空気嫁の旦那様!
あなたは裸の王様、というお話をご存知だろうか。
そう、詐欺師が王様に「愚か者には見えない服」を売るという話だ。
その話は一人の勇気ある少年の行動で皆の目が覚める、というお話なのだが、そんなことも関係なしに「自分にしか見えない家族達」で自分を騙った男がいた。
液晶の前の諸君御機嫌よう。俺は、そうだな。王子とでも呼んでくれ。裸の王様二世とも呼べる。王子こと俺には六人の家族がいる。嫁が二人に子供が四人だ。
一人の嫁は短く切りそろえた明るい髪に大きな目をもった美女。もう一人の嫁は黒髪を巻いて束ねて眼鏡をかけた美女、いいだろう? その嫁と子供はなぜだかほかの人には見えない特性を持っている。だから俺が毎日愛をささやき続けねばならない。だが俺も王子としての責務として、いや自らの心の奥底から滲み出る愛がとまらないのだ。いたし方あるまい。
しかし先日、友人に会ったときのことだ。彼とは大学の同期であり今も親しい友、といった関係なのだが俺の家族を見て驚いた。
「お前、嫁が二人ってどういうことだ!?」
ということではない。
「お前どこでそんな綺麗な嫁さんを!」
ということでもない。ではなにかというと、
「お前、何誰もいないところに向かって話しかけてるんだ?」
と、言われた。実は家族の特性について知ったのはそのときだった。
では、自分とはなんだろう。この家族たちと俺ではひょっとすると次元が違うのではないだろうか?
それとも自分だけこっちの世界とあっちの世界でゆらゆらと揺れる口蓋垂のような存在なのだろうか?
俺はどこからきて、どこへ行くのだろうか。
そんなことが不安になって僕は下の口蓋垂を沈め、家族にありがとう、と言った。
だから、諸君らには家族は大切にしてほしいと思うものだ。