第五話~始まってしまった生徒会~
「ただいまー」
「おかえり~」
いつもの玄関、いつものお袋の声、いつもの空気…のハズなのに
何故か今の俺は、このいつもの事が全て初めての様な感覚に陥っていた
理由は…一つしかない
『貴様、生徒会に入れ』
「そんなこと行き成り言われてもなー…」
もちろん、今の今まで俺は一度も生徒会など入った事がない…
むしろ委員会に入る事さえ面倒なので基本的に入らない
なのに、あの副会長は俺に生徒会に入れと申し出て来た…
何故だ?
前に述べたように俺は生徒会などには入った事がないし興味もない
では何故?
「駄目だ…サッパリ分からん」
考えてもいい案が思い浮かばない為、現実逃避を実行
「お袋~、今日の飯何~?」
代わりに夕飯のメニュー調査に走る
「カレーよ」
またかよ…一昨日もカレーだったぞ、どんだけ面倒なんだよ夕飯作るの…
ガチャッ
「了解」
リビングのドアを開けると同時に返事を返す
「ところでアンタ学校はどうだったの?」
リビングに入ったところで、キッチンに立っているお袋が顔を覗かせながら問うてくる
「まぁまぁだな」
「そう、ならいいわ、クラスで仲良くやってきなさいよ」
そう言いながら、湯呑に入れた緑茶をソファ前のテーブルに置く
「んー、サンキュー」
曖昧な返事を返し、バックをそこらに放置してソファに横になる
…と
「ただいまー」
家へと帰宅してきたものがもう一人
「おかえり~日向~」
そう言いながら声の主がガチャッとリビングの扉が開け放つ。
「あ、兄貴、帰ってたんだ」
「おう、そっちは学校どうだった?」
コイツは龍嵜日向、俺の妹だ。
ちなみにコイツも柏木学園の中等部に入学した。
つーか、最近コイツの俺への呼び方が『お兄ちゃん』から『兄貴』へと変わったのが何と言うかむなしい気がする。
「バッチシ、そっちは?」
「うーん…生徒会に入れとか言われた」
「はぁ!?」
「ちょっと待って兄貴!詳しく教えて!!」
「詳しくも何も、生徒会の副会長さんに勧誘されただけ、そんな大した事じゃないだろ?」
騒ぐ事でも無い、そう伝え緑茶を啜る
「何言ってんの!?兄貴ウチの学校の生徒会のこと聞いてないの!?」
「全く知らん」
「はぁ…あのね、ウチの学校の生徒会は今、庶務だけがいないの。なんでも、そのもう一人に入るべき人がいないかららしいんだけど…」
「は?」
え、どう言う事だ?行き成りすぎて話が全く理解できんぞ…
「あぁ、もう!だからその最後の一人に兄貴が選ばれたって事!!」
「………」
しばし思考を彷徨わせる…
「…!?マジで!?」
「マジで!!」
え!?何で俺が!?そんな御大層な人間じゃないんですけど俺!?
「しかも、他の生徒会のメンバーはそれぞれクセ者揃い、テストとかでフツーに学年一位を取るような人とか…」
「マジかよ!?つーか何でお前そんなに知ってんの!?それにも俺はビックリだよ!!」
「クラスの友達から聞いた」
すげぇ~、もうそんなに打ち解けてんのか…
「で、彼方、どうするの?」
今まで黙っていたお袋が口を開く
「分からん…とりあえず考えておく」
「絶対に入った方が良いって!!」
日向がさらに進めてくる
「お、おぉ、分かった」
……………………………
翌日、朝の学校…
「はぁ~…」
俺は朝から幸せが全て飛んでいきそうなほど深いため息をついていた
「龍嵜転校生よ、昨日の申し出、承認してもらえるか?」
生徒会副会長が直々に俺の教室までやってきて昨日の答えを聞きに来ていた
周りからの視線が非常に痛い
「でも先輩、そんな簡単に決められる事じゃないでしょう?」
「…?先輩?私は貴様と同い年だぞ?」
「マジッすか!?ってそういうことではなくて!まだ決められないですよ」
やはり難しい申し出である…
「そうか、貴様が入ってくれれば、中々面白そうだが…致し方ない」
分かった…と、呟くと副会長は残念そうに教室から出て行こうとする…
その背中に俺は見覚えがあった…
何か凄く懐かしい…そう、ずっと昔に見たような…
何かがフラッシュバックのように頭を過る
「あ、あの!」
その時、何故自分でもそんな事を言ったのかは分からない
「ん?」
副会長が振り返る
「あの!!こんな俺でも良いのなら、俺…生徒会入ります!」
言ってしまった…あとから思い返せば何故こんな事を言ったのかと悔むだろう
でも、言わなければならない気がしたのだ。
「おぉ!そうか!入ってくれるか!」
瞬間、副会長の顔がパァッっと明るくなる
「では、これからよろしく頼む!」
そう言いながら俺に抱擁を求めてくる
軽くテンパりながら抱擁し返す俺
そんなやり取りを見ていたクラスメイトは目を丸くして驚いている。
「あ、は、はい!宜しくお願いします!」
「では、私は教室に戻るとしよう、では龍嵜同級生、放課後にまた」
そう言い残し副会長はその場を去ろうとする、さっきとは打って変わった意気揚々とした調子でだ
しかし、そんな副会長に俺はもう一度声をかける
「あの!」
「ん?なんだ?やっぱり止めたとかは無しだぞ?」
「あ、いや、そうじゃなくて」
「名前、何て言うんですか!?」
昨日から思っていた事を質問する
「あぁ、自己紹介が遅れたな私は一年十三組、生徒会副会長、虎沢悠月だ宜しく頼む」




