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掌編小説

寡黙な朝

作者: 斎藤康介

 6時30分にセットしたアラームが猛々しく眠りを破る。腕を伸ばし時計を取り時間を確認する。まだ開き切らない目で時刻を確認する。当然のことながら時刻は朝の6時30分だ。

 家に時計はこれ一つしかない。時計は電波で時刻を合わせるセイコーのデジタル時計だ。私の生活が秒単位までの正確さを必要していることはないのだが、生活の中に正しい規律を取り入れたいために選んだのだった。

 正確な時間は、私に世の中との一体感を与えてくれた。時計が6時30分を示せば間違いなく6時30分なのだ。日本中の人々がそれぞれの6時30分の時間の過ごし方でもって過ごしている。

 10分間をかけてベッドの中で体を解きほぐしていく。それが終わると顔を洗いに洗面の前に立つ。顔を洗い、ゆっくりと髭を剃り、一本ずつ丁寧に歯を磨く。そうやってベッドで解きほぐした体を現実に慣らす。私の一日はこの瞬間に始まる。

 そのあとテレビを付け、トーストとコーヒーを用意し15分かけて胃の中に流し込む。

 いつも思う。

 朝に流れるニュースはどれも同じで、世界はただそれらの事象だけでまわっているような錯覚を受ける。人間の関心はそこで満たされ、思考は停止するのだ。特に今日のような雲が厚く濁った空の下では痛痒を感じることもなく、何もかもが煩わしく思える。だから煙草を吸う。煙とともに捨て去りたい社会の混濁を飲み込む。

 そして3分で食器を片づける。

 7分をかけ着替える。

 収集に出すゴミをまとめ、7時28分に家を出る。

 

 もし1分早かったり遅かったりしたら、私はその日一日は軽いパニック状態となる。

 確固として身体に刻まれたリズムに私は抗うことができない。

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