできた…。謎解きなんかよりアイテムを集めるのが大変だった。やれ火薬だの、古代魚だの、果てには異国の調味料?俺は商人か!?途中から何度依頼して来た奴を切り捨てて進めたいと思ったか!でも、後は魔王を倒して終わりだ。このイライラを魔王にぶつけてやる!
魔王が現れた!
メニュー
→戦う
道具
特技
呪文
逃げる
勇者の攻撃!
魔王に9999のダメージ!
魔王を倒した!
「終わった…。」
長かった…。最後は非常にあっけなかったけど。最初は楽勝だと思っていたが、やはり所々記憶が抜けていたのが痛かった。あぁ、朝日が眩しい…?!朝日!?窓の外を見ると日が昇って周りが明るくなり始める所だった。
「マジですか…」
俺がゲームを始めたのが大体22時ごろで、現在時刻は6時ちょっと過ぎ。つまり8時間程ぶっ通しでゲームしていたようだ。
「…寝む。」集中力が切れたせいか、急に睡魔が襲ってきた。だが、今寝てしまったら親が入ってきた時ゲームをぶっちぎられてしまう可能性が大きい。目標達成は出来なかったが、全クリはしたんだ。せめてED後のセーブ画面でセーブしてから寝なければ…!今にも寝てしまいそうな目でEDを何とか見終わって、画面に〝→はい・いいえ〟の選択肢が出たのでそのままボタンを押して
-プツン-
俺は意識を手放した。