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レッド・ペンドラゴン

作者: 李鈴藍
掲載日:2012/09/14

昔々、この地には二匹の守り神がいた。


そんなお決まりの文句で始まるおとぎ話。

誰も信じてはいない。あまりにも昔の伝承でそれはただのフィクションとされているからだ。

本当の真実を知る者などいるわけがない。

何せこの話はこの世界が、大地が二つに分裂した時の事だからだ。

伝説または伝承と称されるこの話しはどこの国に行っても必ずと言っていいほど言い伝えられている。

どこへ行っても言い伝えられている時点で不可思議であるのに人々は誰一人それに気付くことは無かった。


その守り神は大地を血で汚し、そのために神様から粛正を受けたのだという。

そしてその神様から粛正を受けた守り神はその体に印となる痣だけを残して人になってしまったのだという。

無力な、何の力も持たない人間になったのだという。

だが実際、何の力も持たない人間など存在はしない。

この世界には魔法という物があって人々は生まれながらに個人にあった属性の魔法が扱えるからだ。

それもちゃんとした訓練を受けて初めて物になるのだが。

しかし、誰にでもある物がファンタにはなかった。

魔力から拒絶される様に何の力もなかったのだ。

両親もそれに疑問を感じて何度も調べたが、どの属性もファンタに合わなかった。

それどころか、まるで呪いの様に背中に赤い竜の痣が浮かび上がったのだ。

それを見た両親は嘆き悲しんだ。

幼いファンタは知らなかったがその痣は忌み嫌われる印なのだという。


そう。

これこそがこの大地を汚した忌み神である竜の印だったのだ。


ただの昔話だと思っていた。何処にでもあるおとぎ話だと思っていた。

なのにそれを否定するように痣は疼いていく。じわじわとファンタを追い詰めるように。

忌み嫌われた“竜の痣”

持っていたからといって何かあるわけではない。伝承通りなのであればファンタは無力なはずなのだから。

しかしここで、伝承と違う事があった。

ファンタは細い見た目に反して常人よりも力が強かった。

それを呪いだと恐れた村の人々はファンタを、ファンタの家族を忌むべき者として追い出そうとした。





「ファンタ!逃げて!」

母の叫び声。

村の人々は追い出すだけではおさまらなかった。

大きな不安はやがて殺意となって襲いかかってきたのだ。

「母さんっ……!」

「ダメよ!早く逃げてっ……!」

「けどっ!」

「早く行くんだ!」

父の怒声。

初めて聞いたその声に幼いファンタは足がすくんだ。

どうすればいいかなんて考えられない。このまま逃げれば両親は殺される。

「お願いよ、貴方だけは守らなくてはいけないのっ……」

悲しげに微笑んだ母はファンタの肩に手を置いた。

「愛しているわ。どんなことがあっても貴方は私達の大切な息子よ」

ファンタが何か言う前に母は呪文を唱え始めた。

知識としては知っているが、実際使っているのを見るのは初めてだ。

転送魔法。

ここではないどこかへ物を移動させる魔法。

本来は人を運ぶものじゃない。それでも母は今その魔法をファンタに使おうとしていた。


「さようなら」


足下が光る。

最後に見たのは涙を流して微笑む母だった。





カーテンの隙間から光が差し込む。

ファンタ・カーフィリーはそのまぶしさに思わず顔をしかめた。

「また、あの夢か」

息を吐くように呟いて体を起こす。

碧眼の瞳に影が落ちて、やがて閉じられる。

寝間着代わりの服はじっとりと汗で濡れていて気持ちが悪い。悪夢を見ていたせいか寝ていたはずなのに逆に疲れていた。

「あれから何年たってると思ってるんだ……」

今度こそ深く息を吐いて顔を上げる。

カーテンを開き外に広がる景色に目線をやる。

そこに広がるのは本当の故郷とは違う青。海と晴天の空。

ここ数年で見慣れた景色が少しだけざわついていた心を落ち着けてくれる。

そうだ。ここは全く別の場所なんだ。

夢での出来事を振り払う様に首を振ってベッドから出た。



両親の騒動があってからすでに五年。

ファンタは転送魔法で見知らぬ土地に飛ばされた。そして今は政府の公認機関であるギルドの一員だった。

ギルドとは政府が提示した罪人や貴族たちの護衛を行う傭兵が集う場所だ。

各地に点在しているが所属の者もいればふらりとやってきて仕事を求める者も居る。

ちなみにファンタは前者で、ギルドにある宿舎で暮らしている。

宿舎は任務で人が出払っている為いつもは騒がしいこの場所が今は静かだった。

その内ファンタも任務が与えられていなくなるだろうが。

「あら。おはよう」

「……はよ」

来た。

ふわりと天使の様に笑う少女が一人。

桃色の長いツインテールを揺らし、手には少し古ぼけた手帳がある。彼女がその手帳を広げたのでファンタは思わず尋ねた。

「任務?」

「ええ。後で執務室まで来てね」

「了解」

「では、また後で」

くるりとファンタに背を向けて少女は去っていく。

彼女こそがこのギルド〈リコリス〉の若き長。ジア・ホルヘだ。

父親が早々に引退し、学者志望だった一人娘の彼女が後を次いだのだが、これがまた見事なまでの手腕を発揮している。

可愛らしい見た目に反して冷静沈着で時に狡猾に事を運ぶ。

悪い言い方をすると容赦がない。それでもここから離れる者が少ないのは人望が少なからずあるからだろう。

「と、こんな場合じゃない」

任務の話しがあるのだ。さっさと準備をしてジアの所に行かなくては。

あんまり遅いと何を言われるか分かったものではない。

普段の彼女を嫌と言うほど知っているファンタは急いで支度をするために自室に戻った。





「今回ファンタには国外に出てもらうわ」

ファンタがジアから聞いた言葉がまずそれだった。

「国外?」

「ええ。国外」

「いや、ちょっと待ってくれ。国外って……」

「今から説明するから、ちゃんと聞いてね?」

ちゃんと聞いてね、ではなくて。

ファンタの言葉をことごとく切り捨ててジアは話しを始めた。

「今回は護衛のお仕事よ。護衛してもらうのはここから海を何海里も行った先にあるトライアド大陸のカディ公国のお姫様よ」

「なんでそんな遠い所からお姫様が来てるんだ」

「そうねぇ、私もその辺りはよく知らないの。なんでもそのお姫様はちょっと変わり者らしいの。だから、自国の護衛も最小だったみたい」

「だったら帰りもそれでいいだろう」

「そうはいかないでしょう。一応交流のある所だもの。こっち側で何かあったらそれこそ戦争もの。それを避けるためにこっちから護衛をだすって事なの」

「ああ、なるほど」

このギルドを管轄しているのは世界でも一番の広さを誇るアングラド大陸にある大国シェントだ。世界地図を広げれば分かるが、世界の大半がこのアングラド大陸である。大抵の人はそこから一歩も出ることなく一生を終えるだろう。

「って事なので、異存はないかしら?」

「あっても強制だろ」

「もちろん。一度受けた依頼は最後までやり通すのがギルド〈リコリス〉の誇り。貴方だって知ってるでしょう?」

「はいはい」

口元を笑みで飾りながらジアのモスグリーンの瞳は全く笑っておらず真剣そのものだった。

「じゃあ、行ってくる。場所は港でいいんだろ?」

「ええ。気をつけて。――ああ、ファンタ」

背を向けて出て行こうとしたファンタをジアが呼び止めた。振り返れば、さっきまでの笑みを引っ込めわずかに不安げな顔をしていた。

「ジア?」

「お姫様は竜の伝承を調べていたみたいなの。もしかしたら何か、分かるかもしれない」

「……そうか」

ファンタは短くそう返して部屋を出た。



「ふう……」

ファンタが出て行った扉を見つめジアは小さくため息をついて椅子に腰を下ろした。

「少しは手がかりがつかめるといいけど……」

ジアは机に置いてある一際古い本を手に取った。

表紙をめくれば“伝承”の文字。これは先ほどファンタに行った“竜の伝承”の事が書かれた本だ。

ジアはファンタが幼い頃から魔法が使えないことを知っている。

転送魔法で飛ばされたファンタを引き取り育てたのは何を隠そうジアの両親だからだ。

最初は“竜の伝承”なんてただの作り話だと思っていた。良くある子ども向けの物語だと。

しかし、目の前に突如として現れたのは本当に竜の痣をもつファンタ。

気がついたファンタは酷く怯えながら背中の痣のせいで村人に襲われ、両親が殺されたであろう事を告げた。母親が命からがら、ファンタをここへ飛ばしたことも。

本当に伝承通り呪いなんてものがあるなんて信じられなかったが現にファンタは魔法が使えない。その代わり細い体の割に丈夫で力があった。

伝承ではこの大地の守り神である竜が大地を汚した事が忌み嫌われる由縁とされている。

しかし、果たして本当に大地を汚してそれだけでそこまで忌み嫌われるものだろうか。

ジアはそこに疑問を持ちここ何年もそれを調べていた。

もちろんファンタ本人もだ。

どうしてこうなったのか。何故呪いなのか。本当に呪いなら解放する術はないのか。

それを模索中に今回の仕事が舞い込んできたのだ。

だからこそファンタ以外の者には回さず残して置いた。

「これで、何か分かるといいんだけど……」

それは酷く不確定なものだけれど今はそれにわずかな望みをかけるしかなかった。



ファンタは愛用の大剣を背に港に来ていた。

活気のある港は今日もなんだかんだと騒がしい。

待ち合わせ場所は特に指定されていなかったがすぐに見当が付いた。この港に泊めるには不釣り合いな船が目に付いたからだ。

客船ほど大きくはないがどう見ても漁に出るような船ではない。

この港に停船しているのは大体が漁船である。

そこにそれとは種類の異なるものがあれば一目でわかる。

「無防備、だな」

この国は比較的、治安もいいから大丈夫だろうがちょっとでも治安が悪いところに停船していたら襲ってくださいと言っている様なものだ。

そうは思っていてももちろん口には出さないが。

「ギルド〈リコリス〉の者だが……」

船の側にいた人にギルドの紋章を見せてそう言うとすぐに中に通された。

この辺も中々不用心だ。

信頼されていると考えればいいのかもしれないが。

「姫様、ギルドの方がいらっしゃいました」

「え」

何にも気にせずに付いてきたがこうもあっさり守る対象の所に案内されるとは思わなかった。

中から女の声がして扉が開かれる。

「こんにちは」

ファンタに向けられた凜とした声。

目の前にはこの大陸ではまず見ることのない銀髪。そしてファンタと同じ碧眼。

「カディ公国第二王女、リーキと申します。航海中と大陸に着いてからの道すがら護衛をよろしくお願い致します」

「こちらこそ。護衛を務めますギルド〈リコリス〉のファンタ申します」

真っ先に王女に頭を下げられてしまいどうも調子が狂ってしまう。

ファンタは王族に会ったことはないが、そこに近しい貴族には何回も会ったことがある。どの貴族もあまり印象は良くなかった。

それに比べてリーキと名乗った王女は気さくで嫌味な部分を感じなかった。

ふわりと笑い「堅苦しいのはよしましょうか」という。

「姫様、まだ出航まで時間がありますがいかがなさいますか?」

「そうね……」

すぐ右にいたメイドがそう言うとリーキはこちらに目線を投げて来た。

「お茶にしましょう。私、ファンタさんの話しが聞きたいわ」

「ファンタで構いません。――けど、話しとは……」

「あるでしょう?“竜の伝承”」

そう言われて、どくんと心臓が重たく跳ねた。

じわりと背中の痣も疼いているようで思わず拳を握る。

「どうか、なさって?」

「いいえ。何でもありません。俺が話せることがあればなんなりと」

ファンタも聞きたいことがある。もしかしたら聞けないかもしれないと思っていたのだがこうも簡単にその機会があるとは。

ファンタがこの地に伝わる“竜の伝承”を話している間、背中の痣はずっと疼いたままだった。



「……以上です」

「そう……」

痣の疼きを気にしないように話し終えた所でリーキは小さく相槌をうった。

「こちらでは随分と歪曲されているのですね」

「歪曲と、もうしますと?」

「こちらでは“竜の伝承”は決して悪いものでは無いんです。むしろ、英雄と言っても過言ではありません」

「英雄?忌み神が?」

「ですから、忌み神などではないんです」

くすくすとリーキが笑う。

「途中までは同じ。二匹の守り神が大地を汚したのは同じ。でもそこからが違います。トライアド大陸ではその後二匹の守り神が最後の力を振り絞り大陸を分断したとあります」

「いや、大陸を分担した話しは知っています」

「さっきは言わなかったのに……」

「一般的な伝承を話したので」

「貴方は少し違うようですね」

「ええ。でも大陸を分担した所までです」

「じゃあ、真実を話さないと」

そういって楽しげに笑った。

「その二体の竜はどうして大地を汚したのだと思いますか?」

「どう、って……」

「二匹の竜は守り神です。神である以上、争いなんて簡単にはしないでしょう?」

確かにそうだ。守り神なのに。

そこでファンタははっと気がついた。

守り神が争う理由。ごく簡単な事だ。

「守っていた土地の人間を守るため……」

ファンタが呟くようにそう言うとリーキが笑って頷いた。

だがそれもすぐに翳った。

「先に戦いだしたのは人々の方。その人々を守るために二匹の守り神は大地を汚す事になってしまった。そして、その汚してしまった大地が二度と血に染まることが無いように大陸を分担した」

「まるで、どこかで起こった話しみたいだな……」

「実際、トライアド大陸にはいたそうです。ペンドラゴン、竜王が」

「ペンドラゴン……?」

知らない単語が出てきてファンタは首を傾げた。

「今は残っていないトライアド大陸全土を治めていた王族をそう言うのです。かつて大地を守る為に力を使った守り神から取ったそうです」

そこまで話すとリーキはすっかり冷めた紅茶を飲んだ。

「……」

どうも頭がこんからがってきた。

リーキの話しを聞いているとファンタの背中の痣は何の意味があるのだろうか。

「――“竜の痣”ってご存じですか?」

気がついたら、そう尋ねていた。

するとリーキは驚いたように目を見開いた。

何があるって言うんだ……。どうしてそんな表情をするのだろう。


「貴方は知っているの?滅んだ王家のことを」



リーキは消えそうな声でそう言った。





ゆらゆらとまるで揺りかごの様に揺れる。

船に乗ったのは生まれて初めてだが、中々悪くはなかった。

“竜の痣”の事を尋ねた時のリーキは酷く動揺していた。ファンタもそれ以上聞けずその場はお開きになってしまった。

一体、この痣に何の意味があるのだろう。王家とリーキは言ったがもしそんな物に関係があるのならどうしてファンタは忌み嫌われるような事になったのだろうか。

いや、ある程度の察しは付く。

それなりの答えは出ているがどうも納得がいかない。

そんなはずがない。

ファンタは頭に浮かんだ考えを振り払った。

それよりもちゃんと仕事をしなくては。

しかし航海中に何か起こることはなく、そのままトライアド大陸に到着した。



トライアド大陸。

小さなその大陸にも大小の国が存在し、上陸してしまえば今まで通りの平穏ではいられない。

リーキの故郷であるカディ公国までは徒歩で一日ほど。距離はそれなりにあるが問題ない距離だ。

しかしここでリーキが進路変更の申し出をしてきた。

「姫様、危険なのでは?それにどちらへ……?」

「大丈夫です。寄り道程度の場所ですから。ファンタ、いいかしら?」

「ええ」

ファンタに異存があるわけでもない。

少々の危険があるのかもしれないが、リーキより土地勘がないファンタがどうこう言えるわけもない。


その日は少し早めに進むのを切り上げ途中で一泊。

次の日は早朝からの出発だった。

「おはようございます」

「ああ」

「では行きましょうか」

メンバーは船に乗った時からかわらない。

ファンタとリーキ。そしてメイドが一人と護衛が二人。この人数でも抜けられるくらいトライアド大陸も治安がいいのだろう。

「リーキ様は何処へ寄り道を?」

「城です。と言っても今は誰もいませんが」

「城?そんな所に……」

ファンタが驚くとリーキは笑う。どうもそこは昔の遊び場だったらしく、良く足を運んでいたのだと言う。

「そこはかつて、ペンドラゴンが居城にしていた場所なのです」

ペンドラゴン。その言葉を聞いたのは何回目だろう。知ったのはたった数日前。それなのに体にしみこむような言葉の響き。


「ここです」


目と鼻の先にカディ公国を望む場所にその城は建っていた。

古城と言うには新しい城だ。しかし所々を見れば崩れている場所もあった。

「ファンタ、こちらへ」

リーキに案内されて行くと目の前に古ぼけた肖像画が飾ってあった。

「――……っこれは」

「似ているでしょう?」

リーキはファンタを横目で見て、肖像画に目を戻した。

そこに描かれていたのは恐らくこの古城の主たち。ペンドラゴンとその王妃だろう。

線は細いが凛々しい姿。髪の色はくすんでいたが恐らく赤毛。そして瞳の色はそれとよく似た赤銅色。

王妃の方は金髪の碧眼。

「貴方を見て、どこか懐かしい感じがしたの。たぶんこれのせいなんでしょうね」

リーキは目を細めてそう言った。


そう。

髪や瞳の色こそ違うがペンドラゴンとファンタはうり二つだったのだ。


「“竜の痣”はペンドラゴンの一族の印。貴方は忌み嫌われたのはではなく恐らくは……」

リーキはそこで言葉を飲み込む。

その続きは言われなくても分かっていた。

船の中で振り払った答えが再び頭を過ぎる。

しかし、


「―――姫様っ!!」


大きな音が響く。

外で待っていた護衛の警戒する声。その後うめき声に変わる。

「敵かっ……!」

ファンタは背中の大剣を軽々と構えた。

常人ならば持つことすら難しいその大剣はファンタの為にジアの父親がくれた物だ。

「ファンタ……」

「リーキ様、俺から離れないように」

「はい」

辺りに視線を巡らす。

入り口はファンタ達が入ってきた一カ所しかないが。ここは古城。窓もあれば崩れているところもある。

「――っ!ファンタ!」

リーキが声を上げる。

それと同時にファンタは床を蹴った。

目標は入り口ではなくすぐ後ろ。

剣がぶつかり金属音が広がる。しかし、次に聞こえたのは魔法の詠唱。

「――っさせるか!」

素早く大剣を振り相手の胴に一発。

殺してしまうことは簡単だがそれでは意味がない。

ファンタの背後を狙ってきた相手は倒した。しかし気配はまだ消えない。

あと、何人いる?

神経を張り巡らし気配を探る。

「リーキ様、入り口まで走れますか?」

「……はい」

少しの沈黙のあと力強く頷いた。

「じゃあ、―――走って!」

大剣を片手で持ち、空いた手でリーキの手を引く。一気に入り口まで走る。前方に敵の気配があったが構ってはいられない。

「正面突破っ!」

大剣を振り上げ閉じた扉を切り崩した。

「――っ何!?」

まさか切り崩して来るとは思わなかったのか驚愕の声が聞こえた。しかし、それでファンタが止まるわけもなく、残りの敵も容赦なく叩き倒した。

「これで、全員か……?」

ファンタが辺りを見回し、残りを探すとカディ公国の方からリーキを呼ぶ声と馬の足音が聞こえてきた。

「姫様!」

「ご無事ですか!?姫様!」

「大丈夫よ。ファンタに助けてもらったから」

リーキは笑ってファンタを見た。ファンタはそれに肩をすくめた。

応援に来た護衛達が敵を縛り上げるのを見ながらファンタは古城を見上げた。


「ペンドラゴン、ね……。俺には無縁な存在だな」


たとえ、それが自分のルーツであろうと。

リーキの話しを聞けば聞くほどファンタからはほど遠い気がした。

今までの生活が一番性にあってるのだ。結局。

リーキは何度かファンタを引き留めようとしたがファンタはそれを断り早々に船に乗ってアングラド大陸へ戻った。




港は相変わらず活気に満ちあふれていた。そこを通り抜け、ギルドの方に歩いていく。

ギルドの前にはジアがいた。

珍しい。いつもなら出迎えなんかしないのに。

「珍しいな」

「たまにはいいかなと思って。で、収穫はあったの?」

「大あり」

そう言うとジアは大きく目を見開いた。

「あったの!?それじゃあ、その痣は……」

「これはもういい」

「もういいって……」

全てが解決したわけではないがファンタの中ではもう終わったことだ。

背中の痣が忌むべき物ではないことが分かった。

両親がどうしてあんなにも自分を守ろうとしたのかも、どうして殺されなければならなかったのかも。

答えは出たのだ。

それから先はファンタがこれから明かして行けばいい。

「ちょっと!ファンタ!」

「何だよ。俺は慣れない船旅で疲れてるんだよ」

「報告が先です!ほら!私に言うことあるでしょ!」

可愛らしく頬を膨らませたギルドの長。

それが可笑しくて思わず笑ってしまう。



「――ただいま、ジア」

「おかえりなさい、ファンタ」



そう言って二人して笑った。

「じゃ、俺はこれで」

「だーめ!報告しなさい!」

「いや、マジで寝かせてくれると……」

「ファンタ?」

「はい。報告先にします」

モスグリーンの瞳が剣呑に光って思わず口角が引きつる。

そのまま執務室に連行されて報告書の作成に沢山の時間を費やしたのは、また別の話。




FIN.


何かしなければと、かれこれ数年前に別サイトにて投稿したファンタジー小説です。実は一晩で案を練り一晩で書き上げた何とも未熟な作品でもあります。

個人的には割と気に入っていますが、それでもやはりファンタジーは好きだけど苦手で書いていてもこんがらがってしまいます。そんな浅はかな私のその場のひらめきと根性で書き上げた作品。

まだ色々分からんぞ?と言う点が多いとも思います。しかし、これはコレで私の中では完結してしまった作品ですのでその辺のわからん部分は読者の皆様に一任したいと思います。


前に投稿した場所ではあまり多くの方の目に触れることはなかったのでこの場でもうちょっと多くの方の目に触れたらなと思い今回の投稿に踏み切りました。なので、あえて修正はしていません。


まだまだ未熟な私ですが、少しでも面白いと思っていただけたら幸いです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ふとあらすじに目が止まったので、読ませていただきました。 ネタバレになるのも良くないので簡単に。冒頭の内容から、ずっと重苦しい雰囲気が続くのかと思いましたが、そうではなくて良かったです。…
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